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山形県内外からリピーターの客が訪れるスーパー 「ゲソ天」が人気 立ち飲みイベントも

2024年3月28日 18:26
山形県内外からリピーターの客が訪れるスーパー 「ゲソ天」が人気 立ち飲みイベントも

記者が注目したニュースを掘り下げる「深ボリ」です。山形市に40年以上店を構える個人経営のスーパーがあります。競争が激しい小売業界の中で低迷の危機もあった店を県内外から客が訪れる人気店へと成長させたのは「ゲソ天」でした。多くの人に愛される店の魅力を取材しました。木村真陸記者の報告です。

レトロな雰囲気に包まれた店内。
山形市のJR羽前千歳駅前で40年以上にわたって営業しているスーパー「エンドー」です。連日、多くの人でにぎわっています。

仙台から「仙台から来ました。地元ならではのローカルな雰囲気と、それに加えておしゃれなグッズもあってオリジナル感が強くてすごくいい」
「良さそう!かわいい!」

東京から移住した人「来るのが10回目。(エンドーの良いところは?)気取らない、飾らないおいしい、楽しいたまらない!」
東京から「いつもは東京に住んでいるどうしても来たくて連れてきてもらった」

お客さんのほとんどが買い求めるというのが…「ゲソ天」です。

「オリジナリティのあるゲソ天が食べられるのは新鮮。選ぶのも楽しい」
新庄から「揚げたて店で食べるんです。ビールと一緒に。持って帰ってもいいけど揚げたて熱々でおいしい。山形に来たら必ず寄りますね」

エンドーのゲソ天が人気の理由の一つは味付けの種類の多さ!「わさび」や「チーズ」、「トリュフ塩」の味など普段販売しているもので11種類もの味付けがあります。さらに、「のり塩」など季節限定の味も登場するんです。
3代目の店主を務める遠藤英則さん(43)は、14年前に父親の英弥さんから店を引き継ぎました。

英則さん「何かいろんな方に来てもらえるような広告塔になるような、商品が無いかっていうので始めたのがゲソ天」

エンドーは、今から64年前の1960年に英則さんの祖父・円三郎さんが青果店として創業したのが始まりです。
創業当時は店を構えず地域住民に野菜を販売する形でした。その後、野菜以外の様々な商品を求める客の声に応え、42年前の1982年、2代目店主の英弥さんが現在の場所に店舗を開きました。
しかし、開店からしばらくすると、大手スーパーなどが山形市内に増え始め、競争が激しくなります。エンドーからは客足が遠のいていったといいます。

3代目店主・英則さん「当時は暇でしたね。何とか店をつなげられたらと思っていた」

そうした中、英則さんが目を付けたのが「ゲソ天」でした。季節を問わず提供できるほか、余りがちな食材を有効活用するのも狙いだったといいます。

英則さん「周りで売ってるゲソ天を買って食べたら油っぽかったりした。食べやすい、柔らかい、食べても胸焼けしないことを考えた」

ゲソ天づくりは独学。食べやすい味を追求し、納得のいく味が完成した2018年から販売を始めました。

さらに、ゲソ天のオリジナルキャラクターも作りました。すると、口コミやSNSなどでゲソ天の評判が県内外に広がったといいます。
エンドーを訪れる人の多くがリピーター。ゲソ天を求めて訪れると店の魅力に“はまる”人が多いといいます。
タレントの加藤紀子さんもエンドーに魅了された1人です。

加藤紀子さん「ポイントカードを必ず持ってくるぐらい通っている。最初に驚いたのは、地元の人が集まってお茶飲みながら、お買物して、隣の人とおしゃべりしてすごい優しい場所なんだけど、私みたいな観光の人にも優しく話しかけてくれて、触れ合える他の居酒屋やスーパーにないスタイル。あったかくておいしい場所」

エンドーが愛される理由は看板商品の「ゲソ天」だけではありません。値段は一般的な商品に比べてちょっと張りますが、英則さんが独自の目利きで仕入れる商品や店内で作られる総菜も人気です。

遠藤英則さん「毎日行きますよ。良いのがあったらお客さんに紹介したい。きょうはこんなのがあったって」

毎朝、山形市内の市場に通い仕入れに当たっています。

遠藤英則さん「おはようございます。」「えびください。13・15で」「この間のカツオよかったです。」市場の人と親しいですね「もうずっと来てるので小さい頃から来てる」

この日は、干物や煮つけなどの総菜に使う魚を中心に買いました。
午前10時の開店に向け9時過ぎからは家族やパートの従業員が総出で惣菜の調理に取り掛かかります。

遠藤えりさん「きょうはどんなお客さんくるのかな、おいしいって食べてもらえるか考えながら作ってる」

午前10時の開店と同時に連日、多くの人が詰めかけます。

英則さん「まだまだエンドーを知らない人も、食べたことない人もたくさんいると思う。まだまだ努力は必要」

エンドーが人気の理由はさらにほかにも。
2月、閉店後の店の前に多くの人が並んでいました。皆が待っているのは・・・月に一度の立ち飲みイベントです。

英則さん「店で飲む方はもうちょっと遅くまで飲みたい。月に一回ぐらいだったら飲む場を作ります。でもうちだけだと面白くないので、いろんなお店の方と一緒にやったのがきっかけ」

この日は天童市のインド料理店とコラボレーション。店内が居酒屋になりました。

お客さん「久しぶりなんて言われたり、知り合いの人と会ったり楽しい」
「こういうお店自体が山形には少ない。面白いなと思って参加した」

英則さん「うちはあんまり安くない。でもおいしいものを出しててお客さんも買いに来てくれる。そういうスーパーがあってもいいかな。いまはエンドーが自分にとってもお客さんにとっても、無くてはならない場所になってる」
県内外からお客さんが訪れる人気店となったエンドー。個性あふれるさまざまなこだわりが多くの人を引き付けています。競争が激しい業界の中で、きらりと輝くエンドーの姿に地域や地方を盛り上げるヒントがあるかもしれません。