【特集】「ウジがわき…想像を超越」ガザ派遣医師が語る悲惨な現実 “がれきの街”で深刻な物資不足
イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争が激化してから1年以上が経つ中、パレスチナ自治区のガザでは今なお住民が戦闘に巻き込まれ、多くの命が危険にさらされています。現地へ派遣された甲府市の医師に悲惨な戦地の現実を聞きました。
甲府市の貢川整形外科病院の医師、安藤恒平さんです。
患者に語りかける安藤医師
「どう痛くない?まだ大丈夫?皮膚は痛むからね」
整形外科医として患者の治療にあたる一方で、安藤さんにはもう一つの顔があります。
安藤恒平 医師
「そこには困っている人がたくさんいて、より良い治療を提供したい」
紛争地で人道支援を行う国際機関「赤十字国際委員会」の外科医。
安藤さんは2021年から南スーダンやナイジェリアに派遣され、医療活動にあたってきました。
そして去年12月…イスラエルとの武力衝突が激化するパレスチナ自治区ガザへ派遣されました。
安藤恒平 医師
「(町には)無傷なものがない。壁に(銃弾の)小さな穴が開いていたり、建物の一部が真っ黒になっていたり。あとはガレキという状況」
ガザ地区南部のハンユニスに降り立った安藤さんは早速、先遣スタッフのサポートに入ります。
安藤恒平 医師
「(先遣スタッフは)11月からずっと治療にあたっているが、終わるのが午前2時~3時。そういう生活をずっとしてきた彼らは疲弊していてやつれていた」
安藤恒平 医師
「だいたいみな5~6週間いると必ず体重が5~10キロ減る。私も量っていないが少なくとも5キロは減っていた」
戦地の病院に運ばれてくる患者には「ある特徴」があったと言います。
安藤恒平 医師
「兵器・武器による損傷を受けた患者になるので手足・お腹を撃たれている方、頭部の損傷がある方であったり、想像しうるものは全て搬送されてくる」
老若男女関わらず、毎日担ぎ込まれる患者たち。医師たちを悩ませたのは慢性的な物資不足です。
安藤恒平 医師
「ガザ北部にあるアルシファ病院では建物として何となく形は残っているような状況で」
安藤恒平 医師
「抗生剤も手袋も無いのでビニール袋越しに処置をするが、ウジもわいて…それはもう…(想像を)超越している」
安藤さんはこの1年間で合わせて4回ガザへ派遣。その中で特に記憶に残る治療がありました。
安藤恒平 医師
「足を切らなければならない。再建できる見込みもないし、出来るだけ(患者の)判断がついたら早期に切断したいが、この判断は本人は大変嫌だと思う。
安藤恒平 医師
「切られたくないという思いがある中で、理解を得るのは大変。そういった中で何日も説明を繰り返して、最終的に『お願いします』となった時には何とも言葉にならない」
医師も患者も治療を終えた後には「苦さ」しか残らない。そして、その「苦さ」に知らず知らずに麻痺していく。
軍事衝突からまもなく1年2か月。ガザでの死者が4万5000人に迫る中、安藤さんに平和への思いを聞きました。
安藤恒平 医師
「平和は自分たちで守っていかないと。あるところで取り返しがつかなくなってから考えても遅い。後から『あの時、ああしておけばよかった』というのはもう遅い」
安藤恒平 医師
「先に平和に対して、自分たちから取り組んでおかなければいけないんだろうなと思う」
平和を失うのは一瞬。取り戻すためには途方もない時間と犠牲が伴うー。安藤さんが見つめた、戦地の「現実」です。
(2024年11月28日 YBSワイドニュースで放送)