「競馬騎手はヒーロー」馬術界の新星は夢へ突き進む 競技歴半年で全国切符 山梨県
馬と呼吸を合わせ、決められた順番通りに障害を飛び越え、ゴールを目指す障害馬術競技。山梨県北杜市・県馬術競技場で6月に行われた大会に出場した德満蔵真選手(14)の乗馬歴は、わずか半年です。
德満選手
「きょうは2つ目の障害でちょっとブレちゃったけど、それ以外はよく跳べていて(パートナーの)コルちゃんも頑張ってくれたのでよかった」
出場したのは甲信馬術大会。高さ110cm以下、奥行き130cm以下の障害を越えていくクラス「中障害D」で、德満選手は減点なしの2位に。8月に行われる全日本ジュニア障害馬術大会への出場権を獲得しました。
■動物大好きの少年 ある悩みが
甲州市・松里中3年の德満選手。3きょうだいの真ん中は小さい頃から活発で、昆虫や犬といった動物が大好きでした。
一方、スポーツは5歳からブレイクダンスを始め、中学の部活動ではハンドボールに夢中に。
しかし、ある悩みがありました。
德満選手
「ブレイクダンスをやっていたときは、体の大きさはあまり関係がなかったが、ハンドボールになってくると力の強さとかフィジカルとかがある。ハンドボールでは自分の力は弱いなと感じた」
■小さな体を生かす騎手「ヒーローに見えた」
德満選手
「家のテレビで競馬中継を見ていて、騎手が格好よくて歓声がすごくて、騎手がヒーローに見えた。僕の小さな体を生かせるスポーツはこれだと思い、騎手を目指すようになった」
身長151cmと小柄な德満選手が騎手を志したのは昨年の秋。すぐに家族に相談し、競馬学校を目指して歩み出しました。
昨年末からは北杜市の「ファナウステーブル」で馬術を学ぶことに。週末になると、甲州市の自宅から遠く離れた乗馬クラブで過ごす日々が始まりました。
■指導者も舌を巻く上達ぶり
ファナウステーブル 西塚建二代表
「初めて(馬に)乗ったときも、彼はブレイクダンスをやっていたこともあり、すごく運動神経がよかった。速足や駆け足の練習をしたときも比較的体が緊張することなく、馬の動きに自然とついてきた。万が一バランスが崩れても落ちてしまう危険性はないと思った」
現在は部活動をやめ、乗馬一本に絞った德満選手。乗馬クラブの仲間と一緒に競馬学校の入学試験や全国大会に備え、必要な技術と知識を急ピッチで吸収しています。
西塚代表
「この乗馬歴(半年)で権利を取ったというのはすごいこと。あとは実際に本番に向かってこれからちゃんと基礎練習をする。本番はコースも難しくなるので、それに対応できるようにしっかりと練習していくことが、彼の今の大事なところ」
■学校でも 自宅でも 騎手になるために
競馬学校の合格率は5~10%とも言われる厳しい世界。だからこそ、できることは何でもやります。
德満選手
「学校が終わった後に体育館を借りてトレーニングしたり、中学校の校庭でランニングしたり、家で懸垂のトレーニングしたり、フィジカルトレーニングしたりしている。お金はすごくかかるし、そこを出してもらってるのは(両親に)感謝しかない。(北杜市まで)送ってもらい、僕のために時間を削ってくれる。(きょうだいの中で)一番時間かけてくれて本当にありがたい」
感謝の心で夢へと突き進む德満選手。その目指す先は―。
德満選手
「トップジョッキーになりたい。日本ダービーで勝って『蔵真コール』を言ってほしい。『くらま~』って」
德満選手に聞くと、一番の不安は筆記テスト。両親が過去の試験問題を取り寄せてくれたそうですが、まだまだ勉強しなければならない、とのことです。自宅では父親が設置した器材を使ってトレーニングするなど、いつでもどこでも努力を積み重ねる14歳。夢への挑戦はこれからも続きます。
(「YBSスポーツ&ニュース 山梨スピリッツ」2024年6月30日放送)