【独自解説】“ヨーロッパ最後の独裁国家”ベラルーシ 国営テレビで日本の特番もでたらめな翻訳や矛盾で支離滅裂…日本人が突然スパイ容疑で拘束!?
ベラルーシで日本人男性が、スパイの罪で拘束されました。国営テレビでは特別番組「東京から来たサムライの失敗」が放送され、そのなかでは男性の“スパイ行為”についての証拠も提示されていましたが、そこにはいくつもの“不可解な点”が…。ベラルーシでいったい何が起こっているのでしょうか?国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説します。
■ベラルーシで日本人男性がスパイ容疑で拘束 国営放送では特番も
拘束された中西雅敏さんは、ベラルーシで日本語教師をしていたといいます。その人物が「日本の情報機関に協力した」として、突然スパイ罪で拘束・起訴され、公営テレビでは特別番組まで放送されました。
番組では、中西さんが日本の情報機関に協力し、ウクライナとの国境で情報収集を行っていたと説明。軍事施設などの写真9000枚以上の撮影を行っていたとしています。
関係者によると、中西さんはベラルーシのゴメリ国立大学で日本語教師として教壇に立っていたといい、3年前にはベラルーシの国営メディアにも登場していました。
(中西さんを知るベラルーシ人)
「ショックを受けました。彼は優しくて良い人です。彼はベラルーシを回って教会の撮影をしていたのです。ベラルーシが大好きでした。何の諜報員ですか?」
とまったく心当たりはないといいます。
ベラルーシはウクライナ侵攻を続けるロシアの同盟国です。そのルカシェンコ大統領は「ヨーロッパ最後の独裁者」とも呼ばれ、2020年には 反政府デモに参加していたとみられる日本人男性が拘束されたこともあります。
Q.今回の国営放送での特番をどう思いますか?
(国際ジャーナリスト 山田敏弘氏)
「その特番を何度も見ましたが、矛盾点や根本的な事実誤認がいくつもあって、プロパガンダ目的で作られたのかな、と感じました」
Q.「写真を国家公安委員会に渡そうと思った」と供述しているそうですが、外務省なら分かりますが国家公安委員会には渡しませんよね?
(山田氏)
「そうなんです。番組内で『国家公安委員会』だと示しているのが国会議事堂だったり、中西さんの上司と言われている人が『軍の情報機関の担当官』だと言っています。国家公安委員会は警察の機関ですが、軍の上司と言っている点で矛盾が生じています。一貫性もないですし、何度見ても説得力に欠けるものだと思います」
■“スパイ行為”の証拠とされたLINEのやり取り、そのロシア語訳の謎
スパイ行為の証拠としてLINEでのやり取りが出されていますが、日本語とロシア語の訳が全く違っていて、日本語で「中国のパワーはすごいものがありますね」がロシア語では「この前の攻撃はアメリカによる偽装のようだ」になっていたり、日本語の「ベラルーシ進出はかなり難しいのが実情です」のロシア語訳が「尾行されている気がした、防犯カメラに監視されているかも」になっていたりします。
Q.証拠といわれる、中西さんの上司とされている人物とのLINEでのやり取りは、ベラルーシでのビジネスの可能性を中西さんに尋ねている内容ですよね?
(山田氏)
「上司とされている人物と中西さんはもともと知り合いで、会社の社長として中西さんにベラルーシでのビジネスチャンスを探るために聞いたと本人に確認していますので、彼にとっても青天の霹靂で『驚きしかない』と言っていました。さらに『迷惑を被っている』とも言っていました」
Q.特番のなかの証言は、中西さんが“脅されて言わされている”ということですか?
(山田氏)
「まさにそうだと思います。また、併せて国営の通信社でも6~7本ぐらいの記事を配信しています。その中には番組に出てこない事実なども出てきますが、そこに書いてある話も事実とはかなりかけ離れている感じで、翻訳も恣意的なものになっていたりします。上司とされている人物に確認しましたが日本語のLINEのやり取り自体はその通りだそうです」
Q.LINEの文章は「中国企業がたくさん進出している」ということですよね?
(山田氏)
「そういうことです。上司とされている人物は、『危ないから写真などは撮らないようにしてください』というメッセージまで送っています。それも出てきますがロシア語訳は全然違うものになっていたり、支離滅裂です」
■日本に何を要求するのか?親露国家ベラルーシはロシアと合わせてみなければいけない
Q.日本とベラルーシに捕虜交換や交渉事などは特にないと思うのですが、目的は何ですか?
(山田氏)
「ベラルーシは、世界有数の親ロシアの国ですので、ロシアの思惑と合わせてみるべきで、ベラルーシ単体で日本との関係というよりは『ベラルーシとロシア』対日本でみないといけないと思います。ロシアとベラルーシ両国の利害に関することを要求してくる可能性があります」
Q.海外では私たちもスパイとして捕まる可能性があるということですか?
(山田氏)
「特に写真撮影では、写してはいけないものが勝手に写り込むこともありますので、くれぐれも気を付けて撮影してください」
(「情報ライブミヤネ屋」2024年9月10日放送)