【独自解説】混乱の韓国、最大の懸念は“もしミョン”?韓国検察、ユン大統領を内乱罪と職権乱用の疑いで捜査開始 今後の情勢を専門家警鐘「辞任が遅れてデモが拡大した場合は、旅行者も危なくなるかも」
2024年12月7日、自ら発した『非常戒厳』について謝罪した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。ユン大統領の“最側近”キム前国防相が緊急逮捕されるなど連日混乱が続く韓国は、今後どうなっていくのか?日本との関係は?NNNソウル・横田明記者のリポートを交え、韓国に詳しい神田外語大学客員教授・黒田勝弘氏が解説します。
■ユン大統領『非常戒厳』巡る騒動の最新情報 今後、韓国はどうなる?
『聯合ニュース』によると2024年12月8日、検察特別捜査本部の朴世鉉(パク・セヒョン)本部長は「公務員が職権を乱用し、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こしたもの」として、ユン大統領を内乱と職権乱用の疑いで捜査すると表明しました。同月9日には、最大野党『共に民主党』がユン大統領を内乱罪で捜査するための“特検法”を国会に提出。同月12日の採決を目指しています。
また、同月8日未明、金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相がソウル中央地検に自ら出頭。韓国検察の特別捜査本部は、キム前国防相を内乱などの容疑で緊急逮捕し、携帯電話を押収して捜査しています。非常戒厳を提案し、ユン大統領と共に主導したとみられています。
Q.検察がユン大統領を内乱の疑いで捜査を始めると発表しましたが、今後どう動いていくのでしょうか?
(NNNソウル支局長・横田明記者)
「検察は告発を受理した段階なので、まだ捜査のごく初期で、本格的な捜査はこれからになります。一方、キム・ヨンヒョン前国防相については、SNSのアカウントを削除するなど証拠隠滅の動きがあったため、緊急逮捕という形になりました」
Q.一度否決された『弾劾訴追案』ですが、野党側は臨時国会を何度も開いて『弾劾訴追案』を何度も出そうという動きなのでしょうか?
(横田記者)
「野党側は、『弾劾訴追案』否決でも攻勢を緩めず、毎週土曜日に『訴追案』の採決を続けると言っています」
Q.野党が『訴追案』にこだわる理由は?
(横田記者)
「法律の下で大統領を罷免に追い込むには、弾劾という手しかないので、『弾劾訴追案』にこだわっているということだと思います」
Q.与党側は大変苦しい立場ですよね?
(横田記者)
「与党側は、大統領の早期退陣により、民主主義を立て直すとしています。ただ、メディアからは『ポーズに過ぎない』と、やや批判的な報道もされています」
Q.与党側はユン大統領を国政には関与させないと発表しましたが、実質これからの韓国は誰が担うんですか?
(横田記者)
「具体案は示されていませんが、いくつかの案はメディアなどで浮上しています。案①は『責任首相制』で、大統領の権限を首相に譲り渡すものです。案②は『挙国一致内閣』で、野党を含めた大連立のような形です」
Q.今日もソウル市内で集会やデモは行われていますか?
(横田記者)
「昼の段階では大きな集会などは行われていませんが、野党系の団体が夜7時から抗議集会を開くとしていて、また多くの市民が集まる可能性があります」
■「これがクーデターだとすれば全くの手抜かり」44年前の戒厳令を体験した専門家が感じた、今回の“違和感”
Q.黒田さんは1980年の「光州事件」の非常戒厳宣言の際にも韓国にいたということですが、その時と今回を比べて、いかがですか?
(神田外語大学客員教授・黒田勝弘氏)
「今回、全てテレビで中継されていました。テレビで中継される、ある種の大統領のクーデターというのは異例で、民主化された韓国で戒厳令も妙な話だなと思って、違和感を覚えました。戒厳令は、まず軍隊が国会を封鎖したり、メディアに部隊を派遣して統制したりするんですが、そういうのが一切なくて、これが戒厳令あるいはクーデターだとすれば、全くの手抜かり。これでよく何かしようとしたなという、そんな印象でした」
Q.1980年に起きた『光州事件』は軍隊が自国民に銃口を向けるという大変な事件でしたが、その事件が頭によぎった人や、国家の存亡を考えた若い人などが、命がけで国会まで行ったのでしょうか?
(黒田氏)
「というよりは、韓国は徴兵制の国で、自分の家族も軍隊に行っているので、それだけ身近な存在です。そんな存在が政治的案件に利用されて、世論から多くの非難を受けるのは困るので、軍の在り方に対して敏感に反応するわけです」
■“もしトラ”ならぬ“もしミョン”に備えよ?ユン大統領、韓国、日本…それぞれの今後
『内乱罪』は国家権力を排除・国憲を乱す目的で暴動を起こした者を処罰する刑法で、指揮した者は死刑、無期懲役または5年以上の懲役もしくは禁錮。現職大統領も刑事訴追が可能で、不訴追特権の例外に当たります。
Q.今回、ユン大統領は内乱罪で逮捕・起訴されることはあるのでしょうか?
(黒田氏)
「当然、あります。今回の騒ぎについて、海外のメディアは『大統領のセルフクーデター』と言ったり、僕は『自爆クーデター』という言い方をしていますけど、戒厳令を伴って軍隊を動員したわけですから、成功するとヒーローになりますけど、失敗すると、これは反逆・反乱です。最終的には法廷に立たされて、投獄という流れではないでしょうか」
Q.民主主義が根付いた韓国で、軍隊が大統領の一都合で出ていくというのは、国際的に見ても、韓国の人から見ても、「時代遅れも甚だしい」という考えの人が多いですか?
(黒田氏)
「そうです。僕もそう思いましたし、しかも勝算がないです。野党を何とかしたいからといって、それを戒厳令で封じ込めるのはあり得ないし、成功しません」
Q.現実路線としては、今後の韓国の国政は誰が担うのでしょうか?また、大統領選は、いつ行われるのでしょうか?
(黒田氏)
「大統領が辞めた後、首相が代行した例は過去に多くあるので、首相が一定期間代行することは、十分あり得ます。ただ、与野党が一定程度同意しないと難しいので、それがどうなるかです。ユン大統領が辞めるのは間違いないので、大統領選は2025年3月ぐらいにはあるのではないでしょうか」
Q.観光客が行くような場所では、デモなどは起きていないのでしょうか?
(黒田氏)
「現時点では、デモや集会や衝突が起きているのは、国会周辺です。明洞を始め観光スポットやソウルの中心街には何もないので、平常です。僕もご飯を食べに行っています。ただ、今後辞任が遅れて、世論に不満が溜まってデモが拡大した場合は、旅行者も危なくなるかもしれません」
Q.今後、日米韓あるいは日韓関係は、どうなっていくと思いますか?
(黒田氏)
「それが最大の心配事です。アメリカではトランプ大統領が今回当選しましたが、もしトランプ氏が当選したら大変だということで、日本では“もしトラ”と言っていましたよね。今、僕は“もしミョン”だと言っています。もし、野党のイ・ジェミョン氏が大統領になったら日本は大変なことになるので、“もしミョン”に備えなければいけません。次の政権の流れは当然、野党です。与党は大失敗したわけですから、野党政権不可避という流れだと思いますので、日本との関係は厳しくなると懸念しています」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年12月9日放送)