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【独自解説】「5人辞めないともたない」日々増える“疑惑”…岸田首相、近く人事行い安倍派を一掃?一方、エース級投入の東京地検、事情聴取は国会閉会後か「それなりに勝算がある」

2023年12月12日 17:51
【独自解説】「5人辞めないともたない」日々増える“疑惑”…岸田首相、近く人事行い安倍派を一掃?一方、エース級投入の東京地検、事情聴取は国会閉会後か「それなりに勝算がある」
岸田首相 安倍派一掃か?

 自民党安倍派の裏金疑惑をめぐり内閣改造や党内人事を行うかについて岸田総理は、「適切なタイミングで適切に対応を考える」と述べ、近く人事に踏み切る考えを示しました。岸田政権への影響はどこまで拡がっていくのでしょうか?元検事の亀井正貴弁護士と政治アナリストの伊藤惇夫氏が解説します。

安倍派だけでも数億円?“裏金”疑惑 日々新たな情報が続々と…

 自民党安倍派の松野氏、高木氏、世耕氏、西村氏、萩生田氏、塩谷氏などがパーティー券のノルマを超えた分のキックバックを受け、収支報告書に記載せず裏金化したのではないかという疑惑ですが、新たに4人の議員の名前が出てきました。橋本聖子元五輪相側が1000万円超、さらに大野泰正参院議員側が5000万円超、池田佳隆衆院議員側は4000万円超、谷川弥一衆院議員側は4000万円超などとなっていて、議員側へのキックバックの総額は、安倍派だけで数億円と見られるということです。橋本聖子元五輪相は、「調査をしっかりとしたうえで、しかるべきときに説明責任を果たしていきたい」と話しました。

Q.今回も新しい名前が出てきて、毎日情報が更新されていますよね?
(政治アナリスト 伊藤惇夫氏)
「見方を変えると、安倍派の場合はノルマを超えてパーティー券を売った人は、ほぼすべてキックバックを受けていたのではないかという疑念がわいてきます」

Q.どんどん人の名前が出てきますので、東京地検特捜部はかなり情報を掴んでいると思えますが、もうリストを持っているのではないですか?
(亀井正貴弁護士)
「小出しで情報を出してきていて、今は捜査に向かって行く過程を作っていますので、それなりの情報を持っていると思います」

Q.特捜部から議員に対して「国会が終わったら話を聞きたい」という話はもう行っているのでしょうか?
(伊藤氏)
「そういう話は、急に言われると思います。超大物だった場合は、地検ではなく別のホテルなどで事情聴取をするといったケースが過去にはありました」

お金の取り扱いに関しては、「事務総長に報告や了承を得ていた可能性極めて高い」

 安倍派の直近5年間の事務総長は、下村博文元文部科学相と今回のキックバックの件で名前が挙がっている松野博一官房長官と西村康稔経産相、高木毅国対委員長となっています。そもそも事務総長というのは人事リストの作成やお金の取り扱いなど派閥実務のとりまとめ役です。

Q.一部報道で、会計担当の職員から事務総長にお金に関しての情報は報告済みだとありましたが?
(伊藤氏)
「それは当然だと思います。会計担当の職員が自分の差配でキックバックを行ったり、裏金作りに協力したりすることはまずあり得ません。必ず“上”の了解を取っています。“上”ということになると責任者は事務総長ですから、事務総長に報告や了承を得ていた可能性が極めて高いと思います」

Q.みなさん「今喋ると捜査に影響が出るので…」と言いますが、本当に捜査に影響が出るのですか?
(亀井弁護士)
「捜査自体には影響は出ません。しかし『やってない』と言って、捜査でばれたらウソをついていたことになりますし、本当のことを言うと、それが捜査に使われてしまいますので不利になります。何を言っても不利になるので、どうでもいいようなことを言うしかないのです」

 ある自民党幹部からは、「5人辞めないともたない」といった声や、総理周辺からは「松野さんだけ辞めればよいという問題ではない」といった声が聞かれています。政府与党内からは、安倍派幹部の5人は閣僚や党の役職について辞任は不可避との声が強まっているということです。

Q.裏金などの金額の大小はあるとして、大臣だけでなく副大臣・政務官も含めて安倍派を一掃する大鉈を、岸田首相が振るえるのでしょうか?
(伊藤氏)
「岸田首相は、第4番目のあまり大きくない派閥・岸田派のリーダーです。そのため、麻生派、茂木派、最大派閥の安倍派の主流3派のバックアップがないと政権が安定しません。ですから、この安倍派の5人は一貫して重要ポストに就き続けてきました。それを切るとなるとなかなか大変な作業になると思います。その上、それ以外の副大臣・政務官の場合は、金額の大小の問題も含めて一掃するとなると政権運営にもかなり大きな影響が出てくると思います。同時に安倍派そのものがこれからどうなって行くのか?“解体”なのか“解体的出直し”なのかというのが注目の的です。そして、これから派閥からどんどん離脱者が出てくるという話もあります。来年はパーティーをしないので“カネ”も貰えない。安倍派と言われただけで評判が落ちてしまう。そうなると派閥にいる意味がないので『無派閥の方がいいよね』ということを言っている人も増えてきています。また、ノルマに達せず自腹を切っていた人は『来年、パーティーがなくてよかった』と思っているんじゃないでしょうか」

Q.疑惑を持たれている人たちは、今調査中なのに先に人事の話が出てくるのは不愉快ではないのですか?
(伊藤氏)
「『なんで先にそんなこと言うんだ。なんで首切るんだ。結果が出てからでいいじゃないか』と当事者は思っている可能性が高いと思います。ただ岸田首相としては、世論調査もあって支持率はさらに下がると思います。そうなると政権の先行きまで怪しくなってきます。であるならば、世間に向けてのアピールとして安倍派をぶった切るという思いが強いので、その辺りがぶつかり合っている状況だと思います」

Q.総裁選に向けて最大派閥の安倍派をぶった切るというのは、ギャンブルですよね?
(伊藤氏)
「ただ、安倍派自体が迷走状態になっています。実は安倍派の中堅・若手は、この5人がずっと重要ポストを占めていることに不満を持っています。安倍派の中でもこの5人を支えようという人たちと、さっさと辞めてくれた方が、ほとぼりが冷めたら自分たちにポストがまわって来るんじゃないかと思っている人もいて、複雑な状況だと思います」

Q.カネの流れがわかりにくいのは、現金でやりとりしているからですか?
(伊藤氏)
「全部『振り込み制』にするのが最低限の対策です。総務省に全部収支報告書は集まるのですが、総務省が全てデジタル化すれば、誰でも見られるようになります。そうすると、悪いことはばれるので、ちゃんとした収支報告書を出すようになると思います。もう一つ言いますと、政治資金規正法そのものを変えることです。企業団体献金について5万円以上が名前を出さないといけないのに、パーティーはなぜか20万円以上で構わないのです。そういうことを含めて政治資金規正法上、出金と入金が本当にガラス張りになるようなシステムに作り変えるというのが、とりあえずの大きな目標になると思います」

事情聴取は国会閉会後?「政治家としての生命は、かなり危うくなる」

 元衆議院議員の薗浦健太郎氏は2022年12月、関連する政治団体の収支報告書にパーティー収入など約4000万円が不記載だったとして、政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、罰金100万円と3年間の公民権停止となっています。公民権停止の期間中は、議員資格はなくなり、選挙への立候補もできなくなっています。

 2020年12月、安倍元首相の第1秘書は、「桜を見る会」の前夜祭の2016~2019年の4年分の収入と支出約3022万円分を収支報告書に記載しなかったとして略式起訴され、罰金100万円の略式命令を受けています。しかし、安倍元首相は公職選挙法や政治資金規正法違反の疑いで告発されましたが、2020年12月、東京地裁特捜部は嫌疑不十分で不起訴となっています。2021年7月、検察審査会で一部の処分について「不起訴処分は不当」と議決されましたが、2021年12月、再び嫌疑不十分で不起訴となっています。

Q.略式起訴された薗浦議員と不起訴の安倍元首相の違いは何でしょう?
(亀井弁護士)
「安倍元首相の場合は証拠が足りていなかったので起訴できなかったということです」

Q.金額によって起訴・不起訴に影響したりするのでしょうか?
(亀井弁護士)
「影響します。検察庁内部に決まりがあるわけではないのですが、前例などをみて決めています。数千万円なら略式起訴で、億を超えてくると公判請求、禁固刑を求める正式な裁判になります」

Q.東京地検特捜部は、派閥の会計責任者や議員秘書への任意聴取を始めているということですが、東京地検特捜部の本気度はどこまででしょうか?
(亀井弁護士)
「相当の人数の応援検事を集めていますので、本気度は相当高いと思います。ポイントとしてはまず“ブツ”をおさえる必要があるので、“ガサ”を早い目に打つべきだと思います。そして事務総長は引き継がれますから、引継ぎの資料や情報があると思います。後は金額です。『どのくらいの金額ならどのような処分をするか』を決めていく上で重要な事案になると思います」

Q.これで何もないとなると、東京地検特捜部は国民からもいろいろ問われますよね?
(亀井弁護士)
「そうなると思います。検察の威信が問われる事案になって来ていると思いますので、徹底的にしないと国民の信頼は得られないと思います」
(伊藤氏)
「ここで、政治家までたどり着けなかったということになると、東京地検特捜部の威信が丸つぶれになります。実は、去年の秋ぐらいから、密かにこの事案は動き始めています。今、政治家がらみの案件ですと『柿沢未途氏の件』もあるのですが、そちらは若手ばかりです。つまり、中心部隊はすでにこの問題にかかっていたと考えて良いと思います。もう1年近くかけてやってきているので、それなりに勝算があるということで動き出したんだろうという気がします」

Q.特捜部の中心人物が動いているのですか?
(亀井弁護士)
「最高検も従前の捜査の中心人物がいますし、大阪からもエース級が行っていますので、本気だと思います」

Q.政治家は、こういう事案で事情聴取されただけで不名誉、家宅捜査が入ればもっと不名誉、逮捕まで行かなくても事実上はかなりの間影響力を失いますよね?
(伊藤氏)
「政治家としての生命は、かなり危うくなることは間違いないです」


(「情報ライブミヤネ屋」2023年12月11日放送)