【独自解説】『増殖する遺伝子』に不安の声?コロナ新ワクチン『レプリコン』に大きな波紋 製薬会社「接種者からの感染は起こり得ない」とするも、接種者“入店拒否”や医療機関に抗議電話も…騒動の背景を追う
世界で初めて日本で承認された“次世代型”コロナワクチン『レプリコン』。2024年10月から定期接種に新たに加わりましたが、今このレプリコンを巡って一部で大きな波紋が広がり、製薬会社が注意喚起の広告を掲載する事態に。一体、何が?『読売テレビ』指宿文解説委員の解説です。
■「ソーシャルメディアなどでデマの投稿」製薬会社が異例の広告掲載
2024年10月16日の新聞を見て、びっくりした方もいるのではないでしょうか。こちらの誌面は、製薬会社『Meiji Seika ファルマ株式会社』が出した広告です。
この広告によると、「ご注意ください。新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン(レプリコンワクチン)に対して、ソーシャルメディアなどで科学的根拠のない話やデマの投稿が相次いでいます」ということです。
新型コロナワクチン『レプリコン』は、2024年10月から定期接種の中に新たに加わりました。しかし、このワクチンを巡って今、一部で大きな波紋が広がっています。
ジムや飲食店などに「レプリコン接種者は入って来ないでください」というような投稿がSNSにアップされていたり、「レプリコンを使わないで」と医療機関に抗議の電話をかける人もいたりして、業務が滞ることもあるといいます。
■『世界初』と『増殖』が不安要素に…レプリコンワクチンの“仕組み”とは?
波紋が広がっている理由としては、『世界初』と『増殖』がキーワードになってきます。
まず、レプリコンワクチンとは何かというと、新たなワクチンとして『モデルナ』や『ファイザー』などがありますが、そのうちの一つに加わるワクチンです。
発症予防率は56.6%・重症化予防率は95.3%で、重症化を抑えることができます。また、従来のワクチンよりも少量で高い中和抗体の値を維持、つまり「高い効果が期待できます」と説明されています。一方で、接種部の痛み・頭痛・倦怠感・発熱(37.5度以上)・アナフィラキシーショックなど、副反応もあります。
これだけ見ると、他のワクチンと変わらないような説明だと思いますが、先ほど言った『世界初』の部分に一つ、不安要素があります。
2021年、『ワクチン開発・生産体制強化戦略』がありました。要するに、新型コロナが流行り始めた頃、「いつまで経ってもワクチンが届かない」「製造・開発はどうなっているんだ」ということで、国として開発を進め、開発・承認・生産が迅速化しました。
そのおかげで『世界初』を成し遂げましたが、2023年11月に「日本が世界で初めて承認した」というのが一つの“不安ポイント”です。
もう一つが、レプリコンワクチンの仕組みです。注射を打って私たちの体内に入っていくと、メッセンジャーRNA、つまりコロナの遺伝子情報が複製・増殖し、抗体を生み出していきます。増殖するので、少量でも効き目があるということです。
ただ、製薬会社や国からは「増殖は一時的で、2週間~1か月後には遺伝子情報は低下する」というようなアナウンスはされていますが、この『増殖』という言葉が、不安を呼び起こすところではないでしょうか。
■「接種者から感染するのでは…」懸念に製薬会社は反論 厚労相も「冷静な対応をお願いする」と注意喚起
また、2024年8月8日に『日本看護倫理学会』が声明で、「自己複製するワクチンなので、接種者から非接種者に感染するのではないか」と懸念を示しました。
これに対し、『Meiji Seika ファルマ株式会社』は2024年10月9日、「ウイルスの一部分しか使用しないため接種者からの感染は起こり得ない」と反論。福岡厚労相も同年10月4日、「ワクチン成分が他者に伝播し、健康被害が生じるという科学的な知見はない。国民の皆様に冷静な対応をお願いする」と話しました。
ただ、『日本看護倫理学会』の声明から2か月が経っていることも含め、「もう少し早く適切な情報を出せなかったのか」というところはあったかなと思います。
■「2024年の接種については医療機関に相談を」丁寧な説明が一つの判断材料に―
大阪公立大学・城戸康年教授によると、「“増殖する”=“感染する”という懸念は理解できる。接種が始まった後も、効果・副反応などについて監視・検証が必要」ということです。承認の段階で副反応なども示されているので、「受けたい」と思うのか「やめておこう」と思うのか、一つの指標になるかなと思います。
また、城戸教授は「コロナのワクチン接種について、薬やワクチンにはメリット・デメリットがある。これまでのワクチン接種での経験をもとに、2024年の接種については医療機関に相談を」と話していました。
いずれにしても、わかりやすく丁寧に、ある程度の時間をもって説明してもらうことが必要です。私たちの体に入れるものなので、そのことが「接種する・しない」を判断する一つの大きな材料になると思います。(『読売テレビ』指宿文解説委員)
(「かんさい情報ネットten.」2024年10月16日放送)