【独自解説】“指示役A”も「夫婦のことはしらない」栃木・那須夫婦遺体事件、“資金元“や“さらなる指示役”が背景に?「夫妻がどこでどんな行動を取るのかを知った上で、犯行計画を練った人物がいる」
栃木・那須町で夫婦の遺体が見つかった事件。既に逮捕された平山綾拳容疑者に続き、“指示役A”とみられる男も逮捕され、「頼まれて指示した」と供述していることがわかりました。警察は、別の人物が関与しているとみて捜査を進めています。果たして黒幕は?背景には何が?組織犯罪対策などを担当された元警視庁警視・櫻井裕一氏、弁護士・野村修也氏のダブル解説です。
「佐々木容疑者にお金を渡す資金元がいる」数か月前に知り合い、やりとりはSNS、本名は知らず…希薄な人間関係の中、1000万円以上の金で雇われたか?
4月29日、「死体損壊の疑い」で逮捕されたのが、“指示役A”とみられる佐々木光容疑者(28)です。防犯カメラの捜査などから、事件後は沖縄に滞在している可能性があるとされ、捜査員を派遣していました。佐々木容疑者は少なくとも何日間か滞在していたとみられ、28日午後に那覇空港で身柄が確保されました。その際、福岡行きのチケットを購入していて、逃亡する可能性があったということです。29日に逮捕、30日午前9時すぎに送検されました。
Q.沖縄から福岡に行こうとしていたということですが、事前に計画していたのか、行き当たりばったりだったのか、どう思われますか?
(元警視庁警視・櫻井裕一氏)
「平山容疑者が出頭し、逮捕されたことによって、佐々木容疑者も『いずれ自分の所に捜査の手が及ぶ』と察知して、逃走したのだと思います。沖縄に行った理由は、沖縄に土地勘があるのか、知り合いがいるのか。そして、また福岡に行くというのは、『転々としたい』ということがみてとれます」
Q.佐々木容疑者は、「死体損壊の疑い」なのですね?
(弁護士・野村修也氏)
「今のところ明らかになっているのは、『火をつけられて遺体が損壊された』『死体が遺棄された』ということです。殺人に関しては、疑いはあるかもしれませんが、捜査は今後続いていくということだと思います」
佐々木容疑者は、「宝島さん夫婦のことは知らない」と供述しています。また、確保時には複数台のスマホを所持していました。平山容疑者が「Aさんにスマホを取られた」と供述していることがわかっていますが、この中に平山容疑者のものが含まれていたかはわかっていません。
最初に逮捕された平山容疑者は、「Aさんから指示を受け、知人2人に遺体の処理を頼んだ。2人の本名は知らない、あだ名で呼んでいる」と話していますが、“指示役A”とされる佐々木容疑者も「頼まれて、綾拳に指示をした」と話していることから、捜査本部は更なる指示役がいるとみて捜査を進めています。
佐々木容疑者は、平山容疑者について「2024年2月か3月に、東京・渋谷で知り合った。主にSNSでやりとりしていた」と話しています。捜査関係者によると、それぞれの供述は「佐々木容疑者からは『綾拳』、平山容疑者からは『光』という、下の名前しか出てきていない」「平山容疑者は最初『Aさん』と呼んでいたが、その後『光』という名前を出すようになった」ということです。
また、平山容疑者は「事件当日の未明、Aさんから指示を受け、事件後に報酬として千数百万円を居酒屋で受け取った」と供述しているということですが、容疑者の自宅・車・銀行口座からも多額の現金は見つかっていません。
Q.平山容疑者も佐々木容疑者も20代で、佐々木容疑者の職業はわかりませんが、1000万円以上の現金をポンッと居酒屋に持ってくるというのは、本人のものとは考えにくいですよね?
(櫻井氏)
「まず違うと思います。やはり、佐々木容疑者にお金を渡す資金元がいると思います。平山容疑者に1000万円以上を渡したとなれば、当然車で運んだ知人2人にも数千万・数百万円を渡しているはずです。では、佐々木容疑者はどれだけ貰うのかということになると、かなりの資金元がいないと、これだけのお金は動かないと思います」
Q. 1000万円以上のやり取りはあるとはいえ、非常な希薄な人間関係の中で、お金だけでこのような指示を依頼し、残酷な犯行をするということに恐怖を覚えますが…。
(櫻井氏)
「私は、金額的には多いなと感じました。佐々木容疑者と平山容疑者、遺体を栃木に運んだという“実行犯”2人は、遺体処理を役割として動いたのかなと思います。佐々木容疑者を含めますが、その上にいると言うのはなぜかというと、『殺害を実行したのは誰か?』ということになります。及び、『なぜ宝島さん夫妻を殺害しなければならなかったのか』、その原因・動機もいると思いますので、それが佐々木容疑者の上にいるのではないかと私はみています」
「夫妻の行動を知った上で、それに合わせて犯行計画を練っている」佐々木容疑者の“上”にいる人物とはいったい…?
事件前日・4月15日の午後9時半ごろ、東京・上野からワンボックスカーに乗り込む宝島さんの姿が防犯カメラに映っていました。その同じ頃、平山容疑者は東京・品川区のコンビニで知人2人と合流し、車を貸したということです。その後、午後11時半ごろに東品川で宝島さん夫妻の姿が確認されていますが、新しい情報として、新規出店に向けた物件探しのために不動産業者の知人男性と共に訪れていたということです。
Q.宝島さん夫妻の行動を細かく把握している人間でないと、犯行は不可能ですよね?
(野村氏)
「一番頂点にいる人が全体を見ていて、宝島さん夫妻がどこでどんな行動を取るのかを知った上で、それに合わせて犯行計画を練っているということはみえてきました。一方で、犯行をしている人たちの“気持ち悪さ”、あまり密な関係でもないにも関わらず残虐なことをするというのは、最近あった『広域強盗』と似ています。こういうのを、匿名・流動型犯罪グループ『トクリュウ』と呼びます。昔は半グレと呼んでいた人たちとか、最近では暴力団の対策法が強化され、『暴力団に所属していると犯罪がやりにくい』と外に出ている人たちが結構いて、そういう人たちがうまく使われているとすれば、凶悪犯罪が形を変えてきているという気がします」
Q.身柄の確保時、佐々木容疑者は複数台のスマホを所持していましたが、捜査本部はこの辺りから探っていくことになるのですか?
(櫻井氏)
「佐々木容疑者が持っていたスマホは、誰に繋がっていたか。一番は、宝島さんと面識のある人間・恨みを持っている人間・トラブっている人間、これが誰だったのかがわからなければ、原因・動機がみえません。原因・動機がみえないと、殺害した実行犯は誰なんだということになってきますので、その辺に進んでいくんだと思います」
Q.警察は、スマホの履歴から既にいろんなことを見ていますよね?
(櫻井氏)
「見ていると思います。下の4人は、先ほど野村先生が言った通り『トクリュウ』関係のグループであっても、おかしくはないです」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年4月30日放送)