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「金遣いが荒いから財産管理してあげる」80代姉妹から約2000万円着服か 口座残高は数百円のみ 

2024年6月27日 18:48
「金遣いが荒いから財産管理してあげる」80代姉妹から約2000万円着服か 口座残高は数百円のみ 

 介護施設を利用していた80代の姉妹の財産を管理し、約2000万円を着服したなどとして、施設を運営していた会社の元社長が逮捕された事件。姉妹の口座には当時、数百円しか残っていなかったことが新たにわかりました。
 
 知人
 「保険もあって、普段のお金もちゃんと通帳にあった、それでここまで来ないとあかんの?」
 妹
 「逃げてきてん、逃げさせられてんねん、私が悪いから」
 知人
 「何も悪いことない」
 妹
 「私が(施設側に)相談したんや、姉がこけたりするから」
 知人
 「それは介護の人やからあたりまえや」
 
 これは去年秋ごろ、80代の姉妹が知人に被害を相談したときの映像です。

 姉妹の知人男性
 「お金を使いすぎるから、私が預かっていますとか、そんなことばっかり言うわけで、でも親戚でもない後見人になっているわけでもない。 これはおかしいなと思って」

 27日、取材に答えたのは、80代の姉妹から相談を受けた知人の男性。明らかになったのは、経済的虐待ともいえる卑劣な犯行の実態でした。

 西村菜花 記者
 「姉妹の財産を着服していたなどとして逮捕された男の身柄が検察庁に送られます」

 27日送検された、介護施設運営会社の元社長、西影由貴容疑者。

 去年7月までの約2年間に、施設を利用していた80代の姉妹から約2000万円を着服したなどの疑いが持たれています。

 容疑者(吹き替え)
 「金遣いが荒いから僕が財産管理してあげる」

 警察によると、西影容疑者はこうウソをつき、 姉妹の通帳やキャッシュカードなどを預かったと言います。そのうえで姉妹の生命保険を解約させるなどして、現金を132回にわたり、口座から引き出していました。今年2月時点で、姉妹の口座の残高は数百円しかありませんでした。

 さらに西影容疑者は、着服したとされる2000万円とは別に、姉妹の自宅を売り払い、約800万円をふところに。姉妹は手配された集合住宅に無理やり引っ越しさせられますが、そこでの生活は虐待ともいえる悲惨なものでした。

 姉妹(吹き替え)
 「金は与えられず、電気やガスは止められ、風呂に1か月以上入れなかった。食パン1枚を2人で分けたこともあった」

 姉はクーラーもない部屋で熱中症になり、病院に搬送されたこともあったということです。

 27日、姉妹から被害の相談を受け、警察に通報した男性が取材に応じ、当時の実態をかたりました。

 警察に通報した清掃員の夫
 「(姉妹は)怖がっていましたね 。(西影容疑者に)怒られると。マンションの下で、うちのかみさんとかとしゃべっていても、近所の人間としゃべるなとか、そういうこと言われると、怒られるねんと。一介護事業者がそこまでするのかなと」

 男性らはその後、姉妹から「もう会わない」などと書かれた手紙をもらったということです。

 姉妹(吹き替え)
 「今後、私たちに関わることについて、何か言いまわるようなことは一切しないでいただきたい。連絡を取ったりお会いする気もございません」

 この手紙は西影容疑者が、事件発覚を免れるために姉妹に書かせていた可能性があるということです。

 なぜ、姉妹は西影容疑者を信用して財産を管理させてしまったのでしょうか。

 姉妹(吹き替え)
 「介護施設の人がそんなことしないだろうと信じてしまった」

 西影容疑者は調べに「金の引き出しをお願いされてやった」などと容疑を一部否認していますが、警察は借金の返済や会社の運転資金に充てるために犯行に及んでいたとみて、調べています。

◇◇◇

 (黒木千晶キャスター)
 改めて今回の事件について振り返っていきたいと思います。

介護施設元社長 利用者から着服か

 まずこの施設を利用していた80代の姉妹、認知症はなかったということですが、通っていた介護施設の元社長に「金遣いが荒いから僕が財産管理してあげる」などと言われ、通帳やクレジットカードを預けてしまいました。

 そして約2030万円を超える被害があるとみられていますが、その中には、生命保険の解約金1200万円相当も含まれているということです。手元に現金があった方がいいから、ということで解約してしまったということです。

 さらに自宅を売却して、お金は容疑者の懐に入っているということなんですが、これが横領にあたるかどうかは警察が調べているということです。

 そしてクレジットカードですが、約100万円の被害のうち、名義が違うじゃないかとクレジットカード会社から問い合わせがあったものの、容疑者は「孫に当たるんです」とクレジットカード会社に嘘を言った疑いもあり、様々な被害があります。

 さらに事件の発覚を恐れて周囲と遮断するために「もう会わない」などという手紙を書かされたという可能性も出てきています。

高齢者への経済的虐待の現状は

 高齢の方の財産や年金などを勝手に使い込むことは「経済的虐待」とも言われています。

 実際に、このような例がありました。2020年東京で起きた例ですが、認知症の入所者の80代の女性の口座から現金600万円を、介護付き老人ホームの職員が引き出した窃盗の疑いで逮捕されたという事例もあります。

 こうした介護職員による高齢者の虐待、厚生労働省による2022年度の統計では856件となっているんですが、その中でも経済的な虐待というのは3.9%と非常に割合が低くなっています。

 ただ専門家によりますと「身体的な虐待に比べて、経済的な被害は見えにくい。だから把握されている事案は氷山の一角では」というふうに専門家も指摘しています。

 「誰が資産を管理しているのかなど含めて、自治体による積極的な実態把握が必要ではないか」というふうに専門家も話しています。

どう防ぐ?高齢者への経済的虐待

 ではどのようにこの被害を防げばいいのか。「成年後見制度」というものもあります。

 これは財産管理や契約など本人に代わって行うもので、認知症などで判断が不自由になった場合は、裁判所が選ぶ「法定後見」というものと、自分で判断力がある場合は自分でその後見人を選べる「任意後見」というものがあります。

 専門家によると「お金を奪われるリスクは減るものの、ただ費用がかかったり、任意後見人は誰でもなれるので、信用性にも不安がある」という指摘もあります。

 では経済的な虐待を、周りの人がどう気がついていくのかというですが、こういったチェックリストがあります。

 例えば資産と生活状況との落差が激しいんじゃないかとか、利用料や生活費の支払いができていない、こういった兆候があるそうなので、年金があるはずなのに何でお金がないんだろうとか、通帳をとられてしまって何でなんだろうとか、そういったサインに周囲が気づいていくことも重要になってきます。

 そういったものに気がついた場合は、自治体の高齢者虐待相談窓口や、警察などに連絡をすることが必要になってきます。

 今回の例は、周りの方が「ちょっとおかしいんじゃないか」と気がついたから発覚しましたけれども、そうでない場合はいつまでも発覚しない可能性もありますよね?

 (横須賀 解説委員)
 そこが本当に課題なんです。過去に取材したケースだと、知的障害とそれから重度の身体障害を負った方が、3000万円とられたケースがありました。
結構、証拠も揃っていて、警察に相談しても結局、警察はその時は動いてくれなかった、これが現実ということになります。

 成年後見制度もそうなんですけど、いろんな方が後見人になれるんですけれども、いわゆる民生委員とかも含めて周囲の目、これがいかに問題を発見し、問題を深刻化させないかってところが鍵なんですが、今、日本の社会に立ちはだかっている壁とも言えると思います。

 (黒木キャスター)
 周囲が気づくことができるかというところなんですが、今後高齢者の方の数も増えますけれども、同時に一人暮らしの高齢者というのも1.3倍に増えるという予測も出ています。

 なかなか周囲の方に頼れない方というのも増えてくると思うんですけれども、もし周りの方が何かおかしいんじゃないかというふうな兆候に気づかれた場合は、自治体の相談窓口だったり、警察に相談してみるようにしてください。

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