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【いまだ逃走中】『おい、八田!必ず捕まえてやる』大学生を死亡させた重要指名手配犯・八田與一容疑者、事故のシミュレーションから見えた“意思”『これは、凶器を車に変えただけの殺人事件』

2024年6月29日 6:00
【いまだ逃走中】『おい、八田!必ず捕まえてやる』大学生を死亡させた重要指名手配犯・八田與一容疑者、事故のシミュレーションから見えた“意思”『これは、凶器を車に変えただけの殺人事件』
事件から2年…八田與一容疑者は今、何を―

 2022年6月29日、大分・別府市で、赤信号で止まっていたバイク2台に軽乗用車が追突し、19歳の大学生が死亡、もう1人の大学生もケガをした事件。軽乗用車を運転していたとみられる八田與一(はったよいち)容疑者は事件直後に車を乗り捨て、その場から裸足で逃走。2024年6月29日で2年となった今も、逮捕に至っていません。事故のシミュレーションから見えた八田容疑者の“意思”とは?元捜査一課刑事が「『殺人罪』での捜査に切り替えるべき」と指摘する理由とは?犯罪ジャーナリストが分析する八田容疑者の現在とは?

事件から2年を前に、『殺人罪』へ変更を求める署名は約7万7000人分に

 2022年、大分・別府市で起きたひき逃げ事件で、重要指名手配されている八田與一容疑者。2024年6月28日、警察には、捜査容疑を『ひき逃げ』から時効がない『殺人罪』へ変更を求める約7万7000人分の署名が提出されました。

 容疑者が逮捕されないまま、事件から2年。19歳で亡くなった大学生の遺族が、“現在の心境”を明かしました。

(亡くなった大学生の遺族)
「6月29日が近づくにつれ、気持ちが乱れていることに、自分自身、気がつきます。あの信じられない悪夢のような日から、2年。息子が突然目の前からいなくなり、いつまでも犯人が捕まらないという、信じがたい現実。いまだに、思い切り声を上げて泣くことができていません」

 事件後、遺族や友人たちは、早期解決を願う『別府願う会』を設立。街頭やSNSを通じて、懸命に情報提供を呼びかけてきました。

『おい、八田!必ず捕まえてやる』

 これが、被害家族と共に八田容疑者を追い続ける支援グループが胸に刻むスローガンです。

 2023年9月に警察庁は、ひき逃げ事件としては初となる『重要指名手配』に指定。懸賞金は最大で800万円となり、2024年5月末までに5000件を超える目撃情報が寄せられました。また、大分県警は2024年6月28日、八田容疑者の現在の風貌を想像して描いた似顔絵を公開しました。

「これは『殺人』であって、ただの『ひき逃げ』ではない」2022年6月29日の夜…あの日、一体何が―

 2年前の2022年6月29日、八田容疑者に追突された瞬間をとらえたカメラ映像には、画面右から火花を散らしながら2台のオートバイが道路上を吹き飛ばされる様子が映っていました。

 2台のバイクを跳ね飛ばした八田容疑者の軽自動車は、電柱に激突して停止。50m以上飛ばされたバイクは、路上に横倒しに…。

 大事故を起こし、跳ね飛ばした大学生を路上に放置したまま、この場から逃げた八田容疑者。その順法意識の低さは、SNSに上がっていた動画でも…。

(八田與一容疑者/SNSの投稿)
「将来を見据えて、安定した生活を送るという意味で、“万引き”とかをしたりして食べていけば…あとは“置き引き”とか、バレないように頂くという。スマホとかが手に入る場合もあるんで、生活にスマホが必要なんでね。はい、頑張りますよ」

 “万引き”“置き引き”といった犯罪行為を、嬉々としてカメラに話す八田容疑者(当時25)。そこに、『良心の呵責』は感じられません。

 亡くなった大学生の父親は―。

(亡くなった大学生の父親)
「これは『殺人』であって、ただの『ひき逃げ』ではない。凶器を車に変えただけで、これは完全な殺人だと、ずっと主張してきました」

 ひき逃げではなく、殺人事件―。そう訴える根拠は、事件があったあの日、もう1台のバイクに乗っていた友人の重大な証言です。

(被害に遭った大学生)
「八田がスピーカーですごく大きな音を流していて、それをちょっと不審に思った(亡くなった)彼が、八田を少し見た。それにカッとなったかわからないが、言いがかりをつけてきて。本当にそれだけのことで、15~30秒ぐらいの、すごく短いやりとりだったと思う」

 トラブルが起きたのは、ひき逃げ現場から約370m離れた商業施設の駐輪場。亡くなった男子大学生は、その場で八田容疑者に謝罪。友人と共に、バイクで商業施設を後にしました。その後、二人は南に向かって進み、交差点が赤信号の時、先頭に2台並んで停車。

 しかし―。

(被害に遭った大学生)
「僕が覚えているのは、アクセルをすごく踏む音がして、『これ、何かおかしいな』と思ってバイクのミラーでパッと見たら、もうヘッドライトが近くまで来ていて、ヤバいと思って、一緒にいた彼に伝えなければと思って、パッと彼のほうを向いたら、もうその瞬間には突っ込まれて。最後に目が合って、それが最期でした」

 捜査関係者によると、八田容疑者の軽自動車は制限速度40kmの道を時速100km近いスピードで走行し、バイクの二人に突っ込んだと見られています。しかも、ブレーキを踏んだ痕跡もありませんでした。

“車を止めて事故を避けよう”という意思は感じられない…シミュレーション作成した交通事故鑑定人が指摘

 元宮城県警白バイ隊員で現在は交通事故鑑定人として活動する佐々木尋貴氏は、今回の事案では、少なくとも“車を止めて事故を避けよう”という八田容疑者の意思は感じられないといいます。

(交通事故鑑定人・佐々木尋貴氏)
「今回の場合は、十分に停止することができたと思います。前さえ見ていれば、ずっと手前から信号が赤だということわかるだろうし、バイクのライトが2つ止まっているということも、わかると思いますので」

 佐々木氏は、八田容疑者の軽自動車の性能と事故現場の道路の状況など、膨大なデータを解析。短い直線で、どうすれば軽自動車が事件当時の猛スピードに到達できるのか―詳細なシミュレーションを作成しました。

 八田容疑者の車は制限速度40km/hで緩いカーブを抜け、直線道路へ。ここから、アクセル全開。事件現場の信号まで、距離150m。前方で停止するバイクがぐんぐん近づき…衝突時の時速は89km/h、“アクセルベタ踏み”は8秒間でした。

(佐々木氏)
「アクセルを踏み続けたままオートバイに衝突していますので、結構長い時間、踏み続けていると思います。本人に、あの直前で止まろうとする意思はなかったと思います」

 八田容疑者は追突後、二人の大学生を救助することなく逃走したとみられています。その姿を、複数の防犯カメラがとらえていました。辺りを見渡しながら、駆け足で逃走する八田容疑者。その後、夜でも明るく人通りのあるJR別府駅のそばを歩く様子が。しかし、足元をよく見ると靴を履いておらず、裸足でした。

 その後、多くの車が行き交う国道を横切り、海の方向へ。しかし―。

(「読売テレビ」西山耕平ディレクター/2024年6月28日に現場を取材)
「この付近で、事件当時、八田容疑者が着ていたとみられる特徴的なTシャツが脱ぎ捨てられているのを、警察が発見します。しかし、その後、八田容疑者の足取りはプツッと途切れたままになります」

 事件発生から1年以上経った、2023年9月。業を煮やした大分県警は、八田容疑者を『重要指名手配犯』に指定。全国の警察を挙げて、八田容疑者の行方を追う態勢を取りました。『道路交通法違反』での指定は、初めてのことです。

 元徳島県警捜査1課・秋山博康氏は…。

(元徳島県警捜査1課・秋山博康氏)
「指名手配犯からすれば、もう顔がバレているので、『もう変装せないかん』という気持ちになります。だから、人相・体格などを変えて、“巧妙な変装”をします。そこから何年も潜伏される、ということが考えられます」

 “巧妙な変装”による更なる逃亡を許さない―そのために、被害家族を支えるグループは『目』『鼻』『銀歯』『左耳の形』『指・爪』まで、八田容疑者の身体的特徴をSNSで市民に向けて発信。更なる目撃情報の提供を呼び掛けています。

“大都市圏”に潜伏し、“犯罪系の組織や集団”に属している可能性か?情報提供は0977-21-2131まで

 八田容疑者が逃走時、乗り捨てられた軽自動車の車内には、中に財布が入ったリュックサック・スマートフォン・スリッパ・スニーカーが残されていたということです。また、事件当時着ていたとみられる黒色のTシャツが、ヨットハーバーの駐車場で見つかりました。

 2024年6月28日に、そのヨットハーバーを取材した西山ディレクターに話を聞きました。

Q.Tシャツが見つかったということですが、事件当時も海に飛び込める水温だったのでしょうか?
(西山ディレクター)
「当時も、今年と同じように蒸し蒸しした暑さだったということです」

Q.ヨットハーバー周辺は、どういう所ですか?
(西山ディレクター)
「別府の大動脈である国道が程近い所に走っている場所ではありますが、一本奥の海側は夜になると明かりもついておらず、周辺住民も『非常に暗い場所だ』と話していました。ただ、国道に出ると車通りも多く、別府の中心といった場所で、近くには大阪行きの長距離バス乗り場や、関西方面へのフェリー乗り場などが数多く点在しています。警察もそれを把握していて、捜査していると思います」

 八田容疑者の逃走先について、元徳島県警捜査1課・秋山氏は「事件現場である九州から離れ、人が多い大都市圏にいる可能性が高い」、現在の状況については「変装して偽名を使い、身分証明書を必要としないところで、住み込みで生活しているのでは。犯人隠避罪に当たるため、友人など協力者がいることは考えにくい」との見解を示しています。

 また、八田容疑者が今何をしているかについて、犯罪ジャーナリスト・石原行雄氏は「犯罪系の組織や集団に属して、閉じられた空間で身を潜めて、社会生活をしている可能性がある。通常、“闇バイト”や“トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)”の仕事は無断でいなくなる心配があるが、八田容疑者には逃げる先がないので、そういう意味では“使い勝手が良い人材”と言える」、逃亡生活については「例えば『スマホが必要になったから置き引きしよう』とか、『裸足で逃げるのはつらいから靴を盗もう』といった細かい犯罪を重ねながら逃走しているはず」との見解を示しています。

 八田容疑者は現状『救護義務違反』容疑のみで手配されていますが、秋山氏は「この事案は、『殺人罪』および『殺人未遂罪』で逮捕状を請求すべきです」と話します。理由は2つあり、『救護義務違反』容疑の捜査は“交通担当”がしますが、『殺人』容疑になると凶悪犯の事件に長けた捜査1課が主導します(秋山氏によると)。また、時効も『7年』から『なし』となります。

 時効について、ご遺族も悲痛な胸の内を明かしています。

(遺族のコメント/一部抜粋)
「いつ捕まるのか、捕まるかどうかもわからない不安に加え、迫りくる“あと5年”という時効の壁。一体いつまで私たちは八田與一を追い続けるのだろう。終わりの見えないこの苦しい活動を、いつまで続けなければいけないのだろう。重要指名手配ポスターに並ぶ、八田以外のあまりにも古い写真を見ては、そう思うのです。どうかお願いです。『救護義務違反』ではなく、時効のない『殺人罪と殺人未遂罪』に早く切り替えて、全国での全力捜査、事件の早期解決を望みます」

 八田與一容疑者に関する情報提供は、下記へお願いいたします。

 0977-21-2131(大分・別府警察署)

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年6月28日放送)