【独自取材】富士山だけではない…京都でも市民が頭抱える“オーバーツーリズム” 車道歩く危険行為、民家前で騒音…住民が家から出られず通行禁止になった“人気の路地”も「住んでいる者としては、観光地とは思っていない」
多くの人でにぎわう、観光地・京都。コロナ禍が明け、外国人観光客が回復する一方で、再び深刻となっているのが『オーバーツーリズム』です。
(「読売テレビ」藤枝望音記者)
「バス停には、長蛇の列ができています」
市バスは混雑し、数本待たないとバスに乗れない人たちも…。
また、問題となっているのが、『タクシー不足』です。その解消のため、京都市内では2024年4月から全国に先駆けて、一般のドライバーが有料で客を乗せる『ライドシェア』が解禁となりました。外国人観光客に加え、バスの混雑を避け利用する地元の人も多いといいます。しかし―。
(キャビック・野村孝則さん)
「一般のドライバーをメインにしていくために、求人をかけたり色々な手法で人を集めるんですが、運転手の担い手が、まだ足りない」
一方、嵐山では―。
(藤枝記者)
「観光客が、歩道から車道にはみ出してしまっています」
歩道に人があふれているため、道路にはみ出し歩く人や、車の間をぬって道路を横断する人の姿まで。
この道は、渡月橋の前から竹林などに続く目抜き通り。京都市は、歩行者と自動車の事故を防ぐため、約20年前から土日祝日に限って、車両を北向きの一方通行にする取り組みを行っています。しかし、観光客の増加を受け、2023年11月に平日も含め一方通行にする実証実験を行いました。
地域住民と商店街側で設けられた、話し合いの場では―。
(周辺住民の声)
「観光客の安全確保のためには、歩行者天国などの交通規制は必要だ」
「車両通行禁止にすることで、他の場所で混雑したり渋滞したりするので、住民には迷惑だ」
「高齢者にとって、一方通行はバスに乗ることができず困る」
(嵐山商店街・石川恵介会長)
「地域住民が不満を持ったまま、見切り発車的なことは、できない。最終的に『観光客、来てくれるな』という地域になってしまったら、元も子もありませんので、地域住民から理解してもらえる方法があるのではないかと」
観光客と地域住民とのあつれきが顕著になっているのが、嵐山と並ぶ人気の観光地・祇園。店舗と民家が並ぶ『小袖小路』と呼ばれる100メートルほどの細い路地は、風情ある街並みで、あるネットドラマの舞台にもなりました。しかし、2024年5月29日には観光客の通行が禁止され、違反者には1万円の“罰金”を科すとした看板を設置しました。
(祇園町南側地区協議会・太田磯一さん)
「観光客が、この路地に20人30人来る。流れてくれればいいんですけど、滞留して、ガイドなどが説明を始める。そうなると、お家から出られない状態になるし、もちろん騒音もある。そのあたりが一番の問題点でした」
『小袖小路』は公道ではなく、地区が管理する私道です。すでに迷惑行為が相次ぎ、撮影などは禁止されていましたが、これまでは地域住民の“厚意”で通り抜けることはできました。しかし、地域住民からの苦情が多数寄せられて、この対応に踏み切ったといいます。
ただ、観光客が私道に足を踏みいれてしまう“理由”も―。
(藤枝記者)
「花見小路から伸びるこちらの道は公道なのですが、同じような道幅のこちらの道は、私道です」
祇園には、小袖小路の他にも私道が。地区の協議会は今後、観光客にもわかりやすいように看板を設置し、通行を禁止していく方針とのことです。
(太田さん)
「ここの地域に関しては、観光客相手の土産屋・レストランは皆無。住んでいる者としては、このエリアは観光地とは思っていないです。京都市内で混雑している所は色々ありますが、それぞれ何らかの違う課題を抱えています。京都市も、個々で対策を取っていただきたいなと思います」
京都各地で深刻となっている『オーバーツーリズム』の問題。観光と住民の暮らしの両立はできるのか―模索は続いています。
(「かんさい情報ネットten.」2024年5月3日放送)