【独自解説】旧統一教会の解散命令請求へ「本人や親族に与えた精神的損害は甚大」教団は反論…“解散確定”までは年単位?今後の流れを専門家が解説
10月12日、宗教法人審議会が行われ、旧統一教会に対しての「解散命令」を請求することが決まりました。宗教法人に解散命令請求が出たあとどういった流れになるのか?旧統一教会はどう動くのか?全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士とジャーナリストの鈴木エイト氏が解説します。
解散命令請求に向け動いた文化庁
10月12日に行われた宗教法人審議会で、全会一致で旧統一協会の解散命令請求を出す方針が出されました。審議会からの意見やこれまでに集めた情報などを踏まえて、旧統一協会の解散命令を東京地裁に請求する方針です。
Q. 宗教法人審議会ですが、意見を聞く場であって、法的な拘束力があるわけではないんですよね?
(全国霊感商法対策弁護士連絡会 阿部克臣弁護士)
「解散命令の請求というのは特に宗教法人審議会に諮らなくてもできるものです。以前に、明覚寺という宗教法人について請求を行った事例があるんですが、そのときは特に宗教法人審議会に諮っていません。今回は、請求した後に旧統一教会側から『信教の自由を侵害する』という主張が考えられます。宗教法人審議会は宗教法人や学識経験者からなる『信教の自由を担保する組織』なので、ここできちんと意思を確認して請求するという慎重な手続きを取ったということだと思います」
Q.ようやく動き出したというところでしょうか?
(ジャーナリスト 鈴木エイト氏)
「やはり安倍元首相襲撃事件以降、この教団による金銭被害・家庭崩壊をはじめ、大きな被害が続いていたことを多くの人が知るようになって、それをどうにかしようという国の取り組みがようやくここで結実したと思います」
Q.韓国の教団の現状はどうなのでしょうか?
(鈴木氏)
「韓国の教団も財政事情がひっ迫しているといわれています。裁判の賠償金の支払いなどを迫られていて、日本の信者を引き留めが必要な中で解散命令請求が進んだということで非常に危機感を抱いているようです」
教団は反論「解散の3要素はない」
教団は、以前より「“教団解散の3要素”とされる『組織性』『悪質性』『継続性』のいずれも家庭連合には全く該当しない」としています。
Q.この教団の見解をどう思いますか?
(阿部弁護士)
「『組織性』『悪質性』『継続性』のいずれも該当すると考えます。『悪質性』ははっきりしていると思います。問題になるとすると『組織性』のところと、『継続性』のところです。私が知る限りでも全国各地で同じような被害があるので『組織性』は認められると思います。『継続性』についてもここ10年の被害が我々のところにも寄せられているので、この“3要件”は認められると思います」
(鈴木氏)
「この“3要素”を旧統一教会に当てはめなければどこに当てはめるんだ、ということで確実に担保されていると思います。この1年かけて文化庁がありとあらゆる手段を使って全国の被害者にヒアリングをして全国弁連とも連携をして慎重に証拠を集め、もし刑法違反があれば一発で解散命令請求を出せるレベルにまでこの“3要素”を積み上げてきたのだと思います」
解散命令請求後の手続きです。まず、東京地裁で文科省と教団による意見陳述・諮問・証拠調べなどが非公開で行われます。そして解散命令が下るか認められないかということになりますが、どちらかに不服があれば抗告できるということです。確定までは、オウム真理教の場合約半年、明覚寺の場合約2年半かかっています。
Q.解散までは年単位になるのでしょうか?
(阿部弁護士)
「今回は、オウム以上明覚寺未満くらいの時間がかかると思います。つまり1~2年くらいが現実的なところかなと思います。現に動いている教団ですので、時間をかければかけるほど被害が拡大するため、裁判所もそれほど時間をかけないと思います。他方で刑事事件がはっきりしている事例ではないので、一定の時間はかかると思います」
元信者らは教団に損害賠償を求める集団交渉を申し入れていて、その請求総額は39億5000万円にのぼります。山口広弁護士は「解散請求が認められるまでの間に“統一教会”の資産が韓国に流出したり関連団体や正体不明の組織に隠匿されたりして、多くの被害者救済ができなくなりかねない」としていて、裁判所が財産保全できるようにする、特別法の成立を政府に求めています。
(阿部弁護士)
「適切に議論をして要件を設定すれば、法律自体はかなり小さい法律なので、今国会で成立させることは可能だと思います。既に会社法など他の法律には同じような規定はあるので、そういったものを参考にして今国会で成立させることは可能だと思います」
盛山文科相「本人や親族に与えた精神的な損害も相当甚大」
宗教法人審議会の後、盛山文科相は会見を行い、解散命令の請求を決定した理由として「旧統一教会は遅くとも昭和55年頃から、長期間にわたり継続的にその信者が多数の方々に対し、相手方の自由な意思決定に制限を加え、相手方の正常な判断が妨げられる状態で献金や物品の購入をさせ、多くの方々に多額の損害を被らせ、親族を含む多くの方々の生活の平穏を害する行為を行った」と述べました。
さらに「訴訟上の和解、訴訟外の示談を加えると全体として1550人につき、解決金等の総額は約204億円、1人当たりの平均額は約1310万円に上る」と詳細な金額も示し「献金のために保険金や退職金など将来の蓄えを費消してしまい、あるいは家族に無断で貯金を使ってしまい、家族を含めた経済状態を悪化させ、将来への生活へ悪影響を及ぼし、また、献金しなければならないと不安に陥ったり、家族関係が悪化するなど本人や親族に与えた精神的な損害も相当甚大である」としました。
Q.この盛山文科相の会見をどのように聞きましたか?
(鈴木氏)
「かなり細かい点まで踏み込んだ発言をしたと思います。自由な意思決定の侵害があったという発言は意味がありました。家庭の被害まで触れてくれたのは、政府としての本気度が見えて鳥肌が立ちました」
(阿部弁護士)
「様々な数字と人数を示していただいて、文化庁の方々の1年間のご尽力に心から感謝したいという思いがあります」
宗教法人が解散すると、任意の団体としては活動できますが税制上の優遇措置がなくなり固定資産税が課税されるようになります。しかし、信者の献金に対しては非課税のままです。国のお墨付きがなくなるので勧誘などは難しくなります。また、法人名義の不動産・財産を清算しなければいけません。
Q.献金は非課税なままなのですね?
(鈴木氏)
「なので、より苛烈な献金集め、献金ノルマなどが設定される恐れがあります」
Q.解散後も残らざるを得ない信者のケアも必要ではないですか?
(阿部弁護士)
「解散命令後の脱会者の居場所、社会でどう受け入れるかというのが非常に大事かと思います。オウムの時にその点が十分になされなかったので、約1万4千人の信者が脱会後も居場所がなく後継団体に戻ったり、同じような他の教団に行った、という例がありますのでケアは必要だと思います」
Q.宗教法人が解散させられた後も、他の宗教法人を買収して活動を続けることができるのでしょうか?
(阿部弁護士)
「活動していない宗教法人は全国にたくさんありますし、旧統一教会自体が別の関連する宗教法人を持っていたこともありますので、他の法人に財産を移して活動を継続していくということは十分考えられます。そういうことを行わないようにきちんと注視していく必要があると思います」
(「情報ライブミヤネ屋」2023年10月12日放送)