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【特集】「未来は見えない」!火災延焼の恐れある危険な「木造住宅密集地域」ワースト1位は大阪 今も残る戦前の街並み、解消できない事情と今できる対策とは?

2023年10月10日 11:00
【特集】「未来は見えない」!火災延焼の恐れある危険な「木造住宅密集地域」ワースト1位は大阪 今も残る戦前の街並み、解消できない事情と今できる対策とは?
幾度となく繰り返す「木造住宅密集地」の火災

 地震の際などに火災で延焼する危険性が高い「木造住宅密集地」の面積が、全国で最も広い大阪。大阪市生野区などには、人一人がやっと通れるぐらいの細い道に木造住宅の立ち並ぶ地域が、今も多く残ります。新潟・糸魚川市では、2016年に“密集地”で大火災を経験しました。その独自対策から見えた、今やるべき危険への備えとは―。

人一人がやっと…消防車が通れない木造住宅密集地での備えは、今も“バケツリレー” 「解消する未来見えない」

 100年前、関東大震災が起きた際に多くの人が命を落とした原因は、木造住宅密集地での火災でした。同様の火災は1995年の阪神・淡路大震災を含め、幾度となく繰り返されています。大阪市西成区でも2023年6月、木造密集地から出火し、火は10時間以上燃え続けました。

 国が指定する危険な密集市街地は、全国に1875ヘクタール。このほぼ半分に当たる895ヘクタールが、大阪府内に集中しています。

 密集市街地の解消が進んでいない地域の1つが、大阪市生野区です。

(読売テレビ・上村晴香記者)
「生野区鶴橋駅周辺の住宅街です。人一人がやっと通れるぐらいの狭い道に、ぎっしりと住宅が立ち並んでいます。消防車は到底、入って来られない狭さです」

 鶴橋駅の南側に位置する北鶴橋には、道幅の狭い場所に、古い住宅が軒を連ねます。

(北鶴橋連合振興町会・田中照章会長)
「この辺は空襲に遭っていない地域で、昔の街並みが全部残っています」

 火災が起きたときへの備えはー。

(田中会長)
「防火用バケツを配っています」

Q.水を入れて、皆でかけるということですか?
(田中会長)
「そういうことです。バケツリレーが、一番最初ですから」

 大阪市は、古い住宅の建て替えや道幅を広げる費用の一部を補助するなど対策してきましたが、思うように解消は進んでいません。

(田中会長)
「生野区は、高齢者の多い地域です。高齢になってくると、この後何年生きるかわからないと、よくおっしゃいます。建て替えても、今更ローンも組んでくれませんし」

Q.木造密集地域が解消する未来は…?
(田中会長)
「見えないです、はっきり言って」

 国は2030年度までの解消を目指していますが、防災に詳しい専門家は、「現実的には難しい」と話します。

(兵庫県立大学・室崎益輝名誉教授)
「阪神淡路大震災のとき、区画整備をして道を碁盤目状にした所は、焼けていません。整備をすると燃えにくくなるんですけど、時間がかかります。10年とか50年とか、かかります」

「早く気づき、早く知らせ、早く消す」防災のカギは新潟・糸魚川市にあった

 木造密集地のリスクを減らす手段は、ないのでしょうか―。訪れたのは、新潟・糸魚川市です。2016年、古い木造密集地から出た火は風に煽られて住宅に次々燃え移り、30時間で147棟が燃えました。

 その後、道幅を広げるなど“燃えにくい街づくり”が進んだ一方、燃えなかった場所では今も古い木造密集地が残っています。市は大火災の教訓から、早く被害を食い止めるための独自の対策を進めてきました。

 1つは、「連動型火災報知機」の設置です。家の中と外に設置することで、家の中で煙を感知したとき、連動して外の報知機も作動し、近くの住宅に早く火事を知らせてくれます。2019~2020年度にかけて、75歳以上の高齢者だけで住む世帯や要支援者がいる世帯を対象に、費用の3分の2を市が負担して、設置を進めました。

 さらに、住人が初期消火に使うため配備しているホースを、高齢者や女性・子どもも使える細く軽いホースに変えて、使いこなす訓練もしています。上村記者が試してみると、難なく放水できました。

(上村記者)
「水力が強すぎず、重くもないので、狙った場所に水をかけることができます」

(糸魚川市消防本部予防課・伊藤修課長)
「早く気づいて、早く知らせて、早く消すことが大切です。防火意識をいかに一人一人が持ち続けるかが、一番大切です」

 危険な木造密集地の解消と共に、命を守るために自分たちで今すぐできる手立てにも、目を向けることが必要です。

(「かんさい情報ネットten.」2023年9月5日放送)