【特集】約50人に1人が死産する現状「どうして私たちの子が…」ママの孤立に寄り添い、お空の我が子と“共に生きる”ために作った“天使の想い箱”制作の背景「一人じゃないよと伝えたい」
厚生労働省の統計によると、2023年に死産した赤ちゃんは1万6000人以上。その割合は、約50人に1人です。我が子を亡くした親を支えるために、必要なものとは―。
医療が進歩しても約50人に1人が死産する現状…「泣いてばかりの毎日」娘と過ごすはずだった未来と向き合うために作った、“天使の想い箱”
(田中梓さん)
「毎朝お線香して、お花のお水も替えて、準備してあげて。そういう行動が全て、子育てのようで嬉しいなと思って、いつもやっています」
大阪府に住む、田中梓さん。妊娠6か月のときに、重度の心疾患が原因で、女の子を死産しました。
(梓さん)
「どうして私たちの子が…という気持ちで、本当に泣いてばかりの毎日でした」
医療が進歩する中でも、約50人に1人の赤ちゃんが、産声をあげることなく生まれてきます。しかし、我が子を亡くした後の親へのケアは行き届かず、悲しみから抜け出せずに孤立してしまいます。
(梓さん)
「本当に初めてのことで、供養のこともわからないし、納骨のこともわからないし。“まさか自分たちより先に子どもが”とは、考えてもいなかったので」
我が子と一緒に過ごすはずだった未来と、どう向き合うか―。
夫婦は一緒に過ごせるように、娘の“おうち”を作ることにしました。この取り組みをSNSに投稿すると共感を呼び、作ってほしいという声がたくさん寄せられました。
自分たちで作るのは難しいため、取り組みに共感する職人と試作を重ねました。同じ経験をした家族の思いも取り入れながら完成したのが、“天使の想い箱”です。
(梓さんの夫・淳さん)
「カスミソウが良いな」
(梓さん)
「カスミソウ、良いよね。ちょっと『まお』っぽいなーと思って選んだりしている。小さいお花が集まっているところが、小さな子どもたちがいっぱい集まっているようで」
“天使の想い箱”について、夫・淳さんは…。
(淳さん)
「日常の中に、『まお』って言葉が飛び交うような。スーパーに行ったら一番先にお花屋さんに行って、まおのためにどうしようかなと選んでいる姿を見ていて、微笑ましかったし、妻が大きく変わった部分が一番良かったと思います」
“天使の想い箱”をお迎えした家族は、他にもいます。
(“天使の想い箱”を迎えたママ)
「『今日も、みんなのこと見守っていてね』って言いながら、いつも触ります。朝起きたらみんな来て、夜も寝るときに『おやすみ』と言うのが日課になっている。おうちがあるから、そこに向かうみたいな。おうちの中に、おうちがある形です」
学校から帰ってきたお兄ちゃんも、真っ先に“おうち”の前へ。
(“天使の想い箱”を迎えたママ)
「上の子が今まで一人っ子で生きてきたけど、自分の妹という感覚があるみたいで、旅行に行ったらお土産を買ってきたりとか。“一人っ子だけど、お兄ちゃん”というふうになったんだなと」
大切なのは『紛れもないママだった』と認めること…未だ悲しみから抜け出せない中でも、“天使の想い箱”制作者が伝えたい想いとは―
この日、梓さんが訪れたのは、流産・死産を経験したママたちが集まる施設です。
(『ポコズママの会 関西』大竹麻美さん)
「数日であれ数か月であれ、私たちは紛れもないママでした。一緒に、愛する子どもへの想い・失った悲しみを語りましょう」
当事者が集まり、普段は話すことができない、お空の我が子の話を分かち合います。
(梓さん)
「“次”と言っても、命の代わりなんかないし…次とかって…」
(大竹さん)
「小さな命を亡くされたお母さま方は、まず『お母さんだよね』ということを認めてほしいと思っています。子どもの命を亡くしたということと、“子どもが大きくなっての未来を想像している部分”も失った、2つの大きな喪失感がありますので、まずは『お母さんだよね』ということを認めてあげる」
大切なのは、周りが『お母さん』であることを認めること。そうして初めて、お空の我が子と繋がっていると感じられます。
“天使の想い箱”は、お母さんが自分なりの子育てができる、そんな空間です。
(梓さん)
「今も正直、深い悲しみの中から抜け出せずにいるんですけど、『似たような経験をした人はたくさんいらっしゃるし、一人じゃないよ』ということを、伝えたいなと思っています」
(「かんさい情報ネットten.」2024年3月20日放送)