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【解説】人気漫才のネタにも『奈良県立民俗博物館』休館 知事「価値ないもの受け入れてきたのは問題」学芸員は反論、4万点超の収蔵品の行方は?

2024年7月16日 18:02
【解説】人気漫才のネタにも『奈良県立民俗博物館』休館 知事「価値ないもの受け入れてきたのは問題」学芸員は反論、4万点超の収蔵品の行方は?

 16日から一時休館となった「奈良県立民俗博物館」。休館の理由のひとつにもなっている収蔵品の保管方法を巡り議論となっています。

 人気漫才師「笑い飯」の漫才ネタの元にもなった、「奈良県立民俗博物館」。いま、そのあり方を巡り、議論が巻き起こっています。

 博物館には、大正時代から昭和初期の生活用具や地域特有の農具、昔懐かしい家電などが展示。問題にされているのは、約4万5000点にもなる大量の収蔵品です。

 奈良県・山下真知事
「民俗博物館の中では収まり切らずに、閉校した高校に(収蔵品を)保管している。“同様の農機具”を保管し続ける意味というのは、どこにあるのかと。価値のないものまで求められるままに受け入れてきたことに問題があった」

 山下知事は、こうした状況を問題視し、収蔵品受け入れのルールや、 展示のあり方の見直しを指示。検討が終わるまでの休館を決めたのです。

 しかし、同じような収蔵品に見えても資料としての価値があると、学芸員はいいます。

 民俗博物館・高橋史弥学芸員
「1点1点のなかでも形状が少しだけ違うということがあります。では、その形状はどうして違ったのか。資料というのは複数点おさえておく、そして比較していくことで地域性が分かるという特徴があります」

 一方で、県の側には収蔵品の見直しを指示する以前の問題も。
 
 施設は老朽化が進み、エアコンも故障。現場では、氷柱などで当座をしのがざるをえず、貴重な資料に劣悪な環境を強いる事態になっているのです。

 山下知事
「子供さんぐらいしか、来館者はなかったということなので。展示スペースの在り方についても、併せて休館中に検討する。明確なルールを決めた上で、価値のあるものだけを残して、それ以外のものは廃棄処分するということも含めて、検討せざるを得ない」

 来館者
「現物があって初めて“こういうことなんだ”とわかることがあると思うので、子供の教育にはとても大事だと思う。なくしたらもう二度と取り返せないので」

 貴重な“遺産”は、どこまで残せるのか。奈良県立民族博物館は、2027年度中の再開を目指すということです。

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(取材・解説 田淵菊子記者)

 今日から、この民族博物館休館しているんですけれども、なんとエアコンがなくて、氷で室内を冷やしたり、あとは県民の提供資料が大量にあって、未整理だという現状もあってですね。保存資料約4万5千点のうち、『一部廃棄をしないといけないのではないか』と知事が言っています。

 一部の自治体は、『だったら収蔵品受け入れますよ』とは言ってはいるんですけど、正直、焼け石に水です。というのも、知事は『資料は博物館に収まる範囲のもので、あとはもう廃棄も検討してもいいんじゃないのか』というふうに言っていますし、『子どもさんぐらいしか来館者はなかった、展示スペースを減らすことも検討した方がいいんじゃないか』と一石を投じています。

 今回私が思ったのは、『稼げない文化財って無価値なんですか?』ということを問いかけたいなと思っていて。稼げる文化財しか本当に保存しなくていいんですかというのが、本当に今回全てが残せるわけではないにしても、疑問を呈したいところがあるんです。

 そもそも日本は、文化財関連予算というのが非常に諸外国に比べて少なくて、政府予算に占める文化財関連の予算というものがわずか0.11%しかないんですね。フランスや韓国と比べると約10分の1ということです。博物館とか文化財の現場というのはどこも本当に資金不足で、あの国立科学博物館ですら、そして世界遺産の法隆寺ですら資金不足で、クラウドファンディング、インターネット上の寄付を募ってようやくしのいでいるというのが現状なんです。

(中谷しのぶキャスター)
そうした状況で、どう後世に伝えていくのかというのが課題ですよね。

 本当に私が今回、政治家の方、知事の方にもお伝えしたいのが、誇るべき日本の文化、日本の歴史と伝統はもう誇りだとおっしゃる方多いんですけれども、そうであれば、廃棄するのは簡単なので、どうすれば残していけるのかという、保存ありきの検討をしていただきたいと思います。