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【解説】「児童手当」18歳まで月1万円…財源どうする 「扶養控除」廃止検討の見通し…税理士「負担が増える子育て世帯は…」

2023年5月25日 22:15
【解説】「児童手当」18歳まで月1万円…財源どうする 「扶養控除」廃止検討の見通し…税理士「負担が増える子育て世帯は…」

岸田首相肝いりの“異次元の少子化対策”について、新たな中身が判明しました。「児童手当」の対象を18歳まで拡大し、月に1万円支給する方向で検討していることがわかりました。

◇予算倍増で10兆円目指す
◇増税せずどうやって?
◇月1万円でも負担“増”?

以上の3点について詳しくお伝えします。

■「児童手当」拡充…所得制限も撤廃する方向に

異次元の少子化対策の柱の1つが、「児童手当」の拡充です。現在の対象は中学生以下で、親の所得制限があり、年齢や第何子かに応じて、5000円から1万5000円が支給されています。

【現在の児童手当】
◇0~2歳:月1万5000円
◇3~小学生:月1万円(第3子以降は月1万5000円)
◇中学生:月1万円(年収によっては月5000円)

政府は、この対象を高校生に相当する18歳まで広げて、月1万円を給付する方向で調整を進めています。さらに第3子以降は、現在の月1万5000円から3万円に倍増させる方向で検討されています。また、批判の声があがっていた所得制限についても撤廃する方向で調整されていて、給付の対象はかなり広がる見込みです。

【新しい児童手当案】
◇16~18歳(高校生相当)も月1万円支給
◇第3子以降も月3万円支給を検討

■財源は? 首相「増税でまかなうことはしない」

児童手当をもらえる人が増えるということは、それだけ財源が必要になります。そのため、国の予算は、当初の計画よりも大幅に増額されます。

現在のこども家庭庁の予算は、4兆8000億円です。この予算を少子化対策集中期間の来年度から増額して、3年目の2026年度には約3兆円プラスして、約8兆円に増額。さらに、2030年代までに約10兆円の予算を見込んでいて、今の2倍となる予算を目指すということです。

予算が増えるとなると、気になるのは財源の確保ですが、岸田首相は22日の会議で、税負担について次のように断言しています。

岸田首相(22日)
「大前提として、少子化対策財源確保のための、消費税を含めた新たな税負担については考えておりません」

「大前提として、少子化対策は増税でまかなうことはしない」と言っています。ではどうするのか。政府関係者の話で、3年目の2026年度に追加される3兆円の財源が明らかになりました。3兆円のうち、2兆円以上は「歳出改革」など、つまり国の支出を見直すことで、2兆円以上捻出しようとしています。

残りの1兆円弱は、社会保険料の制度を使って集める方針です。これは、病気やけがのための医療保険を軸に検討されています。

国民や企業の保険料の引き上げは、極力抑えたい考えです。というのも、例えば今、もらい過ぎて飲み残しも問題になっている薬のあり方を見直すなど、さまざまな医療費の無駄を少なくする努力をすると、その分、人々や企業から集めた医療保険料が浮きます。それを子育て支援にまわそうというのです。

■“こども特例公債(仮称)”…通常の赤字国債と何が違う? 

さらに、24日の会議で出てきたのが、“こども特例公債(仮称)”という国債を発行することです。つまり、国の借金でまかなう方針を固めました。

通常の赤字国債だと、将来世代にツケをまわすことになりますが、今回は、それとは性格が異なるということです。ある自民党幹部は「“こども特例公債”は、将来の財源をきちんと示した“つなぎ国債”で、赤字国債とは全然違う」というふうに話しています。つまり、政府としては、歳出改革などで、まとまった財源が安定的に入ってくることが見込まれる2026年までの、あくまでも“つなぎ”として国債を発行しようというもので、将来世代に負担を丸投げするわけではないとしています。

■年間38万円が…「扶養控除」廃止検討の見通し

ただ“落とし穴”もあります。18歳まで児童手当が拡充されたとすると、一方で取りやめられるかもしれないものもあります。それは「扶養控除」です。

現在、16歳~18歳までの子どもを持つ親などは、所得税で年間38万円の扶養控除が受けられます。今後、この年代が月1万円、年間12万円の児童手当がもらえるようになると、控除の廃止などが検討される見通しです。つまり、年間12万円もらうことで、年間38万円の控除が受けられなくなるかもしれないということです。

どうしてこういうことをするかというと、「手当」と「控除」の二重補助にならないようにするためだといいます。税理士にも話を聞いてみましたが、「控除が廃止されたら、金銭的な負担が増える子育て世帯は出てくる」と話していました。

ただ、控除が廃止されたとしても、特別なことではないです。現在、児童手当の対象となっている中学生以下には、もともと扶養控除はないので、それと同じ状況になるということです。もし控除が廃止されなければ、高校生だけが特別扱いになるということで、そこも議論になりそうだということです。この辺について、首相は「年末に調整する」と話しています。

   ◇

インフレが家計を直撃する中、多くの子育て世帯が厳しい経済状況にさらされています。次世代を担う子どもたちに必要な支援を継続的に届けるために、社会全体でどう負担していくのか、岸田政権の覚悟と調整力が問われています。

(2023年5月25日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!

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