【仰天】『言葉の意味を理解する』トドの“ハマ”のキセキ 知られざる驚き能力 国際学術誌に論文掲載 兵庫・城崎マリンワールド
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トドという動物にどのようなイメージを持っているでしょうか。大きくて怖そう?そんな印象をガラリと変えるトドが、兵庫県豊岡市の城崎マリンワールドで暮らしています。名前は『ハマ』。なんと、「人間の言葉の意味を理解する能力」があるというのです。国際学術誌に論文としても掲載される、その驚きの能力とは―。(報告:大泉純子)
■「敬礼」「バイバイ」「倒立」「投げキッス」…観客から感嘆の声
「敬礼!」
飼育員が声をかけると、器用に右脚を頭に添えるハマ。
ハマは、人が発する言葉・ボイスサインを聞いて、ジェスチャーで反応する特技を持っています。
例えば『バイバイ』と声をかけると、左の前脚を左右に振り、『投げキッス』には右の前脚を少し口元に寄せてから前に振ります。『倒立』では、前脚をついて大きな身体を軽々と持ち上げて逆立ちのポースを取ります。
アトラクションの時間になると、展示プールに集まる観客からは、「うわ~すご~い!!」と感嘆の声が上がります。
■東日本大震災のあと、福島から兵庫へ
ハマは2009年7月1日、福島県いわき市小名浜の『アクアマリンふくしま』で生まれました。ハマという名前は、小名浜の「ハマ」に由来します。2011年3月11日に起きた東日本大震災で、アクアマリンふくしまも大きな被害を受け、たくさんの生き物が命を失いました。
ハマは、静岡県の水族館に一時避難したあと、この年の6月、城崎マリンワールドにやってきました。ハマが2歳になる少し前のことでした。当時、城崎マリンワールドには4頭のトドがいました。まだ身体が小さかったハマは、3年ほどバックヤードで過ごしたあと、仲間たちが暮らす展示プールに”デビュー”しました。
最初は、岩山から豪快に飛び込むダイビングだけを披露していましたが、当時の飼育員が、ハマが手振りの指示ではなく声に反応していることに気づきます。それから少しずつ特訓を重ねて新しい言葉を覚え、今では50の言葉を聞き分けることができるようになりました。
ハマが「言葉を聞き分ける能力」を城崎マリンワールドの飼育チーム・佐々木雅大さんらが2年がかりで研究論文にまとめ、2022年7月、国際学術誌『International Journal of Comparative Psychology』に掲載されました。トドを含むアシカの仲間が人の言葉を理解するという研究は、世界で初めてだということです。
■ハマの新たな挑戦「人間の言語の意味を理解して行動」
今年6月、更なる研究の成果が同じ学術誌に掲載されました。
テーマは、『言語訓練したトドに見られた自発的なカテゴリの形成と動作の表現』。ちょっと難しそうですが、「ハマは人間の言葉の意味を理解して行動している可能性がある」という内容です。
例えば、『倒立』と『バイバイ』を連続して伝えた場合、『バイバイ』では前脚を振るので、前脚を使って倒立した状態ではバイバイの動作はできません。
ところが、ハマは倒立しながら、これまで前脚で行ってきた「バイバイ」を後ろの脚で表現したのです。
飼育チームの佐々木さんは、「ただ聞き分けているだけではなくて、言葉の意味を理解して行動ができる。僕たちの想像をどんどん超えていってしまうので、すごいの一言に尽きる」と絶賛。水族園のアトラクションとして楽しんでもらうとともに、論文にまとめることで、ハマの能力を形として残したいと話しています。
■ハマの息子「カナタ」もすくすく成長 体重は150キロ超え
2023年7月4日、ハマはオスの赤ちゃんを産みました。
名前の公募には多くの候補が寄せられ、『たくさんの夢や希望がかないますように。未来の“彼方”まで、幸せを運んでくれますように』との願いを込めて「カナタ」と名付けられました。くりくりとした大きな目や、濃い茶色の毛並みが、ハマによく似ています。
ハマがうまく授乳できなかったため、カナタは飼育員が与えるミルクで育ちました。このためか、生まれたときに22キロだった体重は、すでに150キロを超えています。カナタの父親(ハマのパートナー)、シュンタは母乳で育ち、同じ1歳のころの体重は50キロほどだったそうです。
カナタはいま、バックヤードでエサのサカナを食べる特訓中です。人間の赤ちゃんがミルクから離乳食を経て大人と同じ食事を始めるような段階です。
大地震などの災害に遭い、故郷を離れて暮らす人たちが大勢います。ハマが福島から城崎マリンワールドやってきて13年。動物と人の暮らしを比べられるものではありませんが、ハマの活躍ぶりは、離れた故郷を思う人たちに、束の間の癒しと前を向く力を与えてくれます