デビュー20周年・松岡茉優、目指す俳優像 「若い人たちが進みやすいような先輩」
松岡さんは、8歳で事務所に所属し、子役として活動を開始。朝ドラ『あまちゃん』などで注目されました。そして第42回日本アカデミー賞では、映画『勝手にふるえてろ』で優秀主演女優賞、さらに映画『万引き家族』で優秀助演女優賞を同じ年に受賞しました。その後も活躍を続け、2023年放送のドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』では初めて教師役に挑戦。映画『愛にイナズマ』(現在公開中)では、窪田正孝さん(35)とダブル主演するなど、さまざまな作品での演技力が評価されています。
――松岡さんのターニングポイントはいつになりますか?
転機ってちゃんとよくよく考えれば、すごいハイペースであるんだなって感じていて。最近でいうとドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』で初めての先生役を務めた時、生徒さんたちのことをこんなにいとおしく感じるんだっていうのは初めての感覚だし、これも絶対転機ですし。映画『愛にイナズマ』で、家族という役になって初めていろいろな話をさせてもらえた、佐藤浩市さんとの出会いも転機。石井裕也監督の作品に初めて参加できたというのも転機だし、“ビッグチャンス”とか“人生の変わる一回”とかじゃなくて。よくよく見ていくと転機ってすごくたくさんあるなって。それをつかめるか、こなしちゃうのかっていうのは自分次第だよなって最近は思います。
――松岡さんが演技をする上でとても大切にしていることはなんですか?
“役の叫び”をなるべく余すことなくスクリーンを通してお伝えすること。今回(『愛にイナズマ』)でいうと、(自分が演じた)折村花子さんが自分よりも大きくて強い方だったからこそ、自分の持ってないものを出さないといけない。彼女をスクリーンで見た人が、「私がやったから小規模になった」では絶対に嫌だから。台本に書いてあることを、せめてそこのラインまで行くために役の声をお伝えしたい。ひいては、脚本家さんが書かれたものだったり、監督さんが描きたいものだったり、企画を立てたプロデューサーさんが伝えたいことだったり、そこをお伝えしたいというのは一番大事ですね。
■デビュー20周年を記念した初の著書「ご褒美のような本」
そして、11月17日には、デビュー20周年を記念した初の著書『ほんまつ』が発売されます。著書には、自身がつづったエッセーや松岡さんが“大好きな人たち”と語る、仲野太賀さんや伊藤沙莉さんら俳優仲間、映画『万引き家族』で監督を務めた是枝裕和さんらが参加した企画が収録されています。
――初の著書『ほんまつ』も発売されますが、20年を振り返っていかがですか?
『ほんまつ』の中には、今まで出会ってくれた大切な方たち。先輩、監督さん、脚本家さん、友達たちに至るまで、いろいろな人に参加してもらったんですけど、本を通して自信がついたところがあって。私が「本を出します」というタイミングで、「これだけの人が協力してくれたんだ」っていう事実が一つできたっていうのが。「私なんて」とか「私じゃな、できるかな?」って思いがちなタイプではあるんですけど、私ごとの著書に対してみんなが快く参加してくださったっていうことがめちゃめちゃ温かかったし、自分の自己肯定感すら上がるような本ができたので。自分で出した本なんですけど、この20年のご褒美のような本になりました。
――自信が持てないタイプだったり、自己肯定感はあまり高くないタイプなのでしょうか?
「私、自信ないんです」って外(の人)に出す年はもう卒業したかなって思っているので。なるべく人にその部分で気を使わせないように頑張っているんですけど。1位とか2位がない仕事だからかな? 絶対的な自信っていうのはないですね。でも、自信がないことで人に気を使わせたくないなとは思っています。
■今後ありたい俳優像 「先輩の背中を追いかけているのが我々後輩」
――20周年を迎えられて、“こういう俳優でありたい”という目標はありますか?
先輩たちの作ってくれた道だったり、背中をどうしても追いかけているのが、我々後輩かなと思うので。私の次を歩く人たちが余計なしがらみにとらわれなかったり、「ちょっと歩きやすいな」っていう道を整えたいって思う。それをするには、自分が良い仕事をすることだと思うから。なるべく誠実に、なるべく前向きに。私よりも若い人たちが進みやすいような(道を作れる)先輩になりたいなと思います。