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松岡茉優「重かったなと思います」 俳優人生の軸となった忘れられない“出会い”と“時期”

2023年11月2日 22:05
松岡茉優「重かったなと思います」 俳優人生の軸となった忘れられない“出会い”と“時期”
主演映画への思いを明かす松岡茉優さん
10月27日から全国公開されている映画『愛にイナズマ』で、主演する俳優の松岡茉優さん(28)にインタビュー。作品にかけた思いや、松岡さんが俳優人生の軸となっていると語る“出会い”や“時期”について伺いました。

松岡さんは、8歳で事務所に所属し、子役として活動を開始。朝ドラ『あまちゃん』などで注目されました。そして第42回日本アカデミー賞では、映画『勝手にふるえてろ』で優秀主演女優賞、さらに映画『万引き家族』で優秀助演女優賞を同じ年に受賞しました。その後も、2020年には映画『蜜蜂と遠雷』、2022年には映画『騙し絵の牙』で優秀主演女優賞を獲得。2023年放送のドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』では初めて教師役に挑戦し話題となるなど、さまざまな作品での演技力が評価されています。

そして、松岡さんが窪田正孝さん(35)とダブル主演する最新映画『愛にイナズマ』では、映画監督デビューを目前に、夢を奪われた・折村花子を熱演しています。そんな松岡さんに映画公開前にお話を伺いました。

――映画が公開される今の気持ちはいかがですか?

映画を撮ったのは去年5月で、コロナ禍を描いた作品になるんですけど。あれから1年でまた様変わりして、あの時撮っていた感覚とはまた違う見え方をしているので。劇場で受け取ってくださったお客様が、どのように(キャスト)全員がマスクをしているというのをどう捉えられるのかというのがすごく気になります。

――作品の出演が決まった時の心境はいかがでしたか?

石井裕也監督の作品にいつか携わってみたいなと思っていたので、“石井組に入れるんだ”というのが、とてもうれしかったですし。台本を読んで、世界の理不尽さとか、何かを奪われたり盗まれたりする感覚っていうものの叫びをとても感じて、“それでも負けない”っていう花子さんを全力で演じたいなと感じました。

――役作りはどのようにされたのですか?

何かの職業を演じる時っていうのは、例えば編集者さんの役でしたら、実際の編集者さんをコーチとして質問をしたり、カバンの重さを聞くところから細いことまでたくさんお聞きする機会があるんですけど。今回は映画監督を目指している花子さんという役だったので、現場にすでに先生がたくさんいて、動作とか言い方で気になったところがあったときには、石井監督をはじめ、助監督さんたちにお尋ねすることができたので、シーンごとにディスカッションを重ねながら演じました。

――(松岡さん演じる)花子のセリフの中で印象に残っているセリフはありますか?

物語の中盤、雨の中で(窪田正孝さんと)叫びあうシーンがありまして。そこで花子が悔しい思いを吐露するんですが、その中で「自分に言ってんですよ!」っていうセリフがあるんです。相手に対して“信じられないな”とか、“その気持ちは理解できないな”っていう怒りよりも、“あぁ、私同じ事をしてた”っていう怒りのパワーの方が根深いように思って。そんなことしたくないのに、大人としてやらなきゃいけないことがあった。その苦しさが「自分に言ってんですよ!」っていう(言葉になっている)。それでも心の火は消えてない、ともしたままの彼女がたくましかったし、雨の中のシーンは、状況も含めて忘れられないシーンになっています。

――花子の魅力は、どんな所ですか?

意見が食い違った時に、それでも曲げたくないものがあったとしても、立場を考えたり、目上の方だったり、その場の空気で自分の意見を隠してしまったり、「今言うのをやめておこうかな」っていうことは誰しも多々あるかと思うんですけど。一旦その意見を隠したとしても、「心の中は負けずにその思いを曲げないでいていいんだ」というのは、花子さんを演じることを通して学ばせてもらいました。

■「重かった」 松岡茉優が忘れられない“出会い”

映画は、窪田さん演じる空気の読めない正夫と花子の運命の出会いをきっかけに、夢を奪い返すため奮闘する姿が描かれます。映画ポスターにも書かれている「この出会い、一億ボルト。」にちなんで、こんな質問をしました。

――松岡さんが“忘れられない出会い”はなんですか?

私は子役出身なんですけれど、子役時代に全くオーディションに受からなくて何本も何本も受けて。ようやく物語の軸になるような役をいただけるようになってきたのが、高校を卒業したぐらいから。その頃の作品というのはいまだに思い出してしまうし、私の軸になっていると思うし、“高校を卒業してから20歳ぐらいの間の出会い”っていうのは、重かったなと思います。

――“重かった”というのは?

まだ柔らかい価値観だからこそ、当時“嫌だな”と思ったことは今でも“嫌だな”って思い出してしまうし、当時教えてもらったことで「これだ!」って思ったことをどの作品においても変えられない自分がいたり。多感な時期に出会った人や作品というのは、曲がらない何かがあるように感じます。

――失意のどん底に突き落とされた花子は、正夫との出会いをきっかけに反撃を決意しますが、松岡さんが悩んだり壁にぶつかった時には、どのように気持ちを切り替えて前に進んでいますか?

自分が失敗したこととか登れなかったなっていう壁ってしっかり落ち込まないと次も絶対登れないと思うので。ちゃんと落ち込むし、ちゃんと反省する。「ああ、これうまくいかなかったな」とか「なんでこんなことが起きちゃったのかな」って。「次々!」っていうんじゃなくて、一度確実に落ち込むというのは大切にしたいなと思います。

――映画を通してどのようなメッセージを伝えたいですか?

この作品は、“自分の夢”や“かなえたいこと”、“曲げられないもの”が出てくるんですけど。私は自分が演じているから、撮影中は気付かなかったんですが、(映画の)完成したものを見て、とても励まされたんです。どんなに理不尽な目にあっても“負けない“っていう思いがあれば、頑張れるのかもしれないって思えた。なので、ぜひ劇場に足を運んでいただいた方には“負けないぞ”っていう気持ちを持って帰ってもらえたらうれしいなと思います。