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興収100億突破 『名探偵コナン』最新作は“昔のファンも楽しめる” 監督が語るヒット作の裏側

2023年5月30日 21:45
興収100億突破 『名探偵コナン』最新作は“昔のファンも楽しめる” 監督が語るヒット作の裏側
『黒鉄の魚影』は灰原が物語の中心に (C)2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
劇場版『名探偵コナン』シリーズで興行収入が初の100億円を突破した、劇場版『名探偵コナン 黒鉄(くろがね)の魚影(サブマリン)』(全国東宝系にて公開中)。映画配給会社によると、公開から38日間で、観客動員827万人、興行収入117.3億円を突破しました。今作で監督を務めた立川譲さんにインタビューし、制作の裏側などを伺いました。

1997年の第1作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』以降、ほぼ毎年公開されている劇場版(2020年はコロナの影響により延期)。26作目となるシリーズ最新作『名探偵コナン 黒鉄(くろがね)の魚影(サブマリン)』は、東京・八丈島近海に建設された、世界中の警察が持つ防犯カメラを繋ぐための海洋施設パシフィック・ブイを舞台に、江戸川コナン&灰原哀と、宿敵・黒ずくめの組織の海上決戦が描かれます。


――制作にあたり、立川監督ならではの戦略は?

元々、コナンの王道の作品という脚本内容で、かつ、キャラクターも人気キャラがたくさん出てくる総力戦になっていたので、ちゃんとキャラクターの見せ場や行動原理、過去の背景みたいなものを描きながらうまくまとめていけば、映画としてはすごく満足してもらえるものになるかなっていうのはありました。キャラクターはそこに生きて、そこにいるような感じで動くようにっていうのを、すごく注意してやっていました。

――映画の感想で、狙い通りだったなと思ったことは?

コナンってすごく長寿作品なんで、久しぶりに劇場に来たみたいなお客さんも結構いらっしゃるみたいで。今回の劇場が面白いと、来年見に行こうってなったり、過去のやつちょっと見てみようってなったり、ほかの映画も見てもらえたりすると思うんで、そういうのがすごくうれしいです。作っている最中も、制作スタッフとかと、“昔のファンも楽しんでもらえるかも”みたいなのもあって、そういう意味ではそれが狙い通りになったっていうことなんですかね。

――昔のファンも楽しめるような仕込みというのは?

灰原ってすごく初期からのキャラクターで、灰原にフォーカスを当てるのが、(シリーズ5作目の)『天国へのカウントダウン』以来になるので。すごく人気のあるキャラクターだし、灰原がメインでフォーカスされるんだったら見たいなっていうお客さんもいるのかなっていうのと、黒ずくめの組織の映画もすごく久しぶりで、『天国へのカウントダウン』と『漆黒の追跡者(チェイサー)』(13作目)、あとは『純黒の悪夢(ナイトメア)』(20作目)。結構(間隔が)空いているんですよね。組織の映画だと見に来る固定ファンみたいなお客さんも多分いて、やっぱり気になっているファンも多いと思うんですよね。そういう意味では広くファンに訴求しやすい内容かなっていうのも元々ありましたね。

そして、音響監督や各プロデューサーと相談しながら決めたという、声優のキャスティングについて聞きました。中でも、あまり明かされていないのが、パシフィック・ブイに登場するキャラクターのキャスト陣です。


――パシフィック・ブイのキャストのキャスティングには、どのように携わられましたか?

年齢層とか、このぐらいの声の感じとか、芝居はこういう芝居が多いとかそういうのを伝えて、あとは製作委員会のメンバーに任せているっていう感じですね。(直美・アルジェントを担当した)種﨑敦美さんは自分の方でオファーしましたが。ほかの人は、声を聞いたらわかるレベルの人にしてもらいたいみたいなことを言いましたね。ぜいたくな話なんですけども。個性的なキャラクターにしているし、元々コナンの中で犯人の声を聞いていて、分かっちゃう人とかも結構いたりするので。そういった意味でも今回一応、誰が組織のメンバーなのかを当てる要素が結構あったので、推理シーンの一環として先バレしたくないっていうのはありました。

■キーパーソン『ピンガ』の個性 過去とかぶらない“悪に徹したキャラクター”

今回の劇場版で新たに登場し暗躍するのが、黒ずくめの組織の一員・ピンガ。ラムの片腕として描かれ、物語のキーパーソンとなる人物です。そのキャラクター像について聞きました。


――ピンガはどのように生まれたキャラクターですか?

昔、アイリッシュってキャラクターがいて(『漆黒の追跡者(チェイサー)』で登場)、かなり格好いい感じの肉体派の組織の一員だったんですけど、アイリッシュと違う中性的な感じの組織のメンバーにしようっていうのは結構序盤から出て、20弾(『純黒の悪夢(ナイトメア)』)のキュラソーは子供達との関わり合いの中で、少し友情みたいなものが芽生えたりして、素のいい人の部分も少し出たりするんですけど。キュラソーとも違う、そういういいところは一切なく、“悪に徹したキャラクター”にしようみたいな。前の劇場版とキャラクターの個性として、かぶらないように作っていくっていう作り方だったと思います。見た目全般については、自分の方からこういう風にしたいみたいなラフを(青山剛昌)先生にお願いしてデザインが決まっていった感じですね。

――ビジュアルで特に気に入っているところは?

髪色をグラデーション処理っていうんですかね。金髪から途中茶髪になっているんですけど、(そういう髪色の)キャラクターがいなかったので、ちょっと凝ったデザインにしたくてやってみようってお願いしました。これは(青山)先生もオッケーって言ってくれました。

――ジンに対抗心を燃やしているというキャラクターだそうですが…

(組織の中で)IT系のイメージなんですよね。エンジニア系というか。ジンの兄貴が何かそういうことをしてるイメージは一切なく、脅したりとか、銃で人を殺したりとか、何か組織にとっては花形なイメージなんですよね、自分の中では。あんまり目立つこともできないし、表舞台に立って華やかな顔のジンに対して、そういう憎しみみたいなものを覚えてても不思議ではないか、みたいな感じですね。裏方が花形の役者に嫉妬してるというか。“いつかあの位置に立ちたい”みたいな気持ちがあってもいいかなっていう。ちょっとした要素ですけど、キャラの個性付けとしてそういうのも付けました。

■聖地巡礼も話題に おすすめスポットは海沿いのベンチ

そして映画の舞台、八丈島には“聖地巡礼”として、ファンが訪れていることも話題になっています。


――監督の“おすすめスポット”は?

ロケハン行ったのが多分2年ぐらい前で、まだ脚本がそこまで固まってない時期に行っていて、その時に海沿いにベンチがある場所がありまして。コナンくんが灰原に眼鏡かけるシーンがあるんですけど、あそこのベンチはロケハンでそこを見つけた時に“ここ使いたい”って言って決めた場所で、そういう意味ではすごく印象に残ってて聖地巡礼スポットとしても、(立地的に)ちょっと危ない場所なんですけどおすすめですかね。ファンも場所を知ってて見に行ってるお客さんいましたね。おすすめスポットです。でも、夜は(暗いので)行かない方がいいですね。昼間に。