元宝塚雪組スター・彩凪翔「この役で自分を変える」殻を破った『るろ剣』 “自然と起きた拍手”に感激
■ターニングポイントは「ぶっ飛んだ役」
(安藤アナ):幅広い役も演じられてきている彩凪さんですが、ターニングポイントだった役はありますか。
「今まで幸せなことに個性的な役を演じさせていただいていて、その中で一つ挙げるとしたら『るろうに剣心』の武田観柳です。当時は二枚目とか青年、王子様のような役が多かったんです。ここで三枚目というか、結構ぶっ飛んだ役で」
(中島アナ):「悪徳商人」の役で、イラストのようにガトリングガンを放つシーンもありました。
「『豪快に笑う』ような演技もあまりしたことがなかった。あえて声を潰してダミ声で笑う。そういうことも研究しました。悪役なんですが、『るろうに剣心』の中では“愛されキャラ”でなければいけなかった。また、ガトリングガン(の場面)で1曲歌をいただいたんですけど、かなりアドリブが多かったんです。日替わりで毎日ネタを公演中考えていました。その後には、望海風斗さんのコンサートで『彩凪先生』(というキャラクター)をやったのですが、その時にもアドリブの場面がすごく多かった。(経験が)生かされたなと思います」
■難しい役を経験して「引き出し」が増えた
(中島アナ):アドリブはどう考えていたんですか。
「お客様の雰囲気だったり、流行りのものを調べたり。今こういう芸人さん、ネタが流行っているなということで、それをすぐ取り入れて何とかその物語にそれないように入れ込んでいました」
(中島アナ):演じた後と前で自分の中で変化はありましたか。
「この役をやってから個性的な役をいただけるようになりました。役の幅が広がる、引き出しを増やさせてもらったなと思います。やっぱり三枚目って難しい。いろんな間もあるのでやっていて難しいけれど楽しかったです」
(安藤アナ):二枚目は宝塚の王道のスター。それとは違う三枚目を演じるにあたり、心掛けたことや変えようとしたことはありますか。
「いろんな映画や映像、舞台を見て『この役は誰々さんがやったら面白そう』というイメージで『じゃあこの人のイメージでやってみよう』と。また、舞台が開けてからはお客様に教えていただくことが多かったですね。同じセリフでも間がちょっと違うだけでお客様の笑うボリュームとか笑うタイミングが違うんです。『今日はこの間がちょっと長かったんだな』とか『ちょっと詰め過ぎたな』とか。笑い声が聞こえてくるので、分かりやすかったです。やっぱり舞台って生ものだなと思います。お客様と一緒に作り上げている感覚が三枚目の役の時は特にありました」
■「この役で絶対自分を変えるんだ」
「武田観柳はかなり壁でした。お稽古が始まる前から(演出家の)小池(修一郎)先生にコテンパンに言われるだろうなと思いながら意気込んで。でも『何を言われても絶対食らいつこう』と思って挑みました。これをやったら変われるって思ったんですよ。殻を破れる、と。与えていただいた役にちゃんと応えていきたいと思いました。私は下級生の時はあまり役がもらえなかった。『この役で絶対自分を変えるんだ』『この役をつかんで次の役に繋げるんだ』という気持ちが強かったです」
「この下衆の役に宝塚らしさも混ぜながらやらなきゃいけなかった。それが宝塚のファンの方にどう受け止められるかという挑戦でもありました。それで、初日が開けてお芝居で自分の出番が終わって(舞台袖に)はけるときにお客様から拍手いただいたんです。登場したときなどに拍手いただく『拍手間』があるんですが、お芝居が終わってはけるときに拍手いただけるというのは本当に幸せなこと。私もそこで泣きそうになりました。頑張ってきてよかったと。自然と起きた拍手はうれしかったですね」
(後編に続く)
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『アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タ カラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。次回は元花組スターの天真みちるさんです。