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手塚治虫文化賞・マンガ大賞の入江喜和 最終巻執筆時は「母の認知症がかなりひどくなってしまい…」

2023年6月9日 22:40
手塚治虫文化賞・マンガ大賞の入江喜和 最終巻執筆時は「母の認知症がかなりひどくなってしまい…」
第27回手塚治虫文化賞・マンガ大賞を受賞した入江喜和さん
第27回『手塚治虫文化賞』の贈呈式が8日に行われ、マンガ大賞を受賞した『ゆりあ先生の赤い糸』(講談社)の入江喜和さんら受賞者が出席しました。

本作は、50歳の主人公・伊沢ゆりあがある日、夫の吾良が渋谷のホテルでこん倒したとの連絡を受けて病院に駆けつけると、意識のない吾良のほかに見知らぬ青年がいたところから物語がはじまります。

LGBTQ、介護、DV、がん、コロナ禍といった要素も盛り込まれており、選考委員は「多様な生き方、新しい家族的つながりを描いた本作は、まさに今の時代にふさわしい」などと評価しています。

■「来るまで不安だった」受賞に戸惑いも…

贈呈式で、「この度は栄えある賞をいただきました」と喜びを語った入江さん。「漫画を描くときもテーマとか一切考えていなくて、終わりもあまり考えないで描いているんですけど、今日いろんな評を聞いて中高年のことしか描いていないのに、こんな栄えある賞をいただいていいのか、(この場に)来るまで不安だったんですけど、ようやくいいんだなと思えるようになりました」と、安心した様子を見せました。

さらに最終巻の執筆時について、「ちょうど私の90代の母の認知症がかなりひどくなってしまって、家族も大変だったんですけど、老人ホームに入ってもらうことになって。自分でも全然どうやっていったら…という感じだったので、逆にめっちゃ元気になるような漫画にしてやると気合が入りまして。それで主人公に助けられながら、なんとかなった1年だったなと思います」と振り返りました。

手塚治虫文化賞は、漫画家・手塚治虫さんの志を継ぎ、マンガ文化の健全な発展に寄与することを目的として、朝日新聞社が1997年に創設したもの。第27回となる今回は、入江さんの作品のほか、新生賞にガンプさんの『断腸亭にちじょう』(小学館)、短編賞にやまじえびねさんの『女の子がいる場所は』(KADOKAWA)、特別賞は漫画家の楳図かずおさんが受賞しました。