【特集】「山梨を黒トリュフの産地に」国内2例目...7年越し人工栽培に成功「まだ1合目」 研究者の思い
山梨県内で今秋、国内2例目となる黒トリュフの人工栽培に成功しました。コロナ禍で注目されたPCR検査の技術も活用し、産地化へ向けた挑戦が続いています。
トリュフの人工栽培に取り組んでいるのは、県森林総合研究所の林耕太研究員です。
県森林総合研究所 林耕太 研究員
「こちらは研究所の中に生えているクリの木で、試験していたクリの木と見立てるとその根元で落ち葉をかき分けたら、トリュフの頭がぽこっと見えた」
県森林総合研究所 林耕太 研究員
「全部で12個採れている。一番大きい物だと、この28g。本当に出てくるのか分からない中で不安に感じながら試験をしていた。見つけたときは『あ、本当にあったんだ』と驚きが大きかった」
キャビア、フォアグラと並び「世界三大珍味」と言われる「トリュフ」。この秋、県の研究施設、森林総合研究所では国内では2例目となる黒トリュフの人工栽培に成功しました。
林研究員によりますと、トリュフの元となる菌は生きた木と共生し、根から栄養をもらって土の中で成長します。そのため、これまでは人工栽培が難しいとされていました。
そこで森林総研では2017年、トリュフ菌を混ぜた土でクリの苗を栽培する「感染苗」の栽培に着手。植え付けから6年後の今年9月、ついに木の周囲にトリュフが顔をのぞかせました。
県森林総合研究所 林耕太 研究員
「山梨はあまり知られていないが、トリュフがもともと自生している土地。(トリュフ栽培の)ポテンシャルは非常に高い場所だと考えている」
ただ、前例のない研究ゆえの難しさも…
県森林総合研究所 林耕太 研究員
「(トリュフは)土の中で育っていくもので、菌が見えない存在なので、どういう状態かわからないのが一番の不安だった」
林研究員は昨年度、土壌内のトリュフの菌量を測定する方法を確立しました。使われたのは特定の遺伝子の量を測る「リアルタイムPCR」という手法。新型コロナウイルス検査と同じ方法で行います。
県森林総合研究所 林耕太 研究員
「トリュフの発生を待っていると6年間かかるが、その長い間(土の中が)よくわからない状態が続いてしまう。PCRで土の中の菌の状態を見ることで、もう少し早い段階で結果を確認できる」
今回は土壌内の菌が多い場所からトリュフが発生したため、より確実な栽培に向けた研究を続けています。果樹王国・山梨を高級食材「トリュフ」の産地へー。7年越し成果を糧に、その一歩を踏み出しました。
県森林総合研究所 林耕太 研究員
「研究はまだ1合目と考えている。まだまだやることがいっぱいリストアップされている。栽培条件や苗木作製の確率を上げていく研究を今後進めていきたい。新しい分野を切り開くことができるのが大きな点。長い時間かかってしまうかもしれないが、産地化に向けて今後も頑張って取り組んでいきたい」
研究は全国的にも始まったばかりです。岐阜県でも去年、トリュフ人工栽培に成功していますが、安定生産に向けた研究はまだまだ道半ば。今後も最適な栽培条件を探る検証作業が続くことになります。
(YBSワイドニュース 2024年11月13日放送)