知ってる?伝統の郷土食「しょうゆの実」受け継がれる地域の食文化 山梨・南アルプス市
南アルプス市の芦安地区に伝わる郷土食「しょうゆの実」。各家庭で作られてきた地域の味は現在も大切に受け継がれています。伝統の「しょうゆの実」づくりを取材しました。
南アルプス市の芦安地区の郷土食「しょうゆの実」は大豆と麹を発酵させてつくる保存食です。かつて各家庭でしょうゆを手作りしていたころ、残った大豆を食べたことからその名が付いたと言われています。
毎年10月半ばから始まる「しょうゆの実」づくり。20年以上作り続けている地元の民宿旅館「なとり屋」の名取よし子さんに教えてもらいました。
まず、ゆでた大豆を天日干しした後、麹を混ぜてワラを敷いた箱に寝かせます。発酵をうまく進めるためには温度管理がポイントだそう。
民宿旅館「なとり屋」名取よし子さん
「外の温度と部屋の温度との兼ね合いで(箱にかける布を)増やしたり減らしたりする。赤ちゃんを育てるような感じで、かける物の調節をする。大豆に菌が付く加減を毎日見ている」
長年の経験と勘が頼りです。10日ほど寝かせたら豆が硬くなるまで干し、乾燥させて完成。食べるときには必要な量だけ水で戻しネギやおかかなどと一緒に頂きます。
荒木キャスター
「大豆の発酵食というと納豆を思い浮かべますが、粘りはなく大豆のうまみたっぷり。白いご飯がほしくなります」
保存食として大切にされてきた「しょうゆの実」ですが、こまめな温度管理など手間がかかることもあり、高齢化が進む現在はつくる人も少なくなりました。
それでも伝統の味を絶やしてはならないと、7年ほど前から始まったのが「しょうゆの実守り隊」。大変な仕込み作業をみんなで行い、しょうゆの実づくりの名人が各家庭を訪ねて大豆の発酵具合をアドバイスするもので、住民同士の交流も兼ねているといいます。
4年前に芦安に移住し、今年初めて参加した高橋正幸さん。「ご飯のおかずに食べたら美味しかったので、つくれるもんなら自分でつくりたい」と思い、名取さんからコツを聞いてしょうゆの実づくりに挑戦しました。
民宿旅館「なとり屋」名取よし子さん
「しょうゆの実をつくりたいという方が増えてくださるのはうれしいですね」
「しょうゆの実」づくりが人のつながりを生み、地域の食文化を守り続けています。