大きな成長へ!菅政権肝いりの2つの基金
菅政権は来年度の予算で、日本の将来をかけて2つの大きな財布をつくった。企業の研究開発を支える2兆円の基金と、大学の研究力強化のための“10兆円”大学ファンドだ。世界をリードする革新技術を生むことを狙っている。
■菅総理が決断した2兆円基金
2兆円を投じる「グリーンイノベーション基金」は、2050年に二酸化炭素の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現するためのものだ。
エネルギー分野などで次世代の蓄電池ほか革新的な技術を確立し、世の中に普及させることを目指して、企業などの研究開発を10年間継続して支援する。
4日、政府はその2兆円をどのように配分するかの基金方針を固めた。
基金は、政府がカーボンニュートラルのためのグリーン成長戦略で掲げた水素、洋上風力、自動車蓄電池など14分野を対象にし、二酸化炭素の削減効果や経済波及効果などが見込める「革新的な研究開発」に資金を配分する。
最長10年という長い支援だけに、尻すぼみにならないよう、取り組みが不十分な場合は事業の中止やお金の一部の返還もありうるしくみにし、経営トップの強い関与を求める。
「並大抵の努力では実現できない」カーボンニュートラルのために、厳しい国の財政から出す2兆円。経済産業省の担当は「1兆円あればありがたいと思っていた」と話すが、菅総理の決断で2兆円という大きな予算がついた。産業の再構築や、変革につながる挑戦的な取り組みを対象とする方針だ。
■成功は「10案件で2、3でも」
ただ、カーボンニュートラルのための技術は、「どれが化けるかわからない」未知の領域も多い。
先端技術への投資はベンチャーキャピタルなどでも「成功するのは10案件のうち2、3あれば良いほう」。結果的に失敗になるチャレンジも、国民が認めて応援する必要がある。どのプロジェクトを対象とするか判断するワーキンググループは、難しい目利き力を求められる。
また、日進月歩の中で、柔軟な変更も考えられる。失敗もありうる技術開発への支援となるからには、国民に状況をできる限りわかりやすく説明し、その技術が私たちの生活をどう変えるかを示すことが大切だ。
■大学を世界水準に~10兆円規模を目指す大学ファンド
学術界では、世界トップレベルの研究をする大学を実現するために、政府は大学ファンド(基金)の創設を決めた。
資金不足に悩む大学の研究者の強い求めに応じたもので、来年度予算の財政投融資や今年度の補正予算から政府が4兆5000億円を出し、将来は10兆円規模を目指す。この基金の元のお金は使わず、これを運用した利益を大学の研究支援に使うというものだ。
海外の有力大学のファンドは一般からの寄付で集めたお金を運用して大学の資金にしているが、日本の大学は寄付が少なく、国のお金を貸して賄うこととなった。将来は企業などからの寄付が増えることも期待している。
このファンドの大きな課題は、低金利の市場環境でしっかり運用益をあげられるかということだ。最後はきちんと国にお金を返すよう、投資のルール確立が必要だ。
また、運用益の資金配分にも議論が多い。
多くの大学がファンドからの資金に期待するが、広く薄く配る形で競争力がアップするのか。世界トップレベルの研究実現が遠くなるという声もある。
新型コロナで国の財政の危機が増す中、大きなお金を投じた2つの基金。日本の大きな成長につながるよう、しっかりとした制度設計と運用が求められている。