2024年 XRの最新トレンド【SENSORS】
XR(クロスリアリティ)とは、現実と仮想の世界を融合し、新たな体験を実現するテクノロジーだ。VR(仮想現実)は、主にCG映像を通して仮想空間を体験できる技術。一方AR(拡張現実)は、現実の風景にさまざまなデジタル情報を付加して表示させる技術だ。
これらの新技術の総称であるXRが、今年大きな動きを見せている。そこで今回は、XR領域で活躍中のアーティストや、XRデバイスの開発を手掛ける会社の代表ら3名が集まり、2024年のXR最新トレンドについて語り合った。
■最新トレンドは「装着するディスプレイ」
2024年2月初旬にApple社が、2007年のiPhone以来の大型新製品と言われる「Apple Vision Pro」を発売。ゴーグル型デバイスを装着すると、現実の風景にデジタルコンテンツを重ね合わせて表示することができ、目や指の動き、声だけでコンピューター操作が可能になる。現時点ではアメリカのみでの発売だが、1月の予約開始から大きな話題になっている。
このような“装着するディスプレイ”によって得られる新たな体験について、ViXion株式会社 テクノロジー・エヴァンジェリストの近藤義仁さん、通称「GOROman」は、次のように説明する。
「ヘッドセットを装着することで、目の前に170〜180インチほどの大きなテレビ画面が広がっているかのように見えるんです。そのような体験ができるディスプレイが今年、注目を集めそうだと思っています」
「この1年でデバイスの形状も徐々にスタイリッシュになり、バッテリー持続時間や入力インターフェースも改良され『これは、普及するのでは?』と感じられるようになってきました。私自身は普段『XREAL Air』という眼鏡型のディスプレイを装着し、Macを接続しています。たとえば、ベッドの上で寝転がりながらディスプレイを操作したり、歩きながらテキスト入力するなども可能です」
■XRデバイスは一般的に普及する?
XRデバイスが今後人々の間に広く普及していくために、重要なポイントがある、とVRハードウェア開発・販売を手掛ける株式会社 Shiftall(シフトール)代表の岩佐琢磨さんは指摘する。
「私も、視覚をハックするようなデバイスが今年のトレンドになると思っています。たとえば中国などでは、家にテレビを置くのではなく、代わりにディスプレイを装着し、スマホを接続して、大画面で動画視聴するといった楽しみ方が広がっています。テレビを持たなくても、スマホを接続すれば170インチの大画面で楽しめるんです。デバイスの価格が10万円を切ってきたので、幅広い方に手に取ってもらいやすくなるのではないでしょうか」
■XR技術による革新的な体験に期待
VRアーティストのせきぐち あいみさんは、Apple Vision Proへの期待を次のように語る。
「すべての人を別世界へ連れていく、といった革新的な体験を期待しています。現状は約50万円と高価で、誰もが持つようになるのはもう少し先だと思いますが、Apple社の製品である点も大きな強みだと思います」
「既に多くの人が持っているiPhoneやiPad、Apple WatchやMacとアプリケーションやコンテンツの互換性があるからです。既存のユーザー接点からXRをじわじわと一般的にしてくれるのではないかと大いに期待しています」
「Apple社がVRやARといった言葉を使わず『空間コンピューティング』という言い方をしている点に共感します」とGOROmanさんも話す。
「今後、人々がコンピューターを利用する新しい形になり得ると思っています。iPhoneやiPadのアプリは基本的にそのまま動作するし、Macの画面もそのまま出力できます。今まで、パソコンのディスプレイに向かって仕事をしていたスタイルとは全く違う働き方ができるようになるはずです」