【解説】「プーチン大統領はキーウ制圧を諦めていない」……一時撤退、再び進軍の可能性も 5月9日に「勝利宣言」か
ロシア軍はウクライナの首都があるキーウ州から撤退しましたが、プーチン大統領はキーウ制圧を断念していないと専門家はみています。「戦勝記念日」の5月9日に今回の侵攻の勝利宣言をするとの見立ても報じられています。その狙いと国内事情を考えます。
■解放も…キーウ近郊の町で大勢の遺体
有働由美子キャスター
「ウクライナの戦況ですが、首都があるキーウ州全域が、ロシア軍から解放されたといいます。ただ、ロシア軍が去った後のブチャで、大勢の遺体が見つかりました」
「一方で、東部から南部での攻撃は続き、南部オデーサ(オデッサ)では燃料貯蔵施設がミサイル攻撃を受けました。南東部マリウポリでは市民10万人以上が取り残されたままです」
「ロシア政治に詳しい、慶応義塾大学の廣瀬陽子教授にうかがいます。ロシア軍はキーウ制圧をいったん諦めたと見ていいのでしょうか?」
廣瀬教授
「諦めたというにはまだ早いと思います。これから東部・南部の戦いに注力していくということですが、それが非常に良い形で進めば、またキーウに向かって進軍させる可能性はあると思います。少なくともプーチン大統領はまだキーウを諦めていないと思います」
■東部に集中…「記念日」が目標か
有働キャスター
「その東部について、5月9日にプーチン大統領が勝利宣言をしたいという話がでてきています」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「アメリカの情報当局者の話として、CNNが伝えています。今ロシアが苦戦しています。そんな中でもプーチン大統領は、何か勝利をアピールしなければなりません」
「そこで、今後はウクライナ東部に集中して攻撃し、制圧したところで勝利宣言する予定にしています。5月9日の『戦勝記念日』を目標にしているのではないかという話です」
「旧ソビエトが第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した記念日です。去年5月9日の映像を見ると、モスクワで軍事パレードをしていました。愛国心を高める大事な行事です」
■「ナチス」になぞらえ…類似点
「今回の侵攻を振り返ると、記念日を大事にしていると映ります。2月23日の『祖国防衛の日』の翌日に侵攻を開始。3月18日のクリミア併合を祝う記念日にも、プーチン大統領は国民の前に出てきて、軍事行動の正当性をアピールしました」
「そして今、5月9日の記念日という話が出てきているようです。ただ、東部に集中するといっても実際は簡単ではなく、戦闘は長期化するとの見方もあります」
有働キャスター
「『5月9日説』をどう見ますか?」
廣瀬教授
「5月9日がカギなのは間違いないと思います。ナチス・ドイツに勝利した非常に重要な日です。今回の戦闘も、ウクライナをナチスになぞらえて、東部の住民が蹂躙されているので、そこを救うというような大義名分です。非常に類似性があります」
■「リボン」で戦勝記念日を意識
「しかも一連の流れを見ていると、5月9日を意識しているという節があります。毎年、黒とオレンジのストライプの模様『ゲオルギーリボン』を使ってお祝いをしています」
「今回の戦闘でも使っていて、シンボルである『Z』をゲオルギーリボンで描いて、子どもにつけさせたり、街につけたり、いろいろな所で使っています。明らかにこれは戦勝記念日を意識している動きと言えます」
「5月9日に戦争が終わっているとは思えませんが、何らかの成果を高らかにうたう日にはしてくると思います」
(4月4日『news zero』より)