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ダウン症児引き取り拒否 “波紋”広がる

2014年8月4日 20:33

 オーストラリア人夫婦の依頼をうけて、タイ人女性がダウン症の赤ちゃんを代理出産で産んだ。だが、依頼したオーストラリア人夫婦がこのダウン症の赤ちゃんの引き取りを拒否し、大きな議論を呼んでいる。

 病院のベッドで赤ちゃんにミルクを与える女性。タイの首都・バンコク近郊の町に住むパッタラモン・チャンブアさん(21)があやしている男の子は、実の子供ではない。パッタラモンさんは「代理出産」で、この赤ちゃんを産んだのだ。

 赤ちゃんの実の両親はオーストラリア西部に住む夫婦。オーストラリアのメディアによると、夫婦は斡旋(あっせん)業者を通じて日本円にして約150万円の報酬でパッタラモンさんに代理出産を依頼した。

 パッタラモンさん「報酬はお金のない私にはとても大きいものでした」

 パッタラモンさんはこの報酬を、すでに育てている2人の子供の教育費にあてようと考えて依頼を受け入れ、代理母として男の子と女の子の双子を身ごもった。しかし妊娠7か月目、衝撃の事実を告げられる。

 パッタラモンさん「おなかの中の子がダウン症であることが分かると、依頼主から『中絶してほしい』と言われました」

 しかし、パッタラモンさんは「見捨てることができない」とその要請を拒否。去年12月に双子を出産し、依頼主の夫婦は健康な女の子だけを引き取った。パッタラモンさんは、男の子を自分の子供と一緒に育てている。引き取りを拒否された赤ちゃんがふびんでならないと胸の内を語った。

 「中絶という選択肢もありましたが、あの子を愛しています。9か月も私のおなかにいたのですから」

 ダウン症を理由に我が子の引き取りを拒んだ依頼人の夫婦。オーストラリアのアボット首相も、「非常に悲しい話だ。代理出産ビジネスの落とし穴を浮き彫りにした」と暗に批判した。

 代理出産の斡旋業者が多くいるタイ。先進国に比べ割安な上、医療設備も比較的整っているため、外国人からの依頼が多いという。今回の件と代理出産のあり方については、タイの新聞各紙も一斉に報道。政府当局者が「法整備に向けた議論が必要だ」と述べたことを伝えている。

 ダウン症の男の子は先天性の心臓疾患も患っていて、治療費を援助するために世界各国からすでに2000万円以上の寄付が集まっているという。