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北でプロレス 市民らが“日本びいき”に?

2014年9月1日 19:55

 北朝鮮の平壌で先月30日、次世代の党のアントニオ猪木参議院議員がプロレス大会を開催した。平壌での開催は19年ぶりで、普段娯楽が少ない北朝鮮の市民らは大歓声を送った。日朝交渉に進展の機運が生まれる中、観戦する市民の態度にもある変化が見られた。

 最高指導者である金正恩第1書記は現れなかったものの、白熱した試合に満員の会場は大いに沸き、平壌の市民たちは興奮気味に拍手を送った。

 イベントをプロデュースしたのは、北朝鮮に太いパイプを持ち、日朝関係の改善を訴える猪木参院議員。

 猪木議員「この国際的なイベントを契機に、長く閉ざされていた日朝の扉が開き、日朝両国が『近くて遠い国』ではなく、『近くて近い国』になるよう期待しています」

 19年ぶりのプロレス大会を、北朝鮮は国を挙げてPR。大会を前に朝鮮中央テレビでは、選手らが地元の子供たちと交流する様子などが放送された。

 イベント当日、会場の体育館は約1万人の観客で満席となった。プロレスを初めて見る人も多い平壌市民だったが、激しい試合には大きな歓声と拍手を送った。

 観客「か弱く、とても魅力的な女性が戦うのを見て感動しました」

 イベントには日本人選手の他、ボブ・サップ選手らアメリカ人も出場した。観客の中には、体格面では劣る日本人選手を応援する人の姿も。

 観客「アメリカ人を苦しめて、日本人に勝ってほしかったです」

 スマートフォンを手に動画を撮影していた若い男性は「アメリカが負けて痛快でした。(Q:日本選手を応援?)日本選手を応援することもあるでしょう」と話した。

 日本とアメリカの選手の試合では、多くの観客が日本人選手に声援を送っていた。

 日朝の政府間交渉が進み、関係改善の機運が出てきていることを受け、平壌市民の日本に対する感情には変化が表れているようだ。

 イベント会場では、テコンドーの演武が披露された。また、日本の合気道も紹介され、日朝親善が強調された。

 プロレスイベントを観戦するため、初めて北朝鮮を訪れたという日本人ツアー客は「(Q:平壌で見るプロレスは?)やっぱり違いますよね。友好という意味がありますから、ものすごく主催の方の熱意とか、そういうものが伝わってくる感じです」と話した。

 今回のプロレスイベントに合わせ、日本人ツアー客約60人が北朝鮮に入り、市内観光などを楽しんだ。日本政府が渡航自粛要請を解除して以降、これほど多くの日本人が訪朝するのは初めて。

 今回、30回目の訪朝となった猪木議員。先月30日には朝鮮労働党の序列2位、金永南最高人民会議常任委員長と会談した。北朝鮮としてはイベントを大々的に開く一方、主催者の猪木議員を厚遇することで、日本との関係改善に向けた積極姿勢を強調した形。

 ただ、日朝関係を本格的に改善するためには拉致問題の解決が欠かせない。北朝鮮は日本人拉致被害者の全面調査を約束したが、1回目の報告は今月にも行われるとみられている。

 プロレスイベントには2日間で2万人以上の観客が集まった。平壌市民の心をつかんだプロレスイベント。日朝が「近くて近い国」になるきっかけになるのだろうか。