繰り返されるミサイル発射 北朝鮮の思惑は
繰り返される北朝鮮のミサイル発射。これに、アメリカのトランプ大統領は強硬姿勢を見せている。そして、6日からは“米中首脳会談”が行われる――北朝鮮のミサイル発射の狙いとは。
■ミサイル発射に“2つの背景”
北朝鮮は、去年からミサイル発射を繰り返している。去年4月と7月、8月には、潜水艦にミサイルを載せて発射場所を感知されずに発射できる弾道ミサイル、SLBMを発射。7月と9月には、日本も射程圏内に入る中距離弾道ミサイルなどを3発連続で発射してきた。
そして、今年2月には、今回発射されたものと同じとみられる新型の中長距離弾道ミサイル“北極星2型”を発射。さらに先月には、初めて4発もの弾道ミサイルを同時に発射し、そのうち3発が日本の排他的経済水域内に落下した。
こうした中、今回、北朝鮮はなぜミサイルを発射させたのだろうか。大きくまとめると、2つの背景があると言える。
1つは、いまアメリカと韓国が合同軍事演習を行っていること。そしてもう1つは、6日からフロリダで行われる米中首脳会談だ。
■1.米韓合同軍事演習について
この演習は北朝鮮の脅威に備えることが目的で、先月1日から2か月間、4月末まで続く予定だ。
これに対し北朝鮮は、「演習を続ける限り、先制攻撃能力を拡大強化する」という論評を発表し、反発していた。
■2.米中首脳会談について
北朝鮮への対応が重要な議題の1つとして話し合われる予定だという。この会談を前に、北朝鮮がけん制したものとみられる。
トランプ大統領は北朝鮮に対して、厳しい姿勢を示している。2月に安倍首相が訪米した際にもこう発言していた。
「北朝鮮の核・ミサイルの脅威から(日本を)防衛するのは、非常に、非常に優先度が高い」
ティラーソン国務長官は先月、「(北朝鮮には)すべての選択肢をテーブルの上に置いている」と述べた。北朝鮮の挑発が増す中、アメリカの軍事行動も“選択肢としてはある”ということだと、首相周辺は話している。
ある日本の外務省幹部は「アメリカの強い外交は、強い軍事力が背景にあって初めて成り立つという発想。ただ、実際に軍事力を行使するかどうかについては、軍に近いアメリカ政府関係者は反対している」と分析している。
それだけに、米中首脳会談は今後の政策を見極める上で注目される。さらには、日本がアメリカに対して、どんな政策が現実的かきちんと提案していくことが求められている。
■大使の韓国帰任はギリギリのタイミング
4日、長嶺大使が韓国に帰任した。慰安婦問題に対応するためでもあるが、北朝鮮への対応という側面もある。韓国には北朝鮮の体制から逃れてきた脱北者も多く、北朝鮮の情報収集の拠点となっている。それだけに、長嶺大使が指揮をとって韓国政府と密に連携することが求められている。
ある日本の外務省幹部は、「北朝鮮や安全保障を総合的に判断すれば、昨日の帰任はギリギリのタイミングだった」と話している。
■軍の動きは“正恩氏の決断次第”
現状の北朝鮮について、朝鮮半島情勢に詳しい早稲田大学大学院・李鍾元教授はこう話す。
「今年は金正恩委員長が最高指導者の地位についてちょうど5年。体制は表面的には安定しているようにみえる。それだけに、軍の動きは正恩氏の決断次第で、今後、引き続き挑発行為に踏み切る可能性もある」
■さらなる警戒が必要
今後の北朝鮮の予定を見ると、今月15日には故・金日成主席の生誕を祝う北朝鮮最大の祝日“太陽節”があり、25日には朝鮮人民軍の創設記念日、4月末まで米韓の軍事演習も続く。
北朝鮮は核実験なども視野に入れているようで、さらなる警戒が必要だ。