×

【解説】北「グアム発射」その可能性は?

2017年8月10日 17:36
【解説】北「グアム発射」その可能性は?

 北朝鮮が慎重に検討しているとするグアム周辺への弾道ミサイルの発射計画について、北朝鮮の軍は10日朝、4発を同時に発射し島根県・広島県・高知県の上空を通過する計画であることを新たに明らかにした。


■グアム周辺射撃計画

 10日に北朝鮮国営メディアで報道されたのは「グアム周辺射撃計画」で、中距離弾道ミサイル「火星12型」をグアムに向け、4発同時に発射する。飛行時間は1065秒(約18分間)、飛行後、グアムの周辺30~40キロの海域に着弾するという。

 この海域は、領海の外側の「接続水域」で、アメリカが外国の船の密輸や不法入国を取り締まる権利を持っている。

 グアムはアメリカ軍にとってアジア太平洋地域での軍事戦略上の最前線、重要な拠点だ。先月には、グアムの基地を飛び立ったアメリカ軍の戦略爆撃機が朝鮮半島上空で相次いで訓練を行ったため、北朝鮮は反発していた。

 「火星12型」は、今年5月に北朝鮮が発射したミサイルだ。北朝鮮は火星12型を垂直に打ち上げる「ロフテッド軌道」と呼ばれる方法で発射、2000キロメートルを超える高度に達した後、日本海に落下した。

 北朝鮮は、アメリカ本土に届く長い射程のミサイルの開発を続けていて、狭い国土で周辺に落下させて遠い距離を飛ばすには、高い高度で飛ばして距離を延ばす実験をするしかない。そのため、次は通常の方法で、つまり水平に発射して技術的にグアム周辺まで届くかどうかを試したいという思惑もあるとみられている。

 計画では、ミサイルは日本の上空を通過していく。具体的に名前が挙がったのが、島根県、広島県、高知県。グアムに向けてミサイルを発射した場合、これらの県の上空を通過することになると、日本に対しても警告している。


■アメリカは迎撃する?

 万が一、計画通りミサイルが飛んできたら、アメリカ軍が迎撃するかどうかが焦点となる。国際法上は、この海域は領土・領海にあたらず、迎撃できないとされている。

 一方で、こうした見方もある。北朝鮮情勢に詳しいコリア・レポート編集長の辺真一さんは「弾道ミサイルは軍事目的であり、事前通告なしに発射となると、船などの安全を確保するため、撃ち落とす可能性が高い」と話している。

 また、北朝鮮の軍事に詳しい、元海上自衛隊海将・伊藤俊幸さんは「アメリカ軍なら撃ち落とすだろう。さらに、ミサイルが飛んできたことを口実に、北朝鮮を攻撃することも可能になる」と話している。


■北朝鮮がミサイルを撃つ可能性は

 北朝鮮軍の司令官は「今月中旬までに計画を完成させて金正恩委員長に報告し、命令を待つ」としているが、伊藤さんは「今はまだ、司令官の計画をわざと流してアメリカの反応を見ている段階。まだまだ条件闘争の範囲内だ」と話している。

 つまり今後、アメリカが北朝鮮のミサイル発射計画にどう反応するのか、注視していかなければならないということだ。

 計画が実行された場合、万が一ミサイル発射が失敗して日本に落ちてきたら大変なことになる。日本政府がどう不測の事態に備えるかも重要になってくるので、今後、しっかり注視しないといけない。