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今回は“異例”ずくめ 北朝鮮の狙いは?

2017年8月29日 17:08
今回は“異例”ずくめ 北朝鮮の狙いは?

 北朝鮮は29日午前6時前、北東方向に弾道ミサイル1発を発射し、北海道の上空を通過したのち太平洋に落下した。北朝鮮の弾道ミサイルが日本の上空を通過するのは1年半ぶり5回目だが、今回は事前の通告もなかったことで、政府内には極めて深刻な脅威だとの認識が広がっている。


■発射場所・ルート・特徴

 今回のミサイル発射について、「発射場所」「ルート」「ミサイルの特徴」という3点から整理する。

 ミサイルは北朝鮮の首都・平壌から発射された。平壌から発射されるというのは異例のことで、専門家は「平壌市民にミサイルの発射を見せて、アメリカに対抗できる実力があるんだ」と国内向けにアピールしようとしたのではないかとも指摘している。

 ミサイルが飛んだルートを見ると、函館がある北海道の渡島半島、襟裳岬の上空を通過した後、襟裳岬の東約1180キロの太平洋上に落下したとみられている。この場所は、日本の排他的経済水域の外側となる。

 今回を除くと、日本の上空を通過したのは過去に4回ある。1998年と2009年には、いずれも東北地方の上空を越えて太平洋に落下した。2012年と去年は沖縄県の上空を通過した。

 今回の弾道ミサイルは北海道を通過したわけだが、ここまで北側のルートを通過するのは初めてとなった。


■アメリカの刺激を避けるため?

 小野寺防衛相は29日朝、ミサイルの種類について、新型の中距離弾道ミサイル「火星12型」だった可能性があると述べている。

 「火星12型」は今年5月、通常よりも高く打ち上げるロフテッド軌道で初めて発射されていたが、普通に打ち上げればアメリカのグアムも射程に入る約5000キロは飛ぶとも分析されていたミサイルだ。

 今回のミサイルの飛距離は約2700キロ、最高高度は約550キロと推定されていて、飛行時間は約14分だった。つまり、ロフテッドではなく、通常の軌道で発射されたわけだが、ミサイルを大気圏へ再突入させるという難しい技術を、より実戦に近い形で試したかったのではないかとみられる。

 今回発射されたのは、あくまで中距離弾道ミサイルで、北朝鮮がずっと開発を続けているICBM(大陸間弾道ミサイル)ではなかったわけだが、もしもICBMを発射してしまったらアメリカを刺激してしまうため避けたのではとも指摘されている。

 今回のミサイルは、3つに分離したという話も出ている。防衛省は、今のところ詳細は分析中としているが、防衛省のある関係者は、ミサイル発射が失敗し、弾頭もしくはミサイル本体が分裂したため正しく飛行せず、同じエリアに落下した可能性も指摘している。

■身を守るための対処法

 今回は、「弾道ミサイルが発射された」とJアラートを通じて国民に知らされてから、ミサイルが北海道上空を通過するまでに5分しかなかった。これがもし上空を通過せず、日本に着弾していた場合、私たちが避難するまでには、わずかな時間しかない。

 早朝に突然、防災無線が鳴ったり、緊急速報メールを受け取ったりして驚いた人も多いと思うが、改めて、どう対処したらいいのか。

 政府は、屋外にいる場合「できる限り、頑丈な建物や地下に避難する」、建物がない場合「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」、屋内にいる場合「窓から離れるか、窓のない部屋に移動する」よう呼びかけている。

 ミサイル発射を想定した避難訓練は各地に広がりつつあるが、大半の人はまだ参加した経験がないのではないか。対処法などの情報を改めて確認し、万が一のために備える必要がある。