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初の米朝首脳会談実現か…背景に北の戦略も

2018年3月9日 18:57

北朝鮮の金正恩委員長がアメリカのトランプ大統領に対して首脳会談を求め、トランプ大統領もこれに応じ、金委員長とトランプ大統領が、直接、会う可能性が出てきた。実現すれば史上初めてのことで、異例の展開となっている。

■何があったのか?

金委員長がトランプ大統領に「核・ミサイル実験を中止する」「できる限り早く会談したい」とメッセージを送り、これに対しトランプ大統領は「非核化を達成するために5月までに会おう」と応じたという。4月、5月は国際情勢がめまぐるしく動くことになりそうだ。

来月から米韓の合同軍事演習が予定されている。通常通りでいくと2か月かかる。そして来月末には南北首脳会談が予定されている。米朝首脳会談は5月までにというから、これを受けて安倍首相は、来月早々にアメリカを訪問して日米首脳会談を行う方針を明らかにした。米朝首脳会談にどのように臨むか、直接、意見交換する考え。

■一気に動きだした理由

制裁が効いているのも一因だが、慶応義塾大学の小此木政夫名誉教授は、別の背景もあると指摘している。

北朝鮮は年明けから「先南後米」、先に韓国から始め、次にアメリカとの対話をめざすという姿勢に転換しているのだという。韓国と一緒にアメリカを説得すれば、トランプ大統領も拒否できないだろうということなのだ。一気に動いているように見えるが、北朝鮮にとっては虎視眈々(たんたん)と進めてきた戦略だという。

■北朝鮮は本当に核を手放すのか。

今回、トランプ大統領に送られた金委員長のメッセージには“非核化の意思”が含まれていたと韓国側は発表しているが、具体的にどんな“非核化”を言ってきているのかがポイント。

というのも、先日の南北の会談では、金委員長は“朝鮮半島の非核化”を条件としている。「朝鮮半島」から、つまり北朝鮮も韓国も非核化する、という。

北朝鮮にとってみれば、自分だけ核を手放すのは一方的で、韓国だってアメリカの核の傘にまもられている、と。だったらアメリカ軍は出て行ってください、と、「在韓米軍の撤収」まで要求してくるかもしれない。こうなるとアメリカと韓国の同盟にかかわる話になってきて、かなり時間のかかる作業になっていくといえる。

■これまでとの違いは?

北朝鮮は、これまでも核をめぐる約束を破ってきたといういきさつがある。

ただ、今回がこれまでの交渉と違うのは、「すでに北朝鮮が核・ミサイルの完成の域にある」と主張している点。これまでは開発の途中段階で、時間を稼ぐ思惑があったのだが、北朝鮮は今、核・ミサイルがほぼ完成し、アメリカと対等の立場に立って核を交渉の材料にできるという、安心感があるとみられる。だから思い切ってカードを切ってきた。

さらに相手は“交渉好き”のトランプ大統領と、「南北融和路線」いわば“自分に優しい”文在寅大統領なので、キャスティングとしては最高だ。トランプ大統領といえば、9日の発表の前にこんな一幕があった。

■トランプ大統領は興奮し、初めて記者室で“予告”

ホワイトハウスの記者会見室で記者たちがざわついている。なぜかというと、この直前にトランプ大統領本人がここに現れたからだ。興奮した様子で「このあと重大発表があるぞ」と予告してきたという。こんなことは初めてのことで、大統領自身、興奮していたことがうかがえる。

成果を急ぐあまり中途半端に終わることもリスクになる、という指摘もある。しばらく、各国の動きに目が離せない状況になる。