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金委員長、電撃訪中の裏で何が?各国思惑は

2018年5月9日 20:41

北朝鮮をめぐる動きが激しさを増している。7日から8日にかけて中国を電撃訪問した北朝鮮の金正恩委員長。中国の習近平国家主席との親密さをアピールした。一方、北朝鮮に拘束されているアメリカ人3人が解放されるのではとの観測も。米朝首脳会談を前に駆け引きが繰り広げられる中、各国の思惑は…。

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金委員長は3月26日に中国・北京で習近平氏と会談した。今回は、北京よりも近い大連へ政府専用機で行った。わずか40日あまりという、異例の短期間での再訪問となった。そして相互訪問の慣例からも異例となる。

金委員長の帰国後、その様子が公開された。

中国で報道された映像―。首脳会談のとき、金委員長は真剣な表情で会話していた。その後、晩さん会が開かれ、金委員長の妹・与正氏の姿もあった。注目なのは、金委員長と習主席の2人が海岸沿いを並んで歩いている様子。

首脳同士の親密さをみせることで“中朝一体”をアピールしていると考えられる。

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金委員長は、なぜ再び中国を訪問したのか?

北朝鮮メディアによると、長年アメリカとの外交を担ってきた実力者・崔善姫外務次官が同行していたという。米朝首脳会談について、中国と話し合ったのは間違いなさそうだ。

さらに、ワシントン支局の取材によると、現地の外交筋からは「米朝間で問題が起きたようだ」という声もあるという。北朝鮮情勢に詳しい慶応義塾大学の礒崎准教授は、「アメリカと大きな取引が本当にできるか、北朝鮮が不安になっているのでは」と指摘している。

確かに、韓国の文大統領とは南北融和ムードが高まった。だが、韓国はアメリカの同盟国であるため、アメリカと取引するにあたっては「中国に、北朝鮮の考えを理解してもらいたい」というのが金委員長の本音なのかもしれない。

北朝鮮にとってはやはり中国が後ろ盾のようだ。

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9日は、もうひとつ大事な動きがあり、アメリカのポンペオ国務長官が平壌に行っている。米朝首脳会談の調整のためだけではなく、北朝鮮で拘束されているアメリカ人の解放を求めているとみられている。

スパイ行為を働いたとして拘束されているのは、キム・ドンチョルさん、平壌の大学に教授として招かれていたキム・サンドクさん、同じ大学に勤務していたキム・ハクソンさんの3人。

アメリカとしても、この人らの帰国は、かなりの成果となる。そのため、米朝首脳会談を控え、アメリカが解放を求めてきた。それに北朝鮮がどうこたえるのか、アメリカは見ている。

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一方で9日、東京では安倍首相と中国の李克強首相、韓国の文在寅大統領による首脳会談が相次いで行われている。

主要なテーマは北朝鮮政策について。金委員長は中国にも韓国にも訪問しているが、日本には来ていない。対北朝鮮政策で主導権争いをしている状況。そうした中で、日本がどれだけ存在感をアピールできるかがポイント。

史上初の米朝首脳会談を控えて、各国が活発に外交を進めて、自分の国の立場が不利にならないよう、「外交戦」を繰り広げる状況となっている。