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米国人解放の背景 米朝でどんな交渉が?

2018年5月10日 20:32

北朝鮮に拘束されていた3人は9日夜、解放され、平壌を出発。日本の横田基地とアラスカ州を経由して、ワシントン近くの空軍基地に到着した。アメリカと北朝鮮との間でどんな交渉があったのか。3人が解放された背景に何があったのか―。

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【拘束の経緯】
3人とも韓国系アメリカ人で、3年前に拘束されたキム・ドンチョル氏は、アメリカメディアによると牧師、ビジネスマンと言われている。

去年4月に拘束されたキム・サンドク氏は大学教授で、平壌の大学で会計学を教えていた。平壌空港から出発しようとしたところ拘束されたという。

去年5月に拘束されたキム・ハクソン氏は、サンドク氏と同じ大学に運営関係者として勤務していた。

解放された3人は「我々を家に帰してくれたアメリカ政府とトランプ大統領に深い感謝を表したい」と声明を発表している。

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【北朝鮮の思惑】
北朝鮮としては、米朝首脳会談の開催に向け、友好ムードを高め、非核化に対するアメリカ側の強硬姿勢を和らげたいとの思惑もあるとみられている。

トランプ大統領はこのところ、このような発言をしてきた。

トランプ大統領「会談に成果がなければ席を立たせていただく」「過去の政権と同じ過ちは繰り返さない。非核化が達成されるまで最大限の圧力は続く」

このようにトランプ大統領は、成果がないなら会談を取りやめることを示唆して、北朝鮮側をけん制してきた。こうした状況の中で9日、金委員長とポンペオ国務長官の会談が行われ、北朝鮮メディアは「満足のいく合意」に達したと報じた。

北朝鮮情勢に詳しい辺真一氏は、この「満足」という言葉がキーワードになるという。辺さんは金委員長が「満足」した理由は2つあるとみている。

一つは、米朝首脳会談で取り上げる議題をめぐってアメリカが譲歩した可能性があるということ。アメリカは首脳会談では、核問題だけでなくミサイルや化学兵器、人権問題などもテーブルにのせたかった。これに対して、北朝鮮はアメリカの要求、高いハードルを少しでも下げようと中国を通じて働きかけており、アメリカ側が歩み寄った可能性がある。

もう一つは、非核化の手順についてもアメリカが譲歩した可能性があるということ。非核化についてアメリカは一括解決を要求。先に核を廃棄すれば見返りをあげるという方法だ。

一方、北は段階的、同時並行的解決をのぞんでいる。つまり、ステップ・バイ・ステップ。ギブ・アンド・テーク。ここに米朝の大きな溝があったが、そのズレを今回アメリカが内々に譲歩したのではないかという見方も出ている。水面下で様々な駆け引きがあったのかもしれない。

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【拉致問題の進展は】
米朝首脳会談に現実味が出てきたことで、日本は取り残されるわけにはいかない。10日朝、安倍首相はトランプ大統領と電話で会談してポンペオ国務長官と金委員長とのやりとりについて詳細な説明を受けた。

そして安倍首相から3人の解放は「大きな成果である」と、祝いの言葉を伝えたという。安倍首相は10日午前、「拉致問題の解決のために、日米そして日米韓であるいは中国の協力も得て、この問題の解決のために全力を尽くしていきたい」とコメントした。

3人の解放は日本人拉致被害者の解放につながるのだろうか?アメリカ人の解放と日本人拉致問題は、その背景や歴史も大きく異なる。

まだ帰国していない日本人拉致被害者は現在、政府が認定しているだけで12人。さらに拉致が疑われる特定失踪者も入れると3ケタとなる。

ただ、辺さんによると、一つだけ「共通点」がある。それは、首脳会談をやれば拉致被害者を帰すという構図。2002年に当時の小泉首相が平壌を訪れ、日朝首脳会談が開かれたが、その後、拉致被害者5人の帰国が実現した。

今回も、初の米朝首脳会談開催がほぼ決まったことを受けてアメリカ人3人が解放され帰国した。辺さんは、トップ同士が直接会えば拉致被害者の帰国が実現したケースがあると話している。

日本の拉致被害者家族は、どんな思いだろうか。実際、過去13年あまり日本人拉致被害者の帰国が一人も実現していない。

今回のアメリカ人の解放が良いはずみとなり、実りある米朝会談につながることを期待したい。