米朝首脳会談 シンガポールで開催の背景は
アメリカのトランプ大統領は史上初の米朝首脳会談について、来月12日にシンガポールで行うと発表した。「会談は成功するだろう」と自信を見せたトランプ大統領。シンガポール開催となった裏に何があったのだろうか。
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ついにトランプ大統領が日程と場所を発表したが、最初はツイッターだった。トランプ大統領が日本時間10日午後11時半過ぎ、ツイッターでこう投稿した。
「米朝首脳会談は6月12日にシンガポールで行われる」「双方が世界平和のために非常に特別な時になるよう努力するだろう」
普通はこれだけ大事な会談なので、会見で発表されるものだが、またしてもトランプ流ツイッターだった。今回の決定の裏側にはこんなエピソードがあったことがワシントン支局の取材で明らかに。外交筋によると、トランプ大統領は板門店で南北首脳会談が行われた様子を見て「興奮」し、大統領自身の気持ちは板門店に傾いていて、周りのスタッフも「困っていた」という。アメリカのCNNもポンペオ国務長官らが大統領を説得して「板門店だと金委員長に対して融和的に見えてしまう」と、つまり金委員長になびいているように見えますよと、あきらめさせるのに数週間かかったと伝えている。
■選定の背景に「3つのポイント」
今回の選定の背景には3つのポイントがあると言われる。「中立性」「警備」「収容能力」の3つ。さきほどの大統領側近の忠告にもあったように、朝鮮半島で行われるとなると「中立」ではない。また先日の南北首脳会談のイメージがあまりに大きい。残ったのはシンガポールかモンゴルだった。
Q:なぜモンゴルではだめだったのか?
それが「収容能力」にあたる問題になるが、外務省関係者によると、アメリカ大統領が動くと政府関係者や警備担当者など800人ぐらい動くという。モンゴルにはそこまで大きなホテルはない。だから難しいとなった。
一方で、シンガポールではAPECなど国際会議が何回も開催されていて、大型ホテルも多い。収容能力という面でいうと、先日の南北首脳会談の時は、プレスセンターの大きなホールに世界中の記者が集まった。今回は史上初の米朝首脳会談だから、数千人規模になるのは確実だ。そのためにシンガポールになったとみられる。
シンガポールといえば「マーライオン」や「マリーナベイ・サンズ」ホテルだが、今回会場として有力なのは「シャングリ・ラ ホテル」だ。過去何度も大きな会議の会場になっていて、2009年11月にASEAN首脳会議が行われた時にはオバマ元大統領も来ている。
もう一つの有力な候補は「セントーサ島」で、カジノやゴルフ場があり、ユニバーサルスタジオもある。エンターテインメントが中心のリゾート地の島だが、シンガポールの中心部から車で20分ほど。東京でいうとお台場みたいな場所で、橋一本でつながっているので警備しやすいという面もある。ワシントンの外交筋によると、アメリカがシャングリ・ラ ホテル、北朝鮮がセントーサ島を希望しているという。
■金委員長の対米姿勢の変化に注目も
また、金委員長はかつてトランプ大統領については「狂った老いぼれ」と呼んでいたが、10日の朝鮮中央テレビの報道では「アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領」と呼んでいることが注目される。正式名称で呼んだことは大きな姿勢の変化を示し、会談への前向きなメッセージになる。
首脳会談は来月12日(火)の開催なのでちょうどあと1か月になるが、忘れちゃいけないのは、北朝鮮のここまでの核開発の経緯を考えると、非核化はそんなに簡単なことではない。アメリカ、北朝鮮が周到な準備で臨む会談だが、どこまで具体的な内容が出るのかが最大の課題となる。