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新“東京グルメガイド”…中国人の味覚で?

2018年9月5日 20:38

東京のレストランが星の数でランク付けされている、新しいグルメガイドが5日に発表された。作ったのは、中国最大の旅行会社。一体なぜ、中国の会社が東京のグルメガイドを作ったのだろうか。そして、紹介されているお店とは──

◇中国人のための“東京グルメガイド”とは?

5日に都内で開かれたイベント「グルメリスト2018年東京 ランキング発表会」の主催者は、中国最大の旅行会社『シートリップ』。その目玉は、中国人のための“東京グルメガイド”(中国語のみ)。中国で人気の料理研究家らが覆面調査などを行い、都内の426軒を厳選してアプリで紹介。トップクラスのレストランには、1つ~3つの“星の数によるランク付け”も行っている。

今回選ばれたのは、『ガストロノミー ジョエル・ロブション』などの有名店。

星の数を使ったグルメガイドと言えば、フランスの「ミシュランガイド」がすでに有名だが、なぜ新たに作ったのだろうか?

『シートリップ・グルメ』劉驍舟CEO「ミシュランなどもありますが、中国人の味覚にあうようなグルメガイドが1つもないことに気がついたのです。中国人の味覚と中国人の好きな食材に着目し、アプリを開発しました」

実は、星による評価とは別に、「おすすめ店」や「名物料理」を多く紹介している。では、「中国人の味覚」で、一体どんな店が選ばれたのだろうか?

◇選ばれた店は?理由は?

シートリップのグルメガイドは、いわゆる高級店だけでなく、東京・新宿の人気ラーメン店『風雲児』なども紹介している。名物は、鶏白湯と魚介ダシの濃厚ダブルスープに、中太の麺が絡む1杯、「得製らーめん(950円・税込み)」。まろやかな中にも、魚介のダシがしっかり感じられて、どんどん箸がすすむ。

シートリップによると、これまで「中国発祥」とのイメージを持たれていた日本のラーメンだが、近年、その独自性が注目され、中国で大人気になっているという。

『風雲児』店主 三宅重行さん「中国の方々にラーメンを評価してもらえるっていうのは、本当にうれしいですね」

◇すでに影響を実感する店も…

さらに、すでにシートリップの影響力を実感しているという店も…。

東京・中央区の『日本橋・玉ゐ 銀座店』は、去年から2年連続でシートリップのガイドに選ばれた、老舗の天然あなご料理店。看板メニューは、あなごの「箱めし 中箱(2950円・税込み、焼・煮から選択可)」だ。

利用客「脂はあるんですけど、さっぱりした感じ。すごくおいしい」

中国ではあなご料理がめずらしかったこともあり、以前はほとんど訪れなかったという中国人客だが、現在では4割を占める日も。中国語のメニューも作成した。

『日本橋・玉ゐ 銀座店』上遠野進治店長「今回、シートリップさんに取り上げていただいたことで、客足がのびた要因でもあるかなと」

◇中国では大きな影響の『シートリップ』

日本ではあまりなじみのないシートリップだが、実は、中国では大きな影響力を持つ。

私たちが訪ねたのは、中国・上海で、2年連続で最高評価を獲得した“3つ星レストラン”の『福1015』。1930年代に政府関係者が建てたとされる建物を改装していて、雰囲気のある建物の中で、本格的な上海料理を楽しむことができる。エビをたっぷり使った、深みのある味わいの豆腐料理などが人気だ。

1人あたり約1万8000円のコース料理のみと“強気”の設定で、中国ではかなりの高級店だが、“シートリップ効果”で客が3割も増えたという。

『福1015』店長「“シートリップ”は、大勢の若者が使っています。レストランへの評価は、お店の雰囲気、サービス・料理などを総合的に評価しています」

◇今度の展開は…不安材料は?

このシートリップ、グルメガイド以外にも航空券やホテルの予約などができ、会員数が3億人にのぼるため、中国で大きな存在感を示している。実際、日本に来た中国人観光客に聞いてみると──

中国人観光客「中国ではみんな、特に旅行好きの人は誰でも知っています」「ネットで1つ1つ調べるよりずっと便利だし、早くて簡単です」

去年、日本を訪れた中国人観光客は、約736万人(出典:日本政府観光局)。東京の飲食店にも影響があるとみられるが、その飲食店からは、観光客が一気に増えることで店が混雑しすぎることへの懸念も聞かれた。

今後は、日本語版の公開も予定。会員数3億人を誇る“中国人のための”グルメガイドが、「チャイナマネー」の行方を左右するかもしれない。