【特集】憧れの大手企業…のはずが、内定貰うと“蛙化現象”「両想いになると嫌悪感」Z世代の悩みが就活にも影響 “会社が選考される時代”到来⁉現代の就活のあり方とは
“蛙化現象”とは、「片思いだった恋心が、両想いだとわかると嫌悪感を持つようになる現象」のこと。「好きな人の些細な言動で冷めてしまう」というZ世代の悩みを表す言葉として、2023年には『流行語大賞トップ10』にも選ばれました。それに似た現象が就職活動にも起きていて、内定を貰うなど企業からの“ラブコール”を受け取ると、学生たちは熱が冷めてしまうのというのです。『就活版・蛙化現象』は、一体なぜ起きるのでしょうか?
■自己理解が深まらないまま内定へ…『蛙化現象』の一因は就活市場の早期化?
2024年6月1日から、翌年春に卒業する大学生などを対象にした主要企業の面接が始まりました。政府が示す“ルール”では、広報活動は3月に、面接などの採用選考は6月1日に解禁されます。
2024年5月初旬、“就活イベント”が大学で開かれました。例年から5か月前倒しになり、参加したのは就活解禁1年前の3年生たちです。
(大学3年)
「早すぎます。4年生からだと思っていました」
「秋から始めようと思っていました」
実は、2025年春に卒業する学生の8割近くが、選考解禁前にもかかわらず、すでに内定を獲得。求人倍率は1.75倍と、“学生優位”が続く就活市場で、早期化が進んでいます。そのため、学生の自己理解が深まらないまま内定を得て、『蛙化現象』が起きているというのです。
(リクルート就職みらい研究所・栗田貴祥所長)
「結局、『本当に自分が何をやりたいのか』『どういう職場が自分らしく働けるのか』を深めきれないまま、選考活動に参加せざるを得ない。冷静に考えてみると『本当にこれで良かったのか』という思いを持たれる学生の方が増えているのかな、と感じます」
■「ウソをついているかも…」内定辞退した学生が抱えていたモヤモヤ
学生からは、就活中心になる大学生活への疑問も…。
(学生)
「就活のために“頑張ったこと”を作って、そのまま働いて、そんなので良いのかなというモヤモヤは、ずっとありました」
10社ほどにエントリーし、4年生の5月、大手企業に内定。しかし、モヤモヤはぬぐえず、10月に内定を辞退し、大学院への進学を決めました。
(学生)
「自分としては『ウソをついているかもしれない』という感覚はずっとあって、もちろん内定は欲しいし、もしかしたら働くかもしれないけど、その思いが100%ではないなというのは、ずっと抱えていて」
Q.4年生から就活を始めるのがベストでしたか?
(学生)
「自分はそうだと思うんですけど、周りには早期内定が欲しい子もいて、その人に合ったタイミングで就活するしかないのかな」
■親を対象とした企業説明会も…会社は“選考される時代”へ
企業側も、人材を確保するため、採用を工夫しています。
奈良県に本社のある工務店では―。
(人事担当者)
「大型連休では、きちんと親御様に顔を見せに帰れるかなと思っております」
企業説明をする相手は、学生…ではなく、『親』です。
選考では、「協力してフラフープを指1本で持ち上げよう」など、独特なグループワークを実施。学生の素顔を知り、ミスマッチを防ぐのが狙いです。
最終選考では…。
(人事担当者)
「『他の会社も見ます』という話があったと思うけど、何社か見られましたか?」
(就活生)
「いくつか行ったんですけど、『何か違うな』って…」
企業が学生を選考するだけでなく、“学生が企業を選考する時代”です。
(人事担当者)
「『もっと良い会社があるかもしれないから、ちょっと待ってください』とかは、増えてきています。周りの企業の選考が早いので、私たちも、その波に乗っていかないと…」
■蛙化現象を防ぐには、“就活のあり方”の見直しが必要か―
早期化のループに歯止めがかからない状況に、学生や企業の考え方に合わせた採用方法が重要だと、専門家は指摘します。
(リクルート就職みらい研究所・栗田所長)
「今の多様化する時代背景を踏まえて、もう少し柔軟に、一律的で画一的な枠組みをもう一回考え直すことは、必要不可欠になってきているのではないかと」
企業も学生も納得して“両想い”になって新生活がスタートできるよう、就活のあり方の見直しが求められているのかもしれません。
(「かんさい情報ネットten.」2024年6月4日放送)