タイで「ロシア人観光客」急増 地元メディア「ロシア革命」 経済制裁下なのになぜ…
東南アジアのタイで今、地元メディアが“ロシア革命”と伝えるほど、ロシア人観光客が急増しています。ウクライナ侵攻による欧米などの経済制裁が続く中、なぜロシア人がタイに殺到しているのでしょうか。
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世界有数のリゾートであるタイ・プーケットで先週、タイとロシアの国交樹立125周年を祝う記念コンサートが開催されていました。ステージではロシアの有名なジャズアーティストによるコンサートが開かれていて、多くのロシア人観光客でにぎわっていました。演奏に合わせて踊る親子の姿もありました。
1週間前にタイに来たロシア人親子
「ロシアからは遠く離れていますが、とてもすてきな雰囲気の中でのロシアのジャズの演奏ですね」
「きれいな空気と海を楽しめます」
実は今、ここタイにロシア人観光客が押し寄せているのです。
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タイの国技・ムエタイのジムにもロシア人の姿が…。取材したジムにはロシア語ができるトレーナーもいることから、観光客からプロまで、1日100人以上のロシア人が訪れるといいます。
ロシア人観光客
「きょうが3回目ですが、毎日でも来たいですね。心身ともに健康でいたいので」
ムエタイジムトレーナー
「ロシア人は今年10月下旬から戻ってきていて、どんどん増えています」
プーケットを訪れるロシア人観光客は、今年2月のウクライナ侵攻後に激減しましたが、10月以降急増し、先月は6万人を超えました。(※プーケット入管より)国別の観光客数で11月は1位になるなど、タイの地元メディアが“ロシア革命”と伝えるほどの急増ぶりです。
【プーケット国別観光者数(11月)※プーケット入管より】
ロシア:6万3249人
インド:2万9147人
オーストラリア:1万4897人
そのわけは、ロシアからの直行便の再開です。この直行便、欧米の制裁などの影響で一時は運休していました。今年3月には多くのロシア人観光客が帰国できなくなり、ビザの延長を求めて入国管理局で行列をつくる事態になりました。その後、観光業の再生を目指すタイ側の働きかけなどもあり、今年10月、直行便が再開したのです。
ロシア人観光客
「ここはとても暖かいです。ロシアは冬なので、ここと違ってとても寒いんです」
もともと、寒い冬の時期には暖かいビーチリゾートで過ごすロシア人も多く、ヨーロッパ諸国への入国が制限される中、タイ人気に拍車がかかっています。
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欧米などの制裁を受ける中、ロシア人観光客をめぐっては、クレジットカード大手がロシアでの事業を停止し、カードが使えなくなる問題が起きていました。
今も現金で支払うロシア人観光客がいる一方、話を聞いたロシア人家族が使っていたのは、隣国カザフスタンのクレジットカードです。
ロシア人観光客
「ロシアではカザフスタンだけでなくタジキスタンのカードも入手できますので、問題はもう解決済みです」
旅行のため、約2か月前、カザフスタンの銀行にインターネット経由で発行してもらったといいます。
また、中国のクレジットカード「銀聯(ぎんれん)カード」を使う人も多く、制裁の影響を避けるため、さまざまな準備をしていました。
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タイはロシアへの制裁を続ける欧米などとは一線を画し、中立の立場をとっています。
プーケット観光協会幹部
「タイは全ての観光客に開かれています。旅と政治を一緒に考えるべきではありません」
実益を優先してロシアに目を向ける、そのしたたかさが際立っています。