スペインで“過去最悪規模”の洪水 地球温暖化で被害拡大か
10月に大規模な洪水が発生したスペイン。過去最悪規模の被害となりました。この洪水の原因の一つとして専門家が指摘しているのが「地球温暖化」です。
スペイン東部バレンシア自治州。
記者(10日)
「発生から10日以上たった今も氾濫した川から流れてきた泥がそのままになっていて、車も泥に埋まったままとなっています」
泥をかぶった大量の車。地面は一面、泥に覆われていました。川底には濁流にのまれた何台もの車の残骸がそのままになっていました。
10月29日に大雨で川が氾濫するなどして、バレンシア自治州など東部の広い地域で洪水が発生。215人以上が死亡し、スペインでは過去最悪規模の洪水被害となりました。
洪水発生当時に撮影された川の映像には、一気に押し寄せる津波のような濁流が、上流の町に住む住民が撮影した映像には、鉄砲水のような濁流が川沿いの住宅をのみこんでいく様子が映っていました。
川底はえぐられ、ガレキが散乱。建物も1階部分が崩れ、水の力のすさまじさが分かります。
洪水で被災 カランさん
「経験したことがない水の流れでした。それですぐに上の階に逃げました」
多くの住民が家を失いました。
8時間で1年分の降水量を記録した地域もあるという今回の大雨。なぜ、ここまで大量の雨が短時間に降ったのでしょうか。専門家が指摘したのは地球温暖化の影響です。
気候研究財団・研究者 ロベルト・モンジョ氏
「(地球温暖化によって)気温と海水温が上昇し、様々な影響が出ています」
バレンシア自治州の沿岸部が面している地中海では気温の上昇に伴い海水の温度が急激に上昇。その結果より多くの水蒸気が発生し、大気中に含まれる水分の量が12%も増えたといいます。より多くの水分を含んだ大気が陸地の上空にも流れ込むことで、これまでよりもはるかに規模の大きな雨につながっているのです。
もうひとつの要因として指摘されているのが…
気候研究財団・研究者 ロベルト・モンジョ氏
「実は、大雨の前に干ばつが起きていると被害が増大するのです」
実は、スペイン東部は深刻な干ばつに見舞われ、非常事態宣言がだされていました。この干ばつも地球温暖化による影響で悪化したのです。
干ばつの被害を受けた場所で雨が降るとどうなるのか。コップに入れた水を流してみると、通常の状態の地面ではすぐに水が吸収されるのに対し、干ばつの被害を受けた地面ではほとんど水が吸収されません。
気候研究財団・研究者 ロベルト・モンジョ氏
「干ばつで乾いていて草木も生えていない地面では、洪水がより強く、より早く、広い範囲に到達して被害が大きくなるのです」
未曾有(みぞう)の自然災害が世界各地で相次ぐ中、温暖化対策などを話しあうCOP29で国連機関の事務局長が明らかにしたのは…
国連・世界気象機関 サウロ事務局長
「産業革命前に比べて気温は1.54℃上昇しました」
今年1月から9月までの平均気温が、とりかえしがつかなくなるという1.5℃のラインをこえてしまったというのです。
国連・世界気象機関 サウロ事務局長
「1.5℃のラインに踏みとどまらなければなりません。2℃に向かうとその影響はとてつもないことになります」
発生から2週間がたったスペインでは、13日に南部の地中海沿岸で再び大雨による洪水が発生。異常気象に歯止めをかけられるタイムリミットは刻一刻と迫っています。