北京、集団感染で客足パッタリ 警戒の街中
食品卸売市場で新型コロナウイルスの集団感染が発生した中国・北京。人があふれかえっていた街は「第二波」を警戒して雰囲気が一変した。「天気のようなものだから仕方ない」と語る小売店の店員も。揺れる北京市内の様子をNNN北京支局の古江正彦記者がリポートします。
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それは突然やってきた。6月11日、それまで2か月近く感染が確認されていなかった北京で新型コロナウイルスの感染者が1人確認された。この感染者は52歳の男性で、発熱が続いたため病院に診察に行ったところ新型ウイルスへの感染が確認された。ただこの男性は2週間北京から離れていなかったので、どこから感染したのかが分からず大きく注目された。
12日、新たな感染者は6人に。このあたりから感染源の特定が始まり、すべての感染者が北京市最大の食品卸売市場と関連していたことが判明する。次の日に北京で感染確認がされた36人も、この市場との関連が指摘された。
こうなってからの北京市政府の対応は素早かった。市場関係者や周辺住民にPCR検査を行うと発表し、市場に行ったことがある人にも申告しPCR検査を受けるように呼びかけた。集団感染を受けて北京市が行ったPCR検査の人数は229.7万人だという(6月20日時点)。
さらに移動制限も強化された。市場関係者や感染リスクの高い地域の市民が北京から出ることを禁止し、それ以外の市民も不要な移動は避けるように呼びかけられ、どうしても北京を離れる場合には7日以内のPCR検査の陰性証明が必要となった。
それまで中国は一日に感染確認がゼロになる日もあったりして中国国内では感染は抑え込まれたと楽観的な雰囲気に包まれていた。私自身も世界中の感染拡大を横目に中国はいち早くコロナ禍から抜け出し、経済復興に邁進していくものと思っていた。それが集団感染によって雰囲気は一変した。
取材動画で紹介している「前門」は、ここ数年の間に古い町並みが改修され人気の観光スポットとなっている場所である。5月初めの大型連休に取材した際には、それまで外出ができなかった鬱憤を晴らすかのように街中に人があふれかえっていた。
しかし、集団感染が判明した後の「前門」は、時計の針を戻したように人の姿が消えていた。土産物屋や飲食店の店員に話を聞いてみると集団感染が判明した後の週末からパッタリと人が来なくなったという。
「天気のようなものだからどうしようもない」と明るく答える店員もいれば、インタビューなんか受ける気持ちになれないという人もいた。受け止め方はさまざまだが、影響はどこも小さくはない。
北京市当局の発表では6月11日以降の北京での感染者は318人となった(6月29日時点)。一時は感染拡大の第二波がやってきたのではと大きく報道されたが、徹底した感染対策により北京の状況は沈静化に向かっており新たな感染確認はだんだんと少なくなってきている。
その一方で、北京での集団感染に関連する感染者が北京市以外の地域に広がり警戒が高まっている。今後も予断を許さない状況が続いており、ウイルスは消えてなくなったわけではないということを改めて思い知らされた。今後こうしたことが再び起きる可能性は十分にあり、その度に感染対策の強化と緩和を繰り返していくのだろう。コロナとの戦いはまだ始まったばかりなのかもしれない。