ガザ地区「戦闘休止」人質解放41人に 希望と不安…残る人質の解放は【バンキシャ!】
イスラエルがイスラム組織ハマスと合意した4日間の戦闘休止。初日には24人の人質が、そして日本時間26日朝には17人が解放されました。しかし、ハマスは一時、「イスラエル側が合意を守っていない」と主張。人質の解放を遅らせるなど予断を許さない状況が続いています。合意は守られるのか──。人質から解放された人々は?家族を待つ人々の思いは?(真相報道バンキシャ!)
24日にイスラム組織ハマスが公開した、人質を解放する瞬間の映像。映っていたのは、女性や小さな男の子。ハマスの戦闘員に支えられて赤十字の車へ。高齢の女性たちも、続いて乗り込む。
ハマスから解放された人々はまず、パレスチナ自治区ガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所へ。バスに乗り換えて、エジプトを抜けると…。いよいよ目の前にイスラエルとの境界が。
ハマスの襲撃を受け、人質となったあの日から実に48日。家族が待つイスラエルに帰ってきた。
イスラエルに入ると、そこにはこの日を待ち望んだ多くの人々。解放された人々は、歓声に包まれながら家族の元を目指した。
一方、その家族たちもその瞬間を待っていた。じっと見つめる先には、戦闘員に肩を支えられたあの男の子が。小学生のオハド君だ。
オハド君の親族
「オハドとの再会が待ちきれません。彼が大好きなルービックキューブを渡すんです」
先月31日、バンキシャ!は、オハド君の父親にイスラエル・テルアビブ郊外にある自宅で話を聞いていた。
オハド君の父親
「オハドはとてもかわいい子です。みんなに愛されています」
ハマスの襲撃を受けた日、ガザ地区にほど近い親戚の家を訪ねていたオハド君。母親のケレンさんと共に連れ去られた。
オハド君の父親
「ここがオハドの部屋です」
オハド君の部屋の壁には、幼い頃からの成長をおさめた写真。実はオハド君、人質となっている間に9歳の誕生日を迎えていた。
オハド君の父親
「早く家に帰ってきてほしい。願いはただそれだけです」
そう祈り続けた48日間。ついに、その願いが叶う時がやってきた。解放された人々を乗せたヘリが、家族の待つ病院に到着。そして…。
その瞬間が訪れる。父はオハド君を強く抱きしめた。オハド君や一緒に解放された母親にケガはないという。
4日間の戦闘休止と引き換えに人質50人を解放することなどで合意したイスラエルとハマス。この日解放されたのは、イスラエル人の子どもや女性13人と、外国籍の11人、合わせて24人。また、日本時間26日朝、新たに17人が解放された。
しかし、手放しには喜べない。ハマスに捕らわれたとみられるのは約240人。まだ多くの人々が助けを待っている。
25日、イスラエルのテルアビブでは──。
NNNテルアビブ・後閑駿一記者
「女性や子どもの解放が続く中、テルアビブではすべての人質の解放を求めて大規模な集会が行われています」
「(解放は)今しかない!今しかない!」と集まったのは、人質の家族や支援者など約10万人。
弟の解放を求めてやってきた男性は、「人質が解放されるのを見て希望を持ちました。でも喜ぶことはできません。解放される人質のリストに弟の名前がないので、つらいままです」と話す。
弟のガイさん、22歳。10月7日、兄弟はガザとの境界付近で開かれていた音楽フェスに参加。この写真を撮った直後、弟のガイさんだけが連れ去られた。
兄の不安は、ハマスが公開したある動画でさらに大きくなった。動画の中にガイさんとみられる姿を見つけたのだ。後ろ手に縛られ、おびえているように見える。
わたしたちは父親の案内で、ガイさんの部屋を訪れた。そこには、大好きだという日本のアニメのポスターや漫画。さらにノートには、日本語で自己紹介が書かれていた。
「いつか日本に行きたい」と、日本語を猛勉強していたという。
ガイさんの父親
「もう一度彼を抱きしめたい。彼のにおいをかぎたい。彼がいないこの部屋は廃墟のようです。とにかく戻ってきてほしい」
そして戦闘休止期間中のガザ地区。人々が口にした切実な願いは…。
ガザ地区のジャーナリストのモハマド・アブオーンさん
「(戦闘休止は)4日間では足りません。10日でも1週間でも2週間でも足りない。私たちが望んでいるのは停戦です」
11月24日から始まった戦闘休止期間。国連によると、初日には支援物資を積んだトラック137台がガザ地区へ入った。
戦闘休止1日目の24日に撮影された映像。缶詰のようなものや、野菜など様々なものが並ぶ通りを市民が行き交う。
また戦闘休止2日目の25日には、ガザ地区南部の町・ハンユニスに燃料が届いた。
すると、ガソリンスタンドはこの混雑ぶり。敷地の外にも、タンクを持つ人がずらりと列を作った。
バンキシャ!が話を聞いたのは、ガザ地区のジャーナリスト。戦闘休止を受けて人々の暮らしが変わったという。
ガザ地区のジャーナリストのモハマド・アブオーンさん
「戦闘休止前は、夕方4時には建物の中に入るようにしていた」
「これまでは朝晩問わずいつでも空爆され、特に夜は激しかったので」
「でも今は夜10時でも11時でも外出できるようになりました。海に行ったり、散歩したりすることもできます」と話し、穏やかな時間が流れているという。
ガザ地区南部で取材を続けている、ジャーナリストのモハマド・エルヘルさんは、「今は戦闘はありません。24日から25日にかけて両者は戦闘休止の合意を守っています」と話す。
しかし、頭をよぎるのは、戦闘休止期間が終わったあとのこと。
ガザ地区のジャーナリストのモハマド・エルヘルさん
「4日間の戦闘休止が終わると、次の日からは大量虐殺が始まるでしょう。それがわかっているから本当につらいです」
「わたしが望んでいるのは、完全な停戦なんです。戦闘でケガをしたくない。手足を失いたくはありません」
(11月26日放送『真相報道バンキシャ!』より)