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“ウクライナ停戦”狙いは…「中国」 まもなくトランプ氏返り咲き どうなる「アジア外交」

2025年1月2日 16:00
“ウクライナ停戦”狙いは…「中国」 まもなくトランプ氏返り咲き どうなる「アジア外交」
勝利宣言するトランプ次期大統領

2025年1月20日、トランプ前大統領がホワイトハウスに戻ってくる。「アメリカ第一主義」を掲げ、就任前からすでに始まっている外交はどこへ向かうのか。ウクライナ停戦を唱える狙いは中国? 日本とはどう向き合うのか。“トランプ2.0”の外交を展望する。

■「トランプ大統領」再び

トランプ前大統領が再びアメリカ大統領としてホワイトハウスに戻ってくる。トランプ氏の暗殺未遂事件や刑事裁判、バイデン大統領の突然の撤退など、2024年の大統領選挙はまさに大波乱の展開となった。世論調査は最終盤まで大接戦、しかし投票の結果はトランプ氏が激戦7州全てを制し、総得票数でも民主党・ハリス副大統領を上回る堂々たる返り咲きとなった。

首都ワシントンでは新しい大統領を迎える準備が進められている。21年1月にトランプ氏の支持者らが襲撃した連邦議会議事堂の前には、就任式でトランプ氏が宣誓を行う舞台が設営され、政権移行チームによる現政権からの引き継ぎ協議も始まっている。ある国務省関係者は「政権移行には慣れているが、今回は予測不能な部分も多く、不安がる声は少なくない」と話す。

トランプ氏は就任前にもかかわらず、すでに“トランプ外交”も積極的に展開している。中東情勢をめぐっては、イスラム組織ハマスに対し、自らの大統領就任までに人質を解放しなければ「最も激しい打撃を与える」と警告。カナダとメキシコに対しては輸入品に25%の関税を課す大統領令に署名すると表明した。

さらに、アルゼンチンのミレイ大統領やカナダのトルドー首相、フランスのマクロン大統領ら各国首脳と対面での会談も行うなど、就任式を前に“始動”している。ただ、石破首相との会談はまだ行われていない。

「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ氏の外交はどこへ向かうのか。アジアの外交・安全保障への影響を専門家に聞いた。

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、トランプ氏は「私が大統領なら24時間以内に終わらせる」と度々強調。ウクライナへの支援縮小の可能性に言及し、戦闘を早期に終結させると強調している。アメリカ政治に詳しい明海大学・小谷哲男教授は、その狙いは「中国」だと指摘する。

「中国との競争に勝つことを最も重視している。その中国との競争に勝つためには、連携が深まる中国・ロシア・イラン・北朝鮮の4か国の連携にくさびを打たないといけない。ロシアのウクライナ侵攻に中国・イラン・北朝鮮が関わっている。停戦に持ち込めば3か国がロシアを助ける必要はなくなるため、連携にくさびを打つことができる。その後、それぞれにアプローチし、最大の懸念である中ロの戦略的パートナーシップを絶つためにロシアを引きつけ、最終的に中国の封じ込め・孤立化を目指す考えだ」

■同盟国に負担増を…日本の防衛費は

「日米関係の基本的な路線は変わらない」

ワシントンではこのような声が度々聞かれるが、実際、トランプ氏は日本とはどう向き合うのか。第一次政権と同様に、日本に防衛費の増額などを求める可能性を指摘する声もある。しかし、小谷教授はその可能性は低いと指摘する。

「24年4月にトランプ氏と自民党の麻生副総裁(当時)が会った際、トランプ氏から日本政府の防衛費増額や反撃能力の導入を評価する発言が出た。つまり日本の防衛能力には一応、満足しているということ。いずれもトランプ政権後に決まったものだが、トランプ氏からすれば『自分が安倍首相(当時)とやりあったから実現した』と、自身の成果だと認識している。トランプ氏は、日本との課題は第一次政権で全て解決したと思っているので、防衛費の増額要求はないと思う。課題がないが故に、外交における日本の優先順位が低いというのが現状だ」

■「トランプ2.0」へ

“予測不能”な第一次政権だったが故に、トランプ氏の返り咲きに国際社会は戦々恐々としている。「アメリカ第一主義」のもと、トランプ氏が繰り広げる「ディール外交」にどう対応するのか。2025年はトランプ氏の動向に翻弄される国もありそうだ。

最終更新日:2025年1月2日 16:00