停戦交渉が進むなか…現地は今 カギ握る“激戦地のリアル”を取材【バンキシャ!】
ウクライナとロシアの停戦交渉が続く中、カギを握るのが激戦地であるロシアのクルスク州。2月にクルスク州の避難所が空爆されたが、ウクライナ軍によるものか、それともロシア軍によるものか。翻弄(ほんろう)される市民…。現地でいま起きていることとは──。フリージャーナリストの横田徹さんが取材しました。(真相報道バンキシャ!)
◇
3月、「ここはロシア国境から非常に近い、毎晩のようにロシア軍の空爆を受けています」と話すジャーナリストの横田徹さんは、ロシアと国境を接するウクライナのスムイ州へ。
ジャーナリスト・横田徹さん
「ロシアのドローンに破壊された集合住宅」
1月、この攻撃で10人が死亡(スムイ当局発表)。停戦協議が始まってからも、攻撃がやむことはないという。
スムイ市民
「毎日だよ。きょうも2時間前にドローンが飛んでいた。この町では多くの民間人が命を落としている」
ウクライナ軍は2024年8月、隣接するロシアのクルスク州に初めて越境攻撃をしかけ、一部を掌握。
3月12日にはプーチン大統領が自らクルスク州に入り、奪還を指示した。
プーチン大統領
「我々の任務は、できるだけ早くロシアのクルスク州に潜む、ウクライナ軍を完全に打ち負かすことだ」
この翌日、ロシアは要衝の街を奪還したと発表。停戦交渉を有利に進めるため、このクルスク州を巡り、今も激しい攻防が続いている。
横田さんがスムイに入ったのは、プーチン大統領がクルスク州を視察した前日だった。ロシアのドローンを撃墜する防空部隊。そこで目撃したのは。
停戦交渉の裏で、今何が起きているのか。「なぜ私は命を狙われるの。私は何もしていないのに」と話すロシア人も。
◇
ロシアのクルスク州でウクライナ軍が撮影した映像。車を走らせていた、そのとき。車に突っ込んできたのは、青いドローン。ロシア軍からの攻撃だという。
横田さんが密着したウクライナの防空部隊。
ジャーナリスト・横田徹さん
「旧式の機関銃にスコープをつけて、夜飛んでくるシャヘド(ドローン)を撃墜します」
迎撃するシャヘドドローンとは。爆弾も搭載できる自爆型のドローンだ。長距離の飛行が可能で首都キーウを含め、ウクライナのほぼ全土を攻撃できるものもあるという。
迎撃に使うのは、熱を探知できるサーマルスコープを取り付けた機関銃だ。この日も防空部隊に出動命令が。サーマルスコープで、シャヘドドローンを探す。
兵士
「まだ遠い」
兵士
「あっちへ飛んでいる」
兵士
「いや、こっちに来てるぞ」
すると、サーマルスコープがドローンの姿を捉えた。
ジャーナリスト・横田徹さん
「かなり近いです」
兵士
「左だ、左、見えた」
兵士
「撃て」
撃ち落とせないまま、ドローンの音が近づく。
兵士
「撃て」
兵士
「やったぞ」
ジャーナリスト・横田徹さん
「爆発しました。ドローンが撃墜されました」
この出動で、2機のシャヘドドローンを機関銃で迎撃したという。これは回収された機体の一部。
兵士
「草むらに落ちていた。そこには巨大な穴ができていた」
兵士
「どこかに突っ込まなくてよかった」
兵士
「我々の目的は、街や住宅にドローンが飛んでいかないよう、阻止することですから」
◇
ドローン攻撃から首都キーウを守るためにもスムイは重要な場所。そのスムイに激戦地から逃れてきた人々がいた。
ジャーナリスト・横田徹さん
「ここには、76人のクルスクからの避難民が生活」
避難していたのはロシア人。クルスク州からきたという。
ロシア・クルスク州から避難
「ウクライナもロシアも攻撃していました」
「夜中に避難したとき、ドローンが飛び交っていました」と語ったこちらのロシア人。その姿が2024年10月、ウクライナが掌握したクルスク州で撮影された映像に映っていた。
このときは戦闘で村を追われ、クルスク州の避難所にいたが、2月、その避難所が空爆された。少なくとも4人が死亡(ウクライナ参謀本部発表)したが、ウクライナとロシア、どちらの攻撃かはわかっていない。避難所すら奪われ、ウクライナに逃げるしかなかったという。
「(ウクライナ兵に)こっちの方が安全だし、いずれ人道回廊からロシアに帰ることもできると言われました」と話し、ロシアに戻れたら、娘がいるモスクワで暮らすという。
そのクルスク州の激戦で、家族を失った人もいる。ロシア人のイリーナさん。
ロシア・クルスク州から避難のイリーナさん(38)
「私は無事でしたが、空爆で夫を亡くしました」
「一人で埋葬しました」
11歳の息子は無事だった。しかし3日後、再び空爆に見舞われた。「息子は助けを求めていましたが、私は足の骨が折れていて、助けることができませんでした」と話す。息子は近所の人に助け出されたが、「息子は腕を失っていました。ショックでした」という。
横田さんは、別の病院に入院している息子のアレクセイ君を訪ねた。ウクライナ兵が声をかける。
ウクライナ兵
「体調はどうかな」
イリーナさんの息子・アレクセイ君(11)
「元気だよ」
一命は取り留めたが、右腕を残すことはできなかった。
ウクライナ兵
「お母さんが会いたがっていたよ。もう少ししたら(ロシアの)家に帰れるから」
イリーナさんの息子・アレクセイ君(11)
「いつまで病院にいるの?」
ウクライナ兵
「もう少しだよ」
イリーナさんの息子・アレクセイ君(11)
「あと少しか」
退院後は、母のイリーナさんとともにロシアに戻る予定だという。
ウクライナ兵
「ロシアに戻ったら、真っ先に何をしたいかな」
イリーナさんの息子・アレクセイ君(11)
「わからない」
犠牲者が今も増え続ける中、停戦は実現するのだろうか。
(3月30日放送『真相報道バンキシャ!』より)