ウクライナ戦闘進化…最新鋭「ドローン兵器」作戦に密着 兵士の本音は【バンキシャ!】
戦闘が続くウクライナ。最前線で任務につくドローン部隊に、フリージャーナリストの横田徹さんが密着しました。新たな兵器を開発し実戦で試す「実験の場」とも言われている戦場で、兵士は体だけでなく心にも大きなダメージを受けていました。【バンキシャ!】
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2024年11月、ジャーナリストの横田徹さんが同行を許されたのは、戦場の最前線に向かう、ウクライナのドローン部隊。
横田 徹さん
「激戦地となっているポクロウシク方面に向かっています」
「ロシア軍のドローンに攻撃されないために、猛スピードで走っている」
ウクライナ東部・ドネツク州のポクロウシクはウクライナ軍の補給拠点で、ロシア軍が最も攻め落としたいとされる地域の一つだ。
到着したのは、ロシア軍の拠点までわずか4㎞ほどの場所。
撮影は暗視カメラで行う。ロシア側のドローンに見つからないよう明かりは最低限に抑えながら攻撃の準備を進める。
砲撃音が近くで響くなか、淡々と作業を続ける兵士たち。
横田さん
「今日使うドローンです。6枚の羽根があるドローンを使うようです」
このドローンでロシア軍の拠点に爆弾を落とすのだという。
先端のとがった爆弾と、筒状の爆弾を取り付ける。2つの爆弾を同じ標的に時間差で落とすことで殺傷能力を高めるのだという。
ウクライナ兵
「地下室に行こう」
ドローンの設置を終えると地下へ。ここに隠れながら(ドローンを)操縦する。
モニターには、ドローンにとりつけたカメラの映像が。画面下のとがった黒い影は、ドローンにつけた爆弾だ。
その真下には、ロシア軍が潜伏しているとみられる建物がある。
ウクライナ兵
「集中して」
「大丈夫」
「行け、投下」
投下したのは、午後9時頃。兵士が寝ているであろう時間帯を狙うのだという。
今や、戦場で欠かせない兵器となっているドローン。進化を続けるドローン戦、その脅威とは・・・。
「猛スピードで追っている」
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ドローン部隊の任務に同行する横田さん。まず目にとまったのは、ドローンに取り付ける爆弾だ。
2024年4月、同じ部隊を取材したときの映像では、兵士たちは強力なプラスチック爆弾を対戦車用地雷に詰めていた。
当時、ドローンの爆弾は使えそうなものを転用しただけのものだった。それから7か月がたち、新たなドローン専用の爆弾が開発されていた。
以前の爆弾に比べ、より正確に標的を爆破できるようになったという。戦闘が続くにつれ、進化するドローン兵器。
別の日、場所を明かさないことを条件に最新鋭の小型ドローンを使う作戦の取材を許された。
横田さん
「いま我々はドローン部隊の前線に近い拠点に着きました」
外で準備していたのは・・・
横田さん
「ドローン用のアンテナですか」
ウクライナ兵
「そうだ」
ドローンに指示を送るためのアンテナ。周囲に溶け込む色の布をかぶせ、上空から見つかりにくくする。ここはロシア軍のドローンも飛んでくるエリアだという。その時…
横田さん
「今ドローンの音が聞こえます」
緊迫したが、後にウクライナ軍のものとわかった。
地下では、今回の作戦に使うドローンの準備が進められていた。そのさなか…
「♪我々は勝利を望み戦場に立ち、花こう岩のように硬く、無敵だ」
兵士の一人がウクライナ兵を鼓舞する歌を流し始めた。
小型のドローンに爆弾をつける。ドローンごと人や車などに突っ込むという。機体には、小さなカメラが。
兵士はゴーグルでカメラの映像を見ることができるため、あたかも自分の目がドローンについているような感覚で、正確に操縦できるという。
こういったドローンはFirst Person View「FPVドローン」と呼ばれている。
時速は100キロ以上。価格は1台、約10万円。兵器としては安く、使い捨ての攻撃手段として大量に投入されている。
そしてもう一台は、アンテナが付いたドローンだ。今回はこのアンテナ付きドローンとFPVドローンの2台を飛ばす。
これまでは拠点から直接FPVドローンへ信号を送っていたが、遮へい物があると、コントロールがききにくくなるのが課題だった。
そこで、アンテナを付けたドローンを開発。これを経由させることで遮へい物を避けることができるようになったという。
まず飛ばしたのはアンテナ付きドローン。そして、爆弾を取り付けたFPVドローンも飛び立った。“2種類のドローン”を飛ばす手法に進化し、この半年ほどで主流になったという。
FPVドローンはロシア軍の拠点の方向へ。すると偵察部隊から、ある映像が送られてきた。
横田さん
「ターゲットを見つけた?」
ウクライナ兵
「見つけました。トラックのような大きい車両です」
ロシア軍のものとみられる車両だ。FPVドローンが急行する。
「猛スピードで逃げている。こっちも猛スピードで追っている」
しかし、映像が乱れはじめる。ロシア軍による電波妨害だ。
「車を見失った」
探し続けるが、見つけられないままドローンはバッテリーが切れ墜落した。
「逃げられた。電波妨害だ」
すぐに別のドローンを投入するが…
「電波が途絶えた。またやられた」
攻撃能力を上げれば、相手の防御能力も進化する。ドローンを飛ばし続けていると…
「見ろ、木の下にバスタブがある」
荒れ地になぜかバスタブのようなものが。この下に“ロシア兵がいる”に違いない。電波妨害で視界を遮られながらも攻撃できる角度を探る。そして・・・
「イエーイ」
横田さん
「成功ですか?」
ウクライナ兵
「ターゲットを吹き飛ばした」
この日、FPVドローンを18回飛ばし、8か所の標的を破壊した。
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進化したドローンが大量に投入された戦場。その脅威を最前線で任務にあたるウクライナの衛生兵が語った。
最前線で任務にあたる 衛生兵
「ドローンによる攻撃がもっとも深刻です。ドローンで負傷する兵士が一番多い」
ウクライナ側もドローンを妨害する装置で対抗しているが…
衛生兵
「いま、やっかいなのは、電波妨害が通用しないドローンです。ロシア軍はそれを持っていた」
ドローンの脅威に精神を蝕まれ、戦線を離れたという兵士は…
戦線を離脱した ウクライナ兵
「もう本当に恐ろしいんです。戦闘機、大砲、ヘリコプター、そしてドローンが絶え間なく飛んでいる。1分たりとも静かになることはなかった」
終わりの見えない戦闘が、さらなる兵器の進化を促していく。
ウクライナ兵
「10㎞も先をいけば、そこには地獄が待っている」
「戦闘で足や腕を奪われなくても、銃弾や爆弾でけがをしなくても、この戦いは精神を蝕んでいくんです。もう疲れました」
*1月19日放送『真相報道バンキシャ!』より