中国でザリガニブーム 売り上げ増加で「絶好調」 “農村の貧困”救う?
長年、中国が抱える課題が“農村の貧困”ですが、いまその救世主として注目されているのがザリガニです。養殖を始めた多くの農家が、貧困から脱出に成功し、いま中国全土にこの動きが広がり始めています。
中国・湖北省潜江市で開かれていたのは…
柳沢高志記者(NNN潜江市)
「ザリガニ祭りが開催されています。1万人に無料でザリガニ料理が振る舞われるということです」
アメリカザリガニの料理を味わえるイベントです。実はこの潜江市は、中国で最大のザリガニの産地。市場では1日1500トンが取引され、中国全土に出荷されています。
年間2億円から4億円ほどの売り上げがあるという卸業者は…
ザリガニ卸業者
「絶好調だよ、これから先もね」
市場のザリガニの取扱量は3年前と比べ、2倍近くに増えていて、年間の取引額は2500億円相当にものぼります。
市内にあるザリガニ料理専門店も大盛況。
お客さん
「みんなザリガニを食べるために徹夜で運転してきました」
子供たちも、オイル蒸しをパクリ。
お客さん
「おいしい」
気になるお味は…
記者
「エビよりも身が引き締まっていて、臭みは全くないです。おいしいです。お酒が進みそうです」
中国では、ザリガニは一部の地域だけで食べられていましたが、5年ほど前から若者を中心にお酒のつまみとして大量に食べるスタイルが定着。いまや“国民食”とも呼べるほど人気となっているのです。
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ブームのきっかけとなったのは、潜江市の農家の取り組みでした。作付け前の水田から引き揚げられたのは…
記者
「すごい数のザリガニです」
20年前、ある農家が水田にザリガニを放して養殖を開始。数年の試行錯誤の末、稲の害虫をザリガニが食べて成長し、ザリガニの排出物が稲の栄養分となるなど、相乗効果が生まれたといいます。
水田でザリガニを養殖する農家
「稲作だけだった時、1つの田んぼの収入は1500元(日本円で約3万円)くらい。今はザリガニの養殖で7000元~8000元(約15万円~17万円)の追加収入がある。たくさん稼げて経済的に豊かになったよ」
日本では、アメリカザリガニが稲の苗を食べるなどの被害が深刻で、条件付特定外来生物に指定されていますが、潜江市では救世主となり農家の収入が飛躍的に向上。4万世帯以上の農家が、貧困から脱出することができたといいます。
こうしたことから、潜江市では市をあげてザリガニ産業の拡大に取り組んでいるのです。
長年、中国が抱える課題である“農村の貧困”。水田でのザリガニの養殖は、習近平政権が掲げる“共同富裕”(格差の是正)にもつながるとして、全国へと広がり始めています。
しかし、その反動で今年に入りある影響が…
水田でザリガニを養殖する農家
「今年は価格が安くなって、去年より収入が減った。人気が出て養殖をする人が増えたから」
競争が激しくなったことで、ザリガニの価格が急落し、農家の収入が伸びなくなっているといいます。
中国の農村を救うことができるのか。小さなザリガニに大きな期待がかけられています。