天安門事件から35年 強まる言論統制 中国当局が警戒する“民主活動家”「李老師」
中国で民主化運動が武力弾圧された天安門事件から6月4日で35年を迎えました。言論統制が強まる中、中国当局の締め付けをかいくぐって民主化運動を続ける人物に接触しました。
6月4日、1年で最も敏感な日を迎えた中国。
記者(中国・北京、4日)
「天安門広場の前ですが、厳戒態勢が敷かれています」
観光名所の天安門広場は、ものものしい雰囲気に包まれていました。
◇
今から35年前の6月4日、天安門広場には民主化を求める学生らが集まっていました。
中国政府は武力鎮圧し、多くの死傷者がでました。しかし、中国政府は事件の対応を正当化し続け、「1989年6月4日」を人々の記憶から消し去ることに躍起となっているのです。
去年のアジア競技大会で、中国の選手が健闘をたたえあった際の写真は、2人のゼッケンの「6」と「4」が並び、事件が起きた6月4日を連想させるためか、SNSからすぐに削除されました。
中国国内で流れるNHKの国際放送でも、天安門事件を伝えるニュースの前で遮断されました。
中国本土で天安門事件がタブー視される中、例年、大規模な追悼集会が行われてきたのが香港でした。しかし、例年集会が開かれていた広場を先週訪ねると…
記者(香港)
「警察が先ほどから巡回に当たっています」
多くの警察官の姿がありました。3年前に大規模な追悼集会は禁止され、民主派への締め付けも強まっているのです。
違法となる前の2020年、集会を主催した1人が趙恩来さんです。
趙恩来さん
「これは私の判決が言い渡された時の新聞です。一面のトップニュースで報道されました」
集会を扇動したなどとして、懲役8か月の有罪判決を受けて収監。出所後の今も監視され、当局に尾行されることもあるといいます。
趙恩来さん
「今ここで話している内容も法に触れないかどうか考えてしまう。こう考えること自体が自由を奪われたということです」
中国化が進む香港では、今年に入り新たに2000台近くの監視カメラが設置されました。
民主派への締め付けが強まる中、中国政府が最も警戒する1人に接触することができました。「李老師(先生)」を名乗る男性です。「X」を通じ、中国メディアが一切報じない中国国内の人権問題や当局に抗議する動きを大量に発信。フォロワーは150万人を超えています。32歳の画家ということ以外は一切明らかにしていない謎のインフルエンサーです。
影響力を発揮したのが2年前。
李老師さん
「『習近平退陣しろ』『共産党退陣しろ』との声を聞いて驚きました。自分は今までこんな過激な声を聞いたことがありません」
北京や上海で起きたゼロコロナ政策への抗議デモ、いわゆる「白紙運動」でした。彼のもとには多い時に1秒で15件もの情報が寄せられ、Xで投稿すると瞬く間に拡散。こうした動きを受け、中国当局は圧力をかけてきたといいます。
李老師さん
「地方警察が常に実家に行って、両親に私を中国に戻すよう脅しました」
彼が中国SNSに持つアカウントは、合わせて53回も凍結されました。それでも発信はやめないといいます。
李老師さん
「今の中国では情報統制が非常に強くなりすぎて、交通事故などですら政府に都合が悪ければ報道されない。私のSNSが今の中国社会で声をあげることができる唯一の方法になっていると思います」
一党支配を揺るがした事件から35年。年を追うごとに締め付けが強まっています。