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【解説】イギリス・最大のえん罪…「富士通」の責任は? 訴追された郵便局長らは700人超 テレビドラマで国民知るきっかけに【#みんなのギモン】

2024年1月18日 22:26
【解説】イギリス・最大のえん罪…「富士通」の責任は? 訴追された郵便局長らは700人超 テレビドラマで国民知るきっかけに【#みんなのギモン】
18日の#みんなのギモンは「イギリス最大のえん罪…富士通は?」がテーマです。次の2つのポイントを中心、日本テレビの小林史解説委員が詳しく解説します。

●ドラマきっかけ…怒りが爆発
●富士通の責任は?補償は?

■郵便局の会計システムめぐる、えん罪事件とは…「富士通」が議会で謝罪

いま、イギリスで連日トップニュースとなり、国民の多くが怒りの声をあげている事件があります。

郵便局の会計システムをめぐるえん罪事件なのですが、そのシステムに日本企業の「富士通」が関わっていたとして、議会で初めて謝罪する事態となっています。

富士通・欧州地域責任者 ポール・パターソン執行役員(16日・ロンドン)
「富士通が、このように誤った判決を招く一因となったことをお詫(わ)びしたい。我々は、当初からこの件に関わっていました。システムにバグやエラーがあり、郵便局長らの起訴を招いてしまいました」

そして、富士通の時田隆仁社長も、イギリスの公共放送BBCのインタビューに「非常に深刻に受け止めている。郵便局長やその家族の人生に壊滅的な影響を与えたことをおわびする」などとコメントしています。

時田社長が、公の場で今回の事件についてコメントするのは初めてだということです。

■イギリス“史上最大”のえん罪…郵便局長らが被害者 収監、破産、自殺も…

まずは、この事件でイギリス国民が怒っている理由からみていきます。

スナク首相も「イギリスの歴史の中で最大のえん罪の1つだ」と述べている、この事件の被害者は「郵便局長ら」です。

横領や詐欺の疑いで訴追された人が700人あまりにものぼっていて、収監されたり破産したり、なかには自殺をした人もいるということです。

■“どんな罪”が郵便局長らに?

では、どんな罪をかぶせられたのか?

問題となったのは、1999年にイギリスの郵便局に導入された「ホライゾン」という会計システムです。

このシステムが導入されると、システム上に表示されたお金の残高と、窓口に実際に残っている現金が合わない、現金の方が少ないというトラブルが起きました。

    ◇

BBCが、シーマ・ミスラさんという女性の実例を取材しています。
それによると、2005年に働き出したミスラさんの郵便局でもこのトラブルが起き、「現金が足りない」と気づいたミスラさんは、自分で不足分を補てんしていたといいます。

ただ、自分の補てんでは補えないほど多額の日もあったあげく、7万4000ポンド、日本円にして約1100万円が不足していたということで停職処分となり、さらに訴追され、有罪判決を受けてしまったのです。

収監された時、ミスラさんは第2子を妊娠中で、地元の新聞が彼女のことを「妊婦泥棒」と書いたため、夫は地元で袋だたきにあったということです。

■「テレビドラマ」がきっかけ、問題広く知られるように…

この会計システムを納入したのは富士通のイギリス子会社だったのですが、2019年にイギリスの裁判所は、会計システムに欠陥があったことを認めました。

有罪判決の取り消しが進んでいますが、ミスラさんは現在も有罪を覆すために闘っているのです。

2000年代の初めから起きていたこの問題を、イギリス国民が広く知るきっかけとなったのは、今年の元日から放送された、あるテレビドラマでした。

    ◇

ドラマ『ミスター・ベイツ vs ポストオフィス』(ITVX)

「損失の責任はあなたにある」

「私は盗(と)ってないわ。お金はどこに消えたの?」

「郵便局の信用がかかっている
人の命にも関わるのよ」

「ようやく僕ら555人の話を聞いてもらえる時がきた」

    ◇

郵便局長たちがえん罪と闘う姿を描いたドラマが放送されると、イギリス国民の怒りが一気に広がって、政界をも動かす事態になっているのです。

そこで、続いてのポイント「富士通の責任は?」、「補償はどうなるのか?」についてみていきます。

■富士通は「いつ」欠陥に気づいていたのか?

今後、注目されるのは、郵便会社やシステムを作った富士通が、いつ、どの時点で欠陥に気づいていたのかということです。

1999年に「ホライゾン」のシステムは導入されましたが、実は2009年の段階でホライゾンのシステムに欠陥があるという指摘が出ていました。しかし、「国営の郵便会社」は繰り返しこの欠陥を否定していたのです。

では、富士通は、いつ、欠陥に気づいたのでしょうか?

BBCに答えたホライゾンの関係者の1人は、1990年代の後半からシステムの開発に関わっていたといいますが、「うまく動くときもあったが、多くの時は作動しなかった」と言っているのです。そして、ホライゾンの導入を早まったのではないかと、振り返っています。

冒頭で紹介した富士通のヨーロッパのトップ(欧州地域責任者)、ポール・パターソン氏も、「当初から、バグやエラーがあった」と認めているのです。

■被害者への補償どうなる?

では、今後、被害者への補償は行われるのかという点について。

現地メディアによると、イギリスのスナク首相は、被害者救済のための新しい法律を導入するという異例の決定をしました。被害者1人当たり約1億1000万円(60万ポンド)の賠償金を受け取ることができるようになるということです。

一方、富士通側は、被害者への補償について「会社には(補償の)道義的責任はある」としていますが、その時期については「現在、行われている調査に全面的に協力している」としたうえで、調査結果が出るまではコメントできないとしています。

関係各所の、被害者に対する真摯な対応が求められています。


(2024年1月18日午後4時半ごろ放送 news every. 「#みんなのギモン」より)

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