【解説】捜査大詰め…裏金事件どうなる? “刷新本部”安倍派9人に疑惑 問われる“政治への信頼” …派閥の解消は?【#みんなのギモン】
あらためて、この問題を整理します。
自民党の安倍派は、政治資金パーティーの収入の一部などを政治資金収支報告書に記載していない疑いで、強制捜査を受けています。
所属する議員の大半が、記載のない“キックバック”を受け取っていたとみられていて、総額は、2022年までの5年間で5億円にのぼるとみられています。
さらに、所属議員がパーティー券収入のノルマ超過分を派閥側には納めず、自分の収入にしていた、いわゆる「中抜き」の総額が1億円前後にのぼるとみられていて、裏金化された総額は6億円規模になるとみられています。
また、安倍派だけではなく、二階派は、派閥側が政治資金収支報告書に記載していないパーティー券収入の総額が、あわせて2億円を超えるとみられています。
こうした事件を受け、自民党は、政治資金の透明化や派閥のあり方などについて議論する総裁直属の機関、「政治刷新本部」を発足させました。
約40人の議員のうち、渦中の安倍派からは無派閥とならんで最多となる10人が加わり、今月11日に初会合が開かれました。
ただ、「政治刷新本部」については、さっそく問題もあらわになっています。
この刷新本部のメンバーである安倍派所属の議員10人のうち、9人が派閥側から政治資金収支報告書に記載のないキックバックを受けたり、ノルマ超過分を派閥側には納めず、自分の収入にしたりしていたとみられることがわかったのです。
金額は、2022年までの5年間で、それぞれ数十万円から数百万円とみられます。岡田直樹前地方創生担当相が最も高額なほか、野上浩太郎元農林水産相も含まれています。
この9人について、岸田首相は13日、次のように述べました。
岸田首相
「特定の人間を排除するというような、排除の論理は適切ではない」
刷新本部のメンバーから外さない、という考えを示したのです。
なぜ、このような人たちを起用したのか。起用の基準について、岸田首相は「党の執行部を中心として、中堅・若手の意見を反映させるという観点から、歴代の青年局長や女性局長の経験者などの若手に加わってもらった」と説明しています。
実際に、岡田前地方創生担当相と野上元農水相は党の幹部ですが、そのほかの議員は全員、青年局長や女性局長の経験者となっています。
そもそも、事前に調べるといったことはなかったのか。取材によると、安倍派の議員の中には、事前連絡すらなかった人もいるといいます。つまり、「政治資金収支報告書にはちゃんと記載していましたか?」、「あなたは大丈夫ですよね?」というような確認は、事前にはなかったとみられます。
党内からは「残念だ」という声があがる一方で、「安倍派を排除せずに入れた時点で、こうなることは想定された」というような声もあります。“わかっていた結果ではないか”というふうに受け止める向きもあるということです。
今後、刷新本部でどう解決策をまとめていくのか、というところですが、「35年前の決意どこへ?」という2つ目のポイントをみていきます。
実は、かつての「政治改革」を振り返ってみると、1988年のリクルート事件の後に、自民党は一度、「政治改革大綱」というものをまとめています。
その中には、派閥について、「総裁、副総裁、幹事長、総務会長などは、在任中、派閥を離脱する」と明記されています。ただ、実際のところ、岸田首相は先月まで派閥に所属していましたし、麻生副総裁や茂木幹事長も派閥からは離脱していなくて、結局のところこのルールは守られていないのです。
では、具体的にどう解決していこうと考えているのでしょうか。
今後のスケジュールについては、刷新本部では今月26日までに中間とりまとめを行う方針で、下記のようなことが検討事項として考えられる、といわれています。
◆「派閥推薦人事」のとりやめ
◆閣僚・党幹部の「派閥離脱」
◆「派閥パーティー」の禁止
◆派閥の解消
なかでも、おそらく最も反発が大きいだろうといわれているのが「派閥の解消」です。
高まる政治不信を払拭することができるのか、というところが大きく問われています。
一方で、今後の捜査はどうなっていくのかという点ですが、幹部の立件は果たしてできるのか――
関係者によると、これまでの聴取に、安倍派の会計責任者は、政治資金収支報告書への不記載を認める供述をしています。一方で、安倍派の幹部らは、関与を否定しているのです。
こうした状況では、例えば、議員が裏金化を指示したことを示すメモなどの物的証拠や関係者の供述というものがないと、議員の責任を問うというのは非常に難しくなってきます。
東京地検特捜部は、今週も議員への聴取を行って区切りをつけ、週の後半にも派閥側や各議員側の刑事処分について判断するとみられます。
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まさに、政治への信頼というものがいま、地に落ちてしまっていると思います。刷新本部の議論をもって、“自民党はまだ変われる”と国民に証明できるのかが問われています。
(2024年1月15日午後4時半ごろ放送 news every. 「#みんなのギモン」より)
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