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【解説】あなたの古着寄付が迷惑に? 古着をめぐる大国ビジネスとアフリカの実態とは

2023年2月28日 21:11
【解説】あなたの古着寄付が迷惑に? 古着をめぐる大国ビジネスとアフリカの実態とは

近年先進国では、古着の回収が盛んで、その多くはアフリカなどの発展途上国に送られている。しかし、中には転売という形で先進国の古着ビジネスに利用されたり、安価な古着の転売が地元産業を圧迫したりといった実態が指摘されている。善意の寄付が、本当に困っている人の助けにつながっていない実状とは。

 ◇◇◇

■世界の衣服産業の現状

ファストファッションの流行で大量生産・大量廃棄のサイクルが作られたことで、アパレル業界は、石油産業に次ぐ「世界2位の環境汚染産業」と国連に指摘されている。

イギリスの報告書によると、世界の衣料品は、「1秒ごとに トラック1台分」が焼却あるいは埋め立て処分されているという。

また、環境省によると、日本では、着られなくなった服の約6割がごみとして国内で処分されており、売れ残った服や寄付に出された古着などの一部が輸出に回っている。

こうして先進国で集められた古着の多くは海外に送られていて、金額的にも大きな市場となっている。

2020年の古着の輸出額はアメリカで7億1260万米ドル、(日本円でおよそ972億円)、中国、イギリス、ドイツもそれぞれ400億円を超えている。

■アフリカでは古着は一大産業

このようにアフリカには先進国などから古着が大量に流入し、一大産業となっている。

現地の住民に話を聞くと、多くの人は地元で生産している衣類よりも安価な古着を買う傾向が強く、アメリカメディアによると、現地の人々が購入する衣類の90%は古着だという。しかし、ここに問題がある。

ザンビアで2006年に行われた調査によると、1980年代に衣類製造に携わっていた労働者はおよそ2万5000人だったのが、2002年には1万人以下に減少した。つまり、古着産業の発展によって、地元の繊維産業が圧迫され、衰退してしまっているのだ。

■アフリカの抵抗

こうした事態に、アフリカ諸国も黙っていたわけではない。

タンザニアやウガンダなどで作る「東アフリカ共同体」は2016年、地域の産業を保護するため、外国からの古着の輸入を禁止することで合意した。

しかし、これで困るのは先進国だ。アメリカの古着業界団体は、「古着が輸出できなくなったら、経済的に大損害だ。古着が米国内で処分されると、アメリカ国内の環境が損なわれる」と大反発したのだ。

結局、アメリカの圧力を受けて、アフリカ諸国は輸入禁止を断念し、先進国から途上国へ衣服が流れる仕組みは、今も続いている。

■善意の寄付も…

一方、ビジネスではなく、無償で寄付される衣服をめぐっても、問題がある。たとえば、紛争から逃れてきた難民に軍人が着るような迷彩柄の服が送られ、辛い記憶を思いださせてしまうケースなどだ。

また、寄付する側は困っている人に無償で届けたいと思っていても、仲介者が買い取って「商品」として販売されることもある。

■本当に貢献するためには…

このように大国のビジネスに絡みとられずに、本当に困っている人を助けるためには、どうしたらいいのか。

まずは、回収団体が送り先の文化や宗教などに配慮して衣類を分類しているか、中古衣料の市場を介していないかなどを事前に確認することが大事だ。

また、やみくもに大量の古着を送るのではなく、自らも現地の実状を正しく把握し、産業育成の妨げになっていないかなどに気を配ることも大切だ。

さらに、環境問題によるダメージを最も直接的に受けるのがアフリカなどの途上国であることを考えると、そもそもの大量生産・大量消費のモデルを見直すことも同時に大切なのではないだろうか。

(映像の中で一部誤りがあり、以下のように訂正致します。)
×アメリカおよそ9兆6千億円→○およそ972億円
×中国、イギリス、ドイツもそれぞれ4兆円を超えている→○400億円を超えている